風邪をひいてしまった時、その症状が新薬開発の助けになる「治験」に参加できる可能性があることをご存知でしょうか。
特に「風邪の治験」は募集が多く、比較的参加しやすいものの一つです。
しかし、治験内容によっては参加に時間的な制約や、いくつかの重要な条件があることもあります。
この記事では、風邪の治験に興味がある方や、まさに今風邪の症状が出始めた方に向けて、応募からの流れ、安全性まで、気になるポイントを網羅的に解説します。
風邪の治験とは?
風邪の治験は、製薬会社が開発中の新しい風邪薬の効果や安全性を確認するために行われる臨床試験です。
参加者は開発中の薬(または比較のための偽薬)を服用し、その後の症状の変化などを医療機関に報告することで、新薬開発に貢献します。
風邪治験の目的
すべての新しい薬は、国(厚生労働省)の承認を得て初めて、多くの患者さんが使えるようになります。
その承認に不可欠なのが、人での効果と安全性を科学的に検証する「治験」です。
風邪の治験で得られたデータは、より効果が高く、副作用の少ない新薬を世に送り出すための重要な根拠となります。
あなたの協力が、未来の医療を支える大きな一歩となるのです。
風邪治験の位置づけ:インフルエンザとの違い
治験の対象となる「風邪」とは、一般的に「普通感冒」を指します。
高熱や強い倦怠感を伴うことが多いインフルエンザとは区別されることがほとんどです。
インフルエンザや新型コロナウイルス感染症の場合は、それぞれ専用の治験が別途募集されます。
もしご自身の症状がどちらか判断がつかない場合でも、まずは治験実施機関に相談してみましょう。
風邪の治験参加までの流れ一例
「もしかして風邪かも?」と感じた瞬間から治験参加までの流れの一例をまとめました。
詳細は試験ごとに異なる可能性があるので、ご注意ください。
発症時の行動フロー
- 症状の自覚: 喉の痛み、鼻水、咳などの症状が出始める。
- 市販薬は飲まない: 自己判断で薬を飲むのはストップ
- 治験募集を探し、連絡する: 風邪の治験募集を探し、電話やフォームで連絡します。
- 事前確認: オペレーターから年齢や症状、服薬歴などの簡単な質問を受け、来院の案内を受けます。
- 来院・診察: 指定された日時に医療機関へ行きます。
事前登録と応募方法
多くの治験募集サイトでは、健康なうちに個人情報を登録しておく「事前登録」が可能です。
登録しておけば、いざ風邪をひいた時にスムーズに連絡・応募ができ、チャンスを逃しにくくなります。
来院回数・所要日数・検査内容の目安
風邪の治験は、他の治験に比べて参加者の負担が少ないのが特徴です。
- 来院回数: 合計2回が一般的です。初回の来院と、数日後の経過観察のための来院です。
- 所要日数: 治験薬の服用期間は4日間程度、参加期間は全体で最長5日程度が目安です。
- 検査内容: 主に問診、検温、血圧測定、症状のヒアリングなどが行われます。必要に応じて採血や心電図検査が行われることもあります。
治験中の注意点
治験に参加している期間は、正確なデータを取るためにいくつかのルールを守る必要があります。
市販薬・漢方薬の使用は必ず相談を
治験期間中に、自己判断で他の薬(市販の風邪薬、鎮痛剤、漢方薬など)を服用することは原則としてできません。
治験薬との飲み合わせによっては、効果の正確な判定ができなくなったり、予期せぬ副作用が出たりする可能性があるためです。
厚生労働省も、治験参加中は他の薬を使う際に治験担当医師への相談を促しています。
もし何か薬を使いたい場合は、必ず事前に治験担当医師に相談してください。
体調変化時の連絡義務
治験薬を服用して、普段と違う症状が出たり、風邪の症状が急に悪化したりした場合は、速やかに治験担当医師またはコーディネーターに連絡する必要があります。
これはあなたの安全を守るための非常に重要なルールです。
副作用や中止のケース
治験薬の服用によって副作用(好ましくない反応)が起こる可能性はゼロではありません。
万が一、副作用が起きた場合は、医療機関が迅速かつ適切な処置を行います。
また、参加者の安全が最優先されるため、医師の判断で治験が中止されることもあります。
もちろん、参加者自身の意思でいつでも参加を取りやめることが可能です。
安心して風邪治験に参加するために
日本の治験は、参加者の人権と安全を守るために厳格なルールに基づいて運営されています(参考:厚生労働省 1)。
公的機関による指針(厚生労働省)
治験は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)」という法律と、厚生労働省が定めた「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP)」に基づいて行われます。
これにより、治験の倫理的・科学的な質と、参加者の人権保護が担保されています。
医療機関が関与する仕組み
専門の医師、看護師、そして治験コーディネーター(CRC)がチームとなって、参加者の健康状態を常にチェックし、相談に乗る体制が整っています。
同意説明・同意撤回の権利
治験に参加する前には、必ず医師から治験の目的、方法、予測される効果、考えられる副作用などについて、文書を用いた詳しい説明(インフォームド・コンセント)を受けます(参考:厚生労働省 2)。
その内容を十分に理解し、納得した上で、自由な意思で参加に同意します。
また、一度同意した後でも、いつでも理由を問わず同意を撤回し、治験への参加を取りやめることができます。
これにより参加者が不利益な扱いを受けることは一切ありません。
風邪の治験に関するよくある質問(FAQ)
風邪の治験に関するよくある質問とその回答を紹介します。
Q1. 治験中にうっかり市販の風邪薬を飲んでしまったら?
A1. すぐに治験担当医師またはコーディネーターに正直に報告してください。
いつ、どの薬を、どれくらいの量飲んだかを正確に伝えることが重要です。
その後の対応は医師の指示に従ってください。
Q2. 検査したらインフルエンザやコロナと診断された場合は?
A2. 風邪の治験は、あくまで「普通感冒」を対象としているため、インフルエンザやコロナと診断された場合は、その治験への参加は中止となるのが一般的です。
その際は治験担当医師が適切な治療や医療機関について案内しますので、指示に従ってください。
Q3. 途中で辞退できますか?
A3. はい、できます。治験への参加はいつでもあなたの自由な意思で取りやめることができます。
辞退したい場合は、治験担当医師にその旨を伝えるだけでよく、理由を説明する必要もありません。
辞退によってペナルティが発生したり、その後の治療で不利益を受けたりすることもありません。
まとめ
この記事では、風邪の治験について、その目的から参加の流れ、安全性に至るまでを詳しく解説しました。
最後に、重要なポイントをもう一度整理します。
- 市販薬はNG: 症状が出ても、自己判断で薬を飲む前にまず治験実施機関に連絡することが重要です。
- 安全性は確保されている: 厚生労働省が定める厳格なルール(GCP)の下、医療機関の管理体制と参加者の権利(同意説明・同意撤回)が保障されています。
風邪の症状は辛いものですが、そのタイミングが新薬開発に貢献できる貴重な機会となるかもしれません。
治験ジャパンでも風邪に関する治験協力者を募集しています。
例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
・最新の治療をいち早く受けられる
・専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
・治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。
実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
治験ジャパン新規登録はこちら参考資料・文献一覧
1.厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu2.html
2.厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu3.html
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