子宮内膜症に悩む多くの方が、「いつか治るのか」「我慢していれば自然に消えるのか」と疑問を抱きます。
特に若い女性にとって、痛みや将来の妊娠への影響は大きな不安材料です。
子宮内膜症は完治が難しい病気ではありますが、適切な治療により症状をコントロールすることは可能とされています。
この記事では子宮内膜症が完治する可能性や、治療によってどこまで症状を抑えられるのかを明らかにします。
さらに、再発リスクや日常生活での対処法も含めて分かりやすくお伝えします。
子宮内膜症とは?
子宮内膜症は子宮内膜に似た組織が子宮以外の場所(卵巣や腹膜など)に発生し、増殖する病気です。
生理のたびにこの組織が剥がれ落ち、出血を繰り返すことで炎症や癒着を引き起こします。
日本内分泌学会によると、発症の原因は完全に解明されていませんが、逆流した経血が腹腔内に留まる「逆流説」が有力視されています(参考:日本内分泌学会※1)。
主な症状には激しい生理痛、性交痛、慢性的な骨盤痛、そして不妊が挙げられます。
特に生理痛は日常生活に支障をきたすほど強く、鎮痛薬が効きにくいケースも少なくありません。
また、不妊に悩む女性の約25~50%が子宮内膜症を合併していると報告されています(参考:日本産婦人科医会※2)。
この病気は20~40代の女性に多く、約10人に1人が罹患していると推定されています(参考:厚生労働省※3)。
正しい知識を持つことで、治療への第一歩が踏み出しやすくなるでしょう。
子宮内膜症は治るのか?
一般的には、症状が完全に消えることや病変がなくなることを「完治」と定義します。
しかし、残念ながら現在の医療では、子宮内膜症を完全に根治するのは難しいと考えられています。
理由として、病変が微小なレベルで残存する可能性や、ホルモンバランスの影響で再発しやすい性質が挙げられます。
一方で閉経を迎えるとエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が減り、自然に症状が寛解するケースもあります。
例えば、50代以降の女性では、治療を受けずとも痛みが軽減することが報告されています。
それでも閉経前に症状を放置すると、癒着や不妊リスクが高まるため注意が必要です。
医療界としては「根治は難しいが、適切な治療でコントロールできる病気」とされています。
この事実を受け入れ、自分に合った治療法を選ぶことが重要です。
子宮内膜症 治療法の選択肢とその効果
子宮内膜症の治療法とその効果を解説します。
薬物療法(ホルモン療法)
薬物療法は、手術を避けたい人や症状を抑えたい人に適しているとされる選択肢です。
最も一般的なのはホルモン療法で、低用量ピルやGnRHアゴニストが使われます。
低用量ピルはエストロゲンの分泌を抑え、生理痛や病変の進行を軽減。
GnRHアゴニストは一時的に閉経状態を作り出し、病変の縮小を目指します。
また、痛みが強い場合には、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)などの鎮痛薬が補助的に使われます(参考:日本産婦人科医会※4)。
ただし、薬物療法は対症療法であり、病変そのものを取り除く効果は期待できないとされています。
それでも、生活の質を保つためには有効な手段と言えるでしょう。
手術療法(外科的治療)
手術は薬物療法で効果が得られない場合や妊娠を希望する場合に検討されます。
腹腔鏡下手術で病変を切除する方法が主流で、月経痛の改善率は約80%と高い結果が報告されています(参考:日本産婦人科医会※5)。
一方、重症例では子宮や卵巣を摘出する根治的な手術が選ばれることもあります。
手術の選択は、患者の年齢や妊娠希望の有無に大きく左右されます。
例えば、20代で将来出産を考えている女性には、病変切除のみを行うケースが多いとされています。
手術後は症状が改善する人もいますが、再発リスクがゼロではない点に注意が必要です。
再発する可能性とその予防策
子宮内膜症は再発率が高い病気として知られています。
再発の原因は、微小な病変が残ることやホルモンバランスの変動です。
再発を防ぐには、継続的なホルモン療法が有効とされています。
低用量ピルを長期間服用することで、再発率を抑えられたとの研究結果も報告されています。
さらに年に1~2回の定期検診で病変の進行をチェックすることが推奨されます。
早期発見が、再発時の治療を容易にする鍵となるでしょう。
子宮内膜症と妊娠の関係性
妊娠中はエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が変化し、子宮内膜症の症状が軽減することがあります。
しかし、これは一時的な効果であり、出産後に再発する可能性は否定できません。
一方で子宮内膜症は不妊の原因となる場合があります。
卵管の癒着や卵巣機能の低下が影響し、自然妊娠が難しくなるケースが約30~50%とされています(参考:日本産婦人科医会※6)。
妊娠を希望する場合は、不妊治療専門医と連携し、タイミング療法や体外受精を検討することが有効です。
治療と妊娠のバランスを考えた計画が、効果的となるでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 子宮内膜症は自然に治ることもある?
A. 閉経後に症状が自然寛解することはあります。しかし、それまでは進行するリスクが高いため、早めの治療が推奨されます。
Q. 妊娠したら完治するの?
A. 妊娠中に症状が落ち着くことはありますが、完治とは言えません。出産後に再発する可能性もあるので注意が必要です。
Q. ピルをやめたらまた悪化する?
A. ピルを中止するとホルモンバランスが変わり、症状が再発するケースがあります。医師と相談しながら調整してください。
Q. 手術すれば再発しないの?
A. 手術で病変を切除しても、100%再発しない保証はありません。定期的なフォローが大切です。
まとめ
子宮内膜症を完全に治すことは難しいものの、薬物療法や手術で症状をコントロールすることは十分可能とされています。
完治にこだわるよりも、自分に合った治療法を見つけ、病気と上手に付き合うことが現実的な目標と言えます。
不安が募る場合は迷わず婦人科を受診し、専門医に相談してみてください。
早めの行動が、明るい未来への第一歩となるはずです。
参考資料・サイト一覧
※1.日本内分泌学会 https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=77
※2.日本産婦人科医会 https://www.jaog.or.jp/note/%EF%BC%884%EF%BC%89%E5%AD%90%E5%AE%AE%E5%86%85%E8%86%9C%E7%97%87%E6%80%A7%E4%B8%8D%E5%A6%8A%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%AF%BE%E5%BF%9C/
※3.厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000575554.pdf
※4.日本産婦人科医会 https://www.jaog.or.jp/note/%EF%BC%881%EF%BC%89%E5%AD%90%E5%AE%AE%E5%86%85%E8%86%9C%E7%97%87%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E7%96%BC%E7%97%9B%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%AF%BE%E5%BF%9C-2/
※5.日本産婦人科医会 https://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/MEMBERS/TANPA/H13/011008.htm
※6.日本産婦人科医会 https://www.jaog.or.jp/note/%EF%BC%884%EF%BC%89%E5%AD%90%E5%AE%AE%E5%86%85%E8%86%9C%E7%97%87%E6%80%A7%E4%B8%8D%E5%A6%8A%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%AF%BE%E5%BF%9C/