水虫はかゆみや見た目の悪さで悩む人が多い皮膚の感染症です。
医学的に足の水虫は「足白癬(あしはくせん)」と言います。
正しい治療法を知らないと、症状が長引いたり再発したりすることもあります。
皮膚科専門医 川島眞医師の監修のもと、白癬菌(はくせんきん)が原因の水虫の種類や効果的な治療法、自宅での予防策を徹底解説します。
根気よく正しい治療を続ければ、水虫は完治可能です。
早速、原因と治療法を見ていきましょう。
水虫とは?原因と種類を知って正しく治療しよう
水虫の原因や種類について解説します。
水虫は白癬菌(はくせんきん)による感染症
水虫は白癬菌(はくせんきん)というカビの一種が皮膚に感染することで起こる病気です。
この菌は高温多湿な環境を好み、足や爪、時には手や体にも感染します。
白癬菌は皮膚の角質層に住みつき、かゆみや赤み、皮むけなどの症状を引き起こします。
特に夏場や靴を長時間履く環境では菌が繁殖しやすく、感染リスクが高まります。
日本では成人の約20%が水虫に悩んでいるとされ、身近な皮膚トラブルといえるでしょう(参考:日本皮膚科学会1)。
例えば、ジムや銭湯の共用マット、家族のスリッパなどを介して感染することがあります。
ただ、正しい知識で治療と予防をすれば、水虫は怖い病気ではありません。
水虫の治療には、原因である白癬菌をしっかり退治することが重要です。
足だけじゃない?水虫の主な4タイプ
水虫にはいくつかの種類があり、部位や症状によって治療法が異なります。
主な4タイプを以下に紹介します。
足水虫(趾間型、角質増殖型、小水疱型)
足水虫は最も一般的で、足の指の間や裏に発生します。

趾間型(しかんがた)は指の間がふやけてかゆくなるタイプ、角質増殖型はかかとが硬くひび割れるタイプ、小水疱型(しょうすいほうがた)は小さな水ぶくれができるタイプです。
趾間型、小水疱型は蒸れやすい靴を履く人に多いとされ、かゆみで夜眠れないこともあります。
爪水虫
爪水虫は、爪が白く濁ったり厚くなったりする症状です。

足水虫から進行する場合が多く、見た目の悪さから悩む人も少なくありません。
歩行に支障が出ることもあり、高齢者では転倒の誘因にもなります。
手水虫
手水虫は足水虫の菌が手に移ることで起こります。

かゆみや皮むけが特徴で、料理や仕事中に不快感を与えることがあります。
体部白癬(たいぶはくせん)(いわゆる「たむし」)
体部白癬は、胸や背中などに赤い円形の湿疹ができるタイプ。

ペットから感染することもあります。
水虫の種類を理解することで、自分に合った治療法を選べます。
症状に合わせて適切なケアを始めましょう。
水虫が治らない理由と誤った治療法
水虫が中々治らない理由について解説します。
市販薬の使い方が間違っている
市販薬で水虫が治らない場合、二つ原因が考えられます。
一つは、そもそも診断が間違っている可能性です。
水虫に似た症状を示す皮膚病はほかにもありますので、自己診断は間違いのもとです。
もう一つは、使い方に問題がある可能性があります。
多くの人は薬を塗る量や回数が不足していたり、患部を清潔に保てていなかったりします。
市販の抗真菌薬は正しく使えば効果的ですが、説明書を無視すると効果が半減します。
薬によっては朝晩2回の使用が推奨されているため、1日1回の使用では効果が落ちてしまうケースもあるのです。
また、患部を洗わずに塗ると、菌が残ったままになり効果が落ちます。
市販薬を使うなら、用法・用量を守り、清潔な状態で塗ることが大切です。
かゆみが消えた=治った、は間違い
水虫の治療でよくある誤解は、かゆみがなくなったら治ったと思い込むことです。
かゆみが消えても、白癬菌が皮膚に残っている場合があります。
治療を途中でやめると菌が再び増殖し、症状がぶり返す可能性があります。
完治するには、かゆみも皮むけも症状が全て消えても一定期間の治療継続が必要です。
患部が乾燥・ひび割れていて薬が届いていない
角質増殖型の水虫では、かかとが硬くひび割れていることが多く、薬が浸透しにくい場合があります。
硬くなった角質は薬の吸収を妨げ、白癬菌が奥に潜んだままになります。
保湿剤や角質軟化剤を併用しないと、治療効果が上がらないこともあるのです。
例えば、尿素クリームで角質を柔らかくしてから抗真菌薬を塗ると、薬の浸透が良くなり効果が期待できます。
患部の状態に合わせて、適切な前処理を行うことが重要です。
爪水虫や角質型は内服薬が必要な場合も
爪水虫や角質増殖型の水虫は、外用薬だけでは治りにくいことがあります。
爪や厚い角質層に菌が深く入り込むため、薬が届きにくいのです。
こうした場合は、内服薬が必要になります。
爪水虫の治療ではイトラコナゾールやテルビナフィン、そして最近では爪水虫でも3か月の内服で効果のあるホスラブコナゾールといった内服薬が有効ですが、医師の診察が必要です。
市販の外用薬で自己治療する前に、皮膚科専門医に相談しましょう。
正しい水虫の治し方|タイプ別の治療法
正しい水虫の治療法について解説します。
足の水虫には外用薬+毎日の清潔ケア
足水虫(足白癬)の治療では、抗真菌成分を含む外用薬と清潔な生活習慣が基本です。
外用薬はクリームやローションタイプがあり、患部に直接塗ります。
毎日石鹸で足を洗い、よく乾かしてから薬を塗ることで効果が高まります。
また、通気性の良い靴下を履くことも大切です。
清潔と外用薬を組み合わせ、根気よく治療を続けましょう。
爪水虫には内服薬+定期的な診察が必要
爪水虫は外用薬だけでは治りにくく、内服薬が推奨されます。
内服薬は白癬菌を体内から退治し、爪の再生を促します。
ただし、副作用のリスクがあるため、定期的な血液検査が必要です。
例えば、イトラコナゾールの内服治療では、治療前と治療開始後2カ月は月1回の血液検査が必要となっています(参考:日本皮膚科学会2)。
爪水虫は根気が必要ですが、最近では3か月の内服で効果のある薬もありますので、医師の指導のもと治療を続けましょう。
また、爪の生え変わるスピードとともに少しずつ改善してくるため、順調な場合でも半年から1年近くの治療期間がかかることを理解しておくことも大切です。
市販薬と処方薬の違いと使い分け
市販薬と処方薬は、成分や濃度、使用期間に違いがあります。
市販薬は軽度の足水虫に適しており、クロトリマゾールやミコナゾールが一般的です。
処方薬はより強力な成分や内服薬が含まれ、重症例や爪水虫に使われます。
市販薬で2週間改善しない場合、皮膚科で処方される薬の使用が推奨されます。
症状の程度に応じて、適切な薬を選びましょう。
薬を塗るタイミングと期間の目安
薬を塗るタイミングは、足を清潔にした後、よく乾かしてからが最適です。
朝晩2回塗る薬が多く、症状が消えても2~4週間は継続することが推奨されます。
爪水虫では1年以上かかることはしばしばありますので、内服治療への切り替えが望ましいです。
正しいタイミングと期間を守り、治療を完結させましょう。
自宅でできる水虫の予防と再発防止対策
水虫のセルフケア方法や再発予防策を解説します。
毎日洗って乾かす、通気性の良い靴下と靴
水虫の予防には足を清潔に保ち、湿気を避けることが重要です。
毎日石鹸で足を洗い、指の間までしっかり乾かします。
綿や通気性の良い靴下を選び、靴は毎日同じものを履かず乾燥させましょう。
例えば、靴に乾燥剤を入れると、湿気を抑え菌の繁殖を防げます。
清潔と乾燥を心がけ、予防を徹底しましょう。
共有物(バスマット、スリッパ)の扱いに注意
家庭内での感染を防ぐには、共有物の管理が大切です。
バスマットやスリッパは家族で共有せず、定期的に洗濯・乾燥させます。
特に水虫の人がいる家庭では注意が必要です。
白癬菌は高熱に弱いとされるため、熱湯消毒が効果的です。
共有物を清潔に保ち、感染リスクを減らしましょう。
公共の場所(ジム・銭湯など)では足元に注意
ジムや銭湯では、裸足で歩かず、個人用のサンダルを使用しましょう。
白癬菌は湿った床に潜んでいることが多く、感染リスクが高い環境です。
使用後は足を洗い、よく乾かします。
公共の場では足元に気をつけ、予防を怠らないようにしましょう。
再発リスクが高い人の生活習慣改善ポイント
糖尿病や免疫力の低下がある人は、水虫が再発しやすい傾向があります。
生活習慣では足の蒸れを防ぐ靴選びや、定期的な足のチェックが重要。
食事で免疫力を高める工夫も効果的です。
直接的な水虫予防効果はありませんが、ビタミンDや亜鉛を意識した食事をすると、皮膚の健康維持に役立ちます。
生活習慣を見直し、再発を防ぎましょう。
皮膚科での治療が必要なケースとは?
皮膚科で水虫の治療が必要となるのはどのようなケースなのかを解説します。
市販薬で治らない場合の目安
市販薬を2~4週間使用しても改善しない場合、診断の確認も含めて皮膚科を受診しましょう。
白癬菌の種類や感染の深さによっては、市販薬では効果が不十分なことがあります。
簡単に考えずに、早めに皮膚科専門医に相談しましょう。
かゆみや痛みが強い、範囲が広い場合
かゆみや痛みが強く範囲が広がっている場合、単なる水虫でない可能性もあります。
細菌感染が合併している場合や、別の皮膚疾患の可能性もあるため、医師の診断が必要です。
例えば、強い痛みを伴う場合は、皮膚科で真菌検査や培養検査を行うことがあります。
重い症状は自己判断せず、専門医に診てもらいましょう。
爪・手・頭など特殊部位の水虫
爪水虫や手水虫、頭部白癬は、特殊な治療が必要です。
特に爪水虫は内服薬が必要な場合が多く、自己治療では完治が難しいです。
頭部白癬は脱毛を引き起こすこともあり、早急な治療が求められます。
例えば、爪水虫では外用薬ではもちろん、内服薬でも1年以上の治療が必要なケースもあります。
これは爪が生え変わるまでに時間を要するためです。
特殊部位の水虫は、皮膚科での治療を受けましょう。
慢性化している場合の血液検査・真菌検査
長期間、症状が変化しない慢性化した水虫では、白癬菌以外の原因や全身の健康状態を確認する必要があります。
血液検査で糖尿病や免疫異常を調べたり、真菌検査で菌の種類を特定したりします。
爪水虫の内服治療が長く続いている場合は、血液検査で肝機能を確認し、内服薬の安全性を評価します。
慢性化している場合は、検査を通じて適切な治療を受けましょう。
新たな治療法を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。
日本では足水虫(足白癬)でお悩みの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。
例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
・最新の治療をいち早く受けられる
・専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
・治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。
実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
まとめ|水虫は正しく治療すれば完治できる
水虫の治療は、症状や部位に合わせた方法を選ぶことが大切です。
自己判断で市販薬を使うと、効果が得られなかったり再発したりするリスクがあります。
タイプ別の治療法を理解し、正しいケアを続けましょう。
また、水虫の完治には、症状が消えた後も治療を続ける根気が必要です。
途中でやめると菌が残り、再発の原因になります。医師や薬の指示を守り、継続することが重要です。
重い症状や長引く水虫は、自己治療では限界があります。
かゆみや痛みが強い場合や、爪・手などに広がっている場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。
参考資料・サイト一覧
1.日本皮膚科学会 https://www.dermatol.or.jp/qa/qa10/q06.html
2.日本皮膚科学会 https://www.dermatol.or.jp/qa/qa10/q23.html

記事監修・執筆者情報
川島 眞(かわしま まこと)
皮膚科専門医・医学博士
東京女子医科大学 名誉教授
日本皮膚科学会認定専門医として、アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の診療・研究に長年従事。
本記事では医学的情報の正確性と内容監修を担当。
所属学会:
日本皮膚科学会
日本美容皮膚科学会
日本皮膚アレルギー学会
日本香粧品学会
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