アトピー性皮膚炎を徹底解説!症状・原因・治療法から日常生活の対策まで

2025年5月20日

アトピー性皮膚炎は、かゆみや赤みを伴う慢性的な皮膚炎で、乳幼児から成人まで幅広い年齢層に影響を与えます。

この記事ではアトピー性皮膚炎の定義、原因、症状、治療法、日常生活での予防策を、詳しく解説します。

皮膚科専門医 川島眞医師の監修のもと、あなたのアトピー性皮膚炎に関する疑問を解決します。

アトピー性皮膚炎とは

アトピー性皮膚炎に関する基礎知識を解説します。

アトピー性皮膚炎の定義と特徴

アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う慢性的な皮膚炎で、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴です。

この疾患は皮膚のバリア機能の低下や免疫系の異常が関与しており、多くの場合、アレルギー体質の人に発症しやすいとされています。

主な特徴として、強いかゆみ、赤みを伴う湿疹、乾燥肌が挙げられます。

特にかゆみによる掻きむしりが症状を悪化させるため、早期の対処が重要です。

日本皮膚科学会のガイドラインによると、アトピー性皮膚炎は「かゆみのある湿疹を主徴とし、慢性に経過する疾患」と定義されています(参考:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン1)。

また、患者の約80%が乳児期~小児期に発症し、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎などの家族歴がある場合に発症リスクが高まるとされています。

この疾患は単なる皮膚の問題ではなく、日常生活、学習、仕事にも影響し、生活の質(QOL)に影響を与えるため、総合的な管理が必要です。

一方で、アトピー性皮膚炎は、適切な治療とスキンケアで症状をコントロールできる可能性が高い疾患です。

年齢による症状の違い(乳児・小児・成人)

アトピー性皮膚炎の症状は、年齢によって異なる特徴を示します。

乳児期(0~2歳)では、顔や頭皮に赤みや湿疹が現れやすく、滲出液(炎症などにより血管から皮膚組織を通して皮膚表面に浸透してくる液体)を伴う場合もあります。

小児期(3~12歳)では、肘や膝の内側など関節部分に乾燥した湿疹が見られるのが特徴的です。

成人期になると、顔や首、手などに慢性的な湿疹が広がり、皮膚が厚くなる「苔癬化(たいせんか)」が見られることがあります。

また、乳児期のアトピー性皮膚炎の一部は食物アレルギーと関連が深い一方、成人期では環境要因やストレスが影響を及ぼすことが多いとされています。

例えば、乳児では卵や牛乳が引き金になる場合がありますが、成人ではダニや花粉が関与することがあります。

年齢に応じた症状の違いを理解することで、適切な治療や予防策を講じることが可能です。

アトピー性皮膚炎と湿疹の違い

アトピー性皮膚炎と一部の湿疹は、見た目が似ているため混同されがちですが、異なる点があります。

アトピー性皮膚炎は、アレルギー体質や遺伝的要因が関与する慢性的な疾患で、かゆみと再発が特徴です。

一方、接触皮膚炎や脂漏性湿疹などの湿疹は、特定の刺激や一時的な要因で起こる皮膚炎です。

また、アトピー性皮膚炎は「家族歴やアレルギー疾患の合併」が診断基準の一つであり、湿疹にはこの基準が当てはまりません(参考:日本皮膚科学会2)。

例えば、洗剤による接触皮膚炎は湿疹の一種ですが、アトピー性皮膚炎とは異なり、原因物質を避ければ改善しやすいです。

この違いを理解することで、適切な診断と治療を受けることができます。

アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎の主な原因を解説します。

アレルギーとの関連性

アトピー性皮膚炎は、アレルギー体質と密接に関連しています。

アレルギー体質の人は、免疫系が過剰に反応し、特定の物質(アレルゲン)に対して炎症を引き起こします。

代表的なアレルゲンには、乳幼児期の食物(卵、牛乳)、小児期以降のダニ、花粉などがあります。

アトピー性皮膚炎患者の約60%がアレルギー性鼻炎や喘息などのアレルギー疾患を合併しているとの報告もあります。

乳児期に卵アレルギーがある場合、アトピー性皮膚炎の症状が悪化するケースが見られることがあります。

アレルギーとの関連を理解することで、症状の引き金を避ける対策が立てられます。

遺伝や体質の影響

アトピー性皮膚炎の発症には、遺伝的要因が大きく関与します。

両親のいずれかがアトピー性皮膚炎やアレルギー疾患を持っている場合、子供のアトピー性皮膚炎発症リスクは約50~60%とされています(参考:厚生労働省3)。

また、皮膚バリア機能に重要な役割を果たすタンパク質を作るフィラグリン遺伝子の変異が皮膚のバリア機能を低下させ、アトピー性皮膚炎を引き起こす要因の一つとされています。

この変異は皮膚の保湿機能を弱め、外部刺激に対する防御力を下げるため、症状が悪化しやすくなります。

遺伝的要因を理解することで、早期のスキンケアや予防策の重要性が分かります。

環境要因(ダニ・ホコリ・ストレスなど)

環境要因もアトピー性皮膚炎の悪化に影響を与えます。

ダニ、ホコリ、花粉、ペットの毛などのアレルゲンが皮膚に接触すると、炎症が引き起こされることがあります。

また、ストレスや気候の変化も症状を悪化させる要因です。

環境省の調査によると、室内のダニやホコリはアトピー性皮膚炎患者の約70%で症状悪化の引き金になるとされています。

例えば、梅雨時の高湿度や冬の乾燥は、皮膚のバリア機能をさらに弱める可能性があります。

環境要因を管理することで、症状の悪化を防ぐことができます。

肌のバリア機能低下との関係

アトピー性皮膚炎の患者は、皮膚のバリア機能が低下しているため、外部刺激に対して敏感です。

バリア機能の低下は皮膚の水分保持能力の低下や、角質層の異常によって引き起こされます。

これにより、アレルゲンや細菌が皮膚に侵入しやすくなり、炎症が起こります。

このため、保湿剤によるスキンケアが治療の基本となります。

バリア機能の強化が、症状改善の鍵となります。

アトピー性皮膚炎の主な症状

アトピー性皮膚炎の主な症状について解説します。

初期症状と慢性化の経過

アトピー性皮膚炎の初期症状は、赤みや小さな湿疹、かゆみです。

これが進行すると、皮膚が乾燥し、掻きむしりによる傷や滲出液が見られることがあります。

慢性化すると皮膚が厚くなり、ゴワゴワした「苔癬化(たいせんか)」が起こります。

掻きむしりが続くと、細菌感染を併発するリスクも高まります。

症状がよく現れる部位(顔・首・手・関節など)

アトピー性皮膚炎の症状は、特定の部位に現れやすいです。

乳児では顔や頭皮、小児では肘や膝の内側、成人では顔、首や手に湿疹がよく見られます。

これらの部位は、角層が薄く、外部刺激に弱いためです。

特に手は頻繁に洗うため乾燥しやすく、症状が悪化しやすい部位です。

部位ごとのケアを徹底することで、症状の軽減が期待できます。

季節や気候による影響

アトピー性皮膚炎は、季節や気候によって症状が変化します。

冬の乾燥や夏の汗、梅雨時の高湿度が症状を悪化させる要因です。

特に冬は皮膚の水分が失われやすく、かゆみが強まります。

一方夏の汗は皮膚を刺激し、湿疹を誘発することがあります。

季節に応じたスキンケアが、症状管理に役立ちます。

診断と検査の流れ

アトピー性皮膚炎の診断と検査の流れを解説します。

医師による問診と視診

アトピー性皮膚炎の診断は、医師による問診と視診が基本です。

問診では家族歴、症状の経過、アレルギーの有無を確認します。

視診では湿疹の分布や特徴を観察し、診断基準に照らして評価します。

日本皮膚科学会の診断基準では、「かゆみ」「特徴的な湿疹」「慢性・反復性の経過」の3つが主要な項目です(参考:日本皮膚科学会4)。

例えば、肘や膝に左右対称の湿疹がある場合、アトピー性皮膚炎の可能性が高いとされます。

正確な問診と視診が、適切な診断につながります。

アレルギー検査(血液検査・皮膚テスト)

アレルギー検査は、アトピー性皮膚炎の原因特定に役立つことがあります。

血液検査では、IgE抗体の値や特定のアレルゲンに対する反応を調べます。

日本アレルギー学会によると、血液検査で食物アレルギーが疑われる場合、約70%の患者で陽性反応が確認されます。

また、ダニや花粉に対するIgE値が高い場合、環境管理が必要です。

アレルギー検査で疑わしい原因を見い出すことで、効果的な治療が可能になることがあります。

他の皮膚病との鑑別診断

アトピー性皮膚炎は、皮膚が赤く盛り上がり、かさぶたができる乾癬(かんせん)や接触皮膚炎など、他の皮膚病と似た症状を示すことがあるため、鑑別診断が必要です。

乾癬は鱗屑(りんせつ)を伴う赤い斑点が特徴で、接触皮膚炎は特定の物質に触れた部位に限定されます。

鑑別診断を徹底することで、適切な治療が受けられます。

アトピー性皮膚炎の治療法

アトピー性皮膚炎の治療法を解説します。

薬物治療(ステロイド・免疫抑制剤など)

アトピー性皮膚炎の治療では、ステロイド外用薬や免疫抑制外用薬が一般的に使用されます。

ステロイド外用薬は炎症を抑え、かゆみを軽減します。

免疫抑制剤(タクロリムスなど)は、ステロイドの代替として使用される場合があります。

ただし、ステロイド外用薬は長期使用による副作用(皮膚が薄くなる菲薄化(ひはくか)など)に注意が必要です。

適切な薬物治療で、症状を効果的にコントロールできます。

保湿剤とスキンケアの重要性

保湿剤は、アトピー性皮膚炎の治療と予防の基本です。

皮膚のバリア機能を強化し、乾燥や外部刺激から守ります。

ワセリンやセラミド配合の保湿剤が推奨されます。

入浴後に保湿剤を塗る習慣が特に効果的です。

炎症が治まった後の保湿を中心としたスキンケアが、症状管理の鍵となります。

光線療法や新しい治療法

光線療法(UVB療法)は、ステロイドが効きにくい場合に使用されます。

紫外線を照射することで、炎症を抑えます。

また、近年は生物学的製剤(デュピルマブ、ネモリズマブ、トラロキヌマブなど)が重症患者向けに導入されています。また、JAK阻害剤の内服薬・外用薬、ジファミラスト外用薬も使用されています。

ただし、薬剤によっては費用や副作用のリスクを考慮する必要があります。

新しい治療法の進歩により、重症患者の治療の選択肢が広がっています。

日常生活での予防と対策

日常生活で出来るアトピー性皮膚炎の悪化予防と対策を紹介します。

正しい入浴と洗浄方法

正しい入浴は、アトピー性皮膚炎の悪化予防に重要です。

ぬるま湯(38~40℃)で短時間(10分以内)の入浴を心がけ、刺激の少ない石鹸を使用します。

ゴシゴシ洗いは避け、優しく洗うことが大切です。

入浴後はすぐに保湿剤を塗ることが推奨されます。

衣類・寝具・室内環境の整え方

衣類や寝具は、綿やシルクなど肌に優しい素材を選びましょう。

室内ではダニやホコリを減らすため、定期的な掃除や換気が重要です。

加湿器を使用して湿度を50~60%に保つことも効果的です。

また、布団の天日干しが有効です。

ストレスと上手に付き合う方法

ストレスはアトピー性皮膚炎の悪化要因の一つです。

リラックスできる時間を作り、ヨガや瞑想を取り入れることが有効です。

十分な睡眠もストレス軽減に役立ちます。

また、趣味や軽い運動も効果的とされています。

新たな治療法を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。

日本ではアトピー性皮膚炎でお悩みの方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。

例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。

・最新の治療をいち早く受けられる
・専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
・治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる

ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。

実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

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よくある質問(FAQ)

アトピー性皮膚炎に関するよくある質問を紹介します。

ステロイドは使い続けて大丈夫?

ステロイド外用薬は、適切な使用法を守れば安全です。

長期使用による副作用(皮膚の菲薄化など)を防ぐため、医師の指示に従い、必要量を使用します。

例えば、炎症が強い時期には十分量を使用し、症状が落ち着いたら漸減しながら保湿剤に移行するケースが多いです。

アトピー性皮膚炎は完治する?

アトピー性皮膚炎は、完治が難しい疾患ですが、適切な治療で症状を軽い状態でコントロールできます。

乳児期に発症した場合は、成長とともに軽快するケースもあります。

ただし、成人期に再発する可能性もあります。

子供の学校生活で注意すべきことは?

学校生活では、汗やストレスが症状を悪化させないよう注意が必要です。

体育後の汗のふき取りや保湿剤の携帯、ストレス管理が重要です。

また、食物アレルギーがあればアレルギー対応の給食を学校に相談することも有効です。

文部科学省のガイドラインでは、アレルギー疾患のある児童への配慮が推奨されています(参考:文部科学省5)。

担任や養護教諭と連携し、症状の変化を把握することが大切です。

学校と連携することで、子供の快適な生活を支えられます。

市販薬と処方薬の違いは?

アトピー性皮膚炎で使用される市販薬はスキンケアとしての保湿剤に限られます。

ステロイド外用薬や免疫抑制剤は処方薬として、医師の診断に基づき、症状の重さに合わせて調整されます。

専門医の受診タイミング

症状が重い場合や、日常生活に支障が出る場合は、早めに皮膚科専門医を受診しましょう。

具体的には、かゆみで眠れない、湿疹が全身に広がる、感染症の兆候(発熱や膿)がある場合です。

日本皮膚科学会のガイドラインでは、2週間以上症状が改善しない場合の受診が推奨されています。

早めの受診で、症状の悪化を防げます。

まとめ

アトピー性皮膚炎は、かゆみや湿疹を特徴とする慢性的な皮膚疾患ですが、適切な治療と日常生活の管理で症状をコントロールできます。

原因はアレルギー、遺伝、環境要因、皮膚のバリア機能低下など多岐にわたり、年齢や季節によって症状が異なるため、個別の対応が求められます。

ステロイド外用薬や保湿剤を中心とした治療に加え、正しいスキンケア、環境整備、ストレス管理が重要です。

また、皮膚科専門医の指導のもと、最新の治療法や補助療法を活用することで、生活の質を向上させることが可能です。

アトピー性皮膚炎と向き合うには、正確な情報を基に、継続的なケアと専門医との連携が欠かせません。

この記事を参考に、症状の管理を進め、快適な生活を目指しましょう。

参考資料・サイト一覧
1.アトピー性皮膚炎診療ガイドライン
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/ADGL2024.pdf
2.日本皮膚科学会 https://www.dermatol.or.jp/qa/qa1/q03.html
3.厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-03.pdf
4.日本皮膚科学会 https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/ADGL2024.pdf
5.文部科学省 https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/1355536.html

記事監修・執筆者情報
監修者画像

記事監修・執筆者情報

川島 眞(かわしま まこと)

皮膚科専門医・医学博士

東京女子医科大学 名誉教授

日本皮膚科学会認定専門医として、アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の診療・研究に長年従事。

本記事では医学的情報の正確性と内容監修を担当。


所属学会:

日本皮膚科学会

日本美容皮膚科学会

日本皮膚アレルギー学会

日本香粧品学会

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