アトピー性皮膚炎の治し方|症状を改善する薬と生活習慣の全知識

2025年5月20日

アトピー性皮膚炎は、かゆみや赤みで日常生活に影響を与えるつらい病気です。

しかし、適切な治療とセルフケアで症状を大幅に改善できます。

本記事では、皮膚科専門医 川島眞医師の監修のもと、保湿や薬物療法から生活習慣の工夫、最新治療まで、あなたに合ったアプローチを紹介します。

今日から実践できる治療法を見つけましょう。

すぐに実践できるアトピー性皮膚炎の治し方とは?

皮膚科での薬物療法は、アトピーの炎症とかゆみを抑えることをまず目指します。

ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏は、炎症を抑え、肌の状態を安定させる効果があります。

ステロイドは強さに応じて5段階に分類され、症状の重症度で使い分けられます。

タクロリムス(プロトピック)は免疫抑制作用で炎症を抑え、長期使用でもステロイドにみられる皮膚の菲薄化(ひはくか)がありません。使い初めに軽度の刺激があることがあります。

例えば、軽症なら弱いステロイド外用薬を短期間使用し、中等症以上ではタクロリムスに切り替えるケースや顔面の症状にはタクロリムスを使用することが多いです。

さらに、最近ではデルゴシチニブ(コレクチム)軟膏、ジファミラスト(モイゼルト)軟膏などの新たな作用機序の外用薬も登場し、治療の選択肢が増えてきています。適切な薬物療法は、アトピーの急性期を乗り越える鍵となります。

保湿とスキンケアを徹底する

アトピー性皮膚炎の症状が治まったあとの再発を抑えるには、肌のバリア機能を高める保湿とスキンケアが欠かせません。

肌が乾燥するとバリア機能が低下し、外部刺激によるかゆみや炎症が悪化します。

日本皮膚科学会によると、適切な保湿は症状の悪化を防ぎ、薬の使用量を減らす効果も期待できます(参考:日本皮膚科学会1)。

例えば、ヘパリン類似物質配合外用剤や市販のセラミド配合の保湿剤は肌の水分保持力を高め、刺激が少ないためアトピー患者に推奨されます。

入浴後5分以内に保湿剤を塗ることで水分を閉じ込め、効果を高めることができます。

日々のスキンケアを丁寧に行うことで、アトピーの症状は軽い状態を維持できる可能性があるのです。

薬に頼りすぎない治療法も併用がカギ

薬だけでアトピーを管理するのは限界があります。

生活習慣の改善を組み合わせることで、症状の再発を防ぎます。

薬は炎症を抑えますが、肌のバリア機能の回復やアレルゲンへの対策にはセルフケアも必要です。

保湿に加え、刺激の少ない生活環境を整えることで、薬の効果を持続させられます。

また、ストレス管理や睡眠改善も間接的に肌の状態を良くします。

薬とセルフケアをバランスよく取り入れることで、アトピーの根本改善に近づけます。

アトピー性皮膚炎の症状別・重症度別に異なる治療戦略

アトピー性皮膚炎の症状や重症度別の治療法を解説します。

かゆみが強い人向けの短期的対応

強いかゆみはアトピーの患者さんの生活の質を下げる主な要因です。

なるべく即効性のある対応でかゆみを抑えることが重要です。

かゆみは皮膚の炎症や乾燥が原因です。

日本皮膚科学会はかゆみが強い場合、ステロイド外用薬を短期間集中的に使用し、炎症を抑えることを推奨しています。

例えば、かゆみが夜間に悪化する場合、就寝前にステロイド外用薬を塗り、冷湿布で肌を冷やすと効果的です。

抗ヒスタミン薬の内服で一時的にかゆみを軽減できます。

それでも難治な痒みには、ネモリズマブの注射も効果的です。

かゆみを素早く抑えることで、掻き壊しを防ぎ、症状の悪化を防げます。

軽症であればスキンケア中心で改善可能

軽症のアトピーなら、スキンケアを中心に症状をコントロールできます。

この段階では、炎症が限定的で、少量のステロイド外用薬と適切な保湿と低刺激の生活習慣で改善が見込めます。

セラミドやヘパリン類似物質を含む保湿剤は、肌のバリア機能を強化し、乾燥を防ぎます。

また、週1~2回の弱いステロイド使用と保湿剤によるスキンケアで再発を防ぐ「プロアクティブ療法」も有効とされています(参考:日本皮膚科学会2)。

スキンケアを徹底することで、軽症・中等症のアトピーは薬を最小限に抑えつつ改善できます。

重症の場合の最新治療(デュピクセントなど)

重症アトピーには、従来の治療に加え、最新の生物学的製剤やJAK阻害薬も効果的とされています。

生物学的製剤としてはデュピルマブ、ネモリズマブ、トラロキヌマブなどが重症患者向けに導入されています。

また、JAK阻害剤の内服薬も使用が検討される場合もあります。

ただし、高額な治療費や副作用のリスクがあるため、医師との相談が必須です。

日常生活で改善するためのセルフケア

日常生活で出来るセルフケア方法を解説します。

刺激の少ない洗剤・衣類・寝具選び

アトピーの悪化を防ぐには、肌への刺激を最小限に抑える環境づくりが重要です。

合成界面活性剤を含む洗剤や粗い繊維の衣類は、肌のバリア機能を損ないます。

低刺激の洗剤や綿100%の衣類、シーツを選ぶことで、摩擦やアレルゲンの影響を軽減できます。

低刺激の生活環境を整えることで、アトピーの症状を抑えられます。

入浴方法とその後の保湿タイミング

適切な入浴方法はアトピーの肌を清潔に保ち、保湿効果を高めます。

熱すぎるお湯や長時間の入浴は乾燥を悪化させるため、38~40℃のぬるま湯で5~10分以内に済ませることが推奨されます。

入浴後すぐに保湿剤を塗ることで、肌の水分を閉じ込めます。

シャワーのみの場合も、同様に保湿を怠らないことが重要です。

ストレス・睡眠の見直しが治療効果を左右する

生活習慣の改善は、アトピーの症状を間接的に軽減します。

ストレスはかゆみを増幅し、睡眠不足は肌の修復を妨げます。

ストレス管理、良質な睡眠で、アトピーの治療効果を高めましょう。

医師に相談すべき目安と判断基準

医師に相談すべき判断基準について解説します。

自己判断が危険なケースとは

アトピー皮膚炎の治療において、自己判断は症状の悪化を招くリスクがあります。

ステロイド外用薬の不適切な使用や、誤った民間療法は、皮膚の感染症や重症化を引き起こす可能性があります。

特に広範囲の湿疹や強いかゆみが続く場合は、皮膚科専門医の診断が必要です。

例えば、ステロイド外用薬を自己中断した患者が、症状の悪化(リバウンド)を経験したケースはしばしばみられます。

また、感染症を伴う場合は、抗菌薬が必要な場合もあります。

自己判断せず、早めに医師に相談することで、安心安全で適切な治療が受けられます。

標準治療と補助療法の組み合わせが成功のカギ

アトピーの治療は、標準治療と補助療法のバランスが重要です。

標準治療(ステロイド、タクロリムス、生物学的製剤、JAK阻害薬など)は炎症を抑え、補助療法(保湿、生活改善)は再発を防ぎます。

日本皮膚科学会は、両者の組み合わせで長期寛解(かんかい)を目指すことを推奨しています。

標準治療と補助療法を組み合わせることで、アトピーの管理が成功します。

信頼できる皮膚科医の見つけ方と受診のコツ

信頼できる皮膚科医を見つけることは、アトピー治療の第一歩です。

日本皮膚科学会認定の皮膚科専門医や、アトピー治療の実績があるクリニックを選ぶと安心です。

受診時は症状の経過や生活習慣を詳細に伝え、治療方針を相談しましょう。

例えば、事前に症状の日記を準備した患者は、医師とのコミュニケーションがスムーズになり、適切な処方を受けられる可能性があります。

症状が改善した後のオンライン診療も活用すると便利です。

アトピー性皮膚炎の治療を続けるモチベーション維持術

アトピー性皮膚炎の治療を続けるうえでモチベーションを維持する方法を解説します。

記録アプリ・日記で症状の変化を可視化

治療の継続には、症状の変化を可視化することが効果的です。

記録アプリや日記で、かゆみや湿疹の状態、薬の使用状況を記録することで、改善の兆しを実感できます。

写真記録も効果的です。

記録を続けることで、アトピー治療のモチベーションを維持できます。

家族・周囲の理解を得る工夫

家族や周囲のサポートは、アトピー治療の継続に欠かせません。

アトピーの症状や治療の必要性を説明し、理解を得ることでストレスが軽減します。

家族と一緒に低刺激の生活環境を整えるのも有効です。

SNSや体験談から得られる共感と継続力

SNSや患者の体験談は、治療のモチベーションを高める力になります。

同じ悩みを持つ人々の成功談や工夫を知ることで、孤独感が減り、前向きになれます。

過剰な情報に注意しつつ、信頼できる情報源を選びましょう。

新たな治療法を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。

日本ではアトピー性皮膚炎でお悩みの方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。

例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。

・最新の治療をいち早く受けられる
・専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
・治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる

ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。

実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

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まとめ|アトピーの治し方は「薬+生活習慣+継続」が鍵

アトピーの改善は、今日から始められる習慣が鍵を握ります。

まずは、処方薬による薬物療法を医師の指示のもとに適切に行うことです。

それにより、炎症症状、かゆみが軽くなったら、薬を徐々に減らしながら、スキンケア、生活改善に努めることです。

具体的には、①毎日の保湿、②低刺激の洗剤・衣類の使用、③ストレス管理(瞑想や軽い運動)が効果的です。

これらは特別な費用や準備を必要とせず、すぐに実践可能です。

小さな習慣の積み重ねが、大きな改善につながります。

アトピーの治し方は、個人に合わせたアプローチが成功の鍵です。

薬物療法、スキンケア、生活習慣の改善を組み合わせ、自分に最適な方法を見つけることが重要です。

医師との相談を通じて、症状や生活環境に合った治療計画を立てましょう。

参考資料・サイト一覧
1.日本皮膚科学会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/ADGL2024.pdf
2.日本皮膚科学会 https://www.dermatol.or.jp/qa/qa1/q11.html

記事監修・執筆者情報
監修者画像

記事監修・執筆者情報

川島 眞(かわしま まこと)

皮膚科専門医・医学博士

東京女子医科大学 名誉教授

日本皮膚科学会認定専門医として、アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の診療・研究に長年従事。

本記事では医学的情報の正確性と内容監修を担当。


所属学会:

日本皮膚科学会

日本美容皮膚科学会

日本皮膚アレルギー学会

日本香粧品学会

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