アルツハイマー新薬レカネマブとは?効果・副作用・承認状況を徹底解説

2025年3月25日

アルツハイマー病は、高齢化社会が進む日本で深刻な課題となっています。

そんな中2023年に日本で承認された新薬「レカネマブ」が注目を集めているのはご存じでしょうか。

この薬はアルツハイマー病の進行を遅らせる効果が期待されており、従来の治療法とは異なるアプローチで話題になっています。

2025年現在、その効果や副作用、承認状況はどうなっているのか、最新情報を詳しくお届けします。

本記事では、レカネマブの作用機序から適応条件、家族への影響までを徹底解説。

アルツハイマー病とは?

アルツハイマー病とはどのような病気なのか?概要を解説します。

アルツハイマーの症状と進行

アルツハイマー病は、認知症を引き起こす代表的な疾患であり、記憶力や判断力の低下が特徴的です。

初期には物忘れが目立ち、例えば「昨日何を食べたか思い出せない」といった症状が現れます。

進行すると、時間や場所の見当識が失われ、日常生活に支障をきたすようになるとされています。

さらに末期には会話や自己管理が困難になり、介護が必要になるケースも少なくありません。

この背景には、脳内でアミロイドβ(Aβ)という異常タンパク質が蓄積し、神経細胞を破壊することが関与していると考えられています。

厚生労働省の推計では、2025年に日本で約700万人が認知症に罹患するとされ、その多くがアルツハイマー型と予測されている点も見逃せません(参考:厚生労働省※1)。

認知症との違い

認知症は、さまざまな原因で認知機能が低下する状態の総称です。

一方アルツハイマー病は認知症の原因疾患の一つであり、認知症全体の約60~70%を占めるとされています。

他の認知症には、脳血管性認知症やレビー小体型認知症などがあり、それぞれ症状や進行パターンが異なるのが特徴。

たとえば、アルツハイマー病では記憶障害が早期に顕著ですが、レビー小体型では幻覚が先行することもあります。

この違いを理解することで、適切な治療法や新薬「レカネマブ」の適用可能性を見極める手がかりになるでしょう。

なぜ治療が難しいのか

アルツハイマー病の治療が難しい理由は、神経細胞の不可逆的な損傷にあります。

一度損傷してしまった神経細胞は再生せず、症状が進行する前に介入する必要があるためです。

また、アミロイドβの蓄積は発症の何年も前から始まるとされ、早期発見が課題に(参考:慶應義塾大学病院※2)。

さらに、脳に直接作用する薬剤の開発は、血液脳関門を通過する技術的なハードルも伴います。

これまで使用されてきた薬は症状緩和が主で、病気の根本的な進行を止める効果は限定的でした。

だからこそ、「レカネマブ」のような新薬が注目されているのです。

アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」の概要

アルツハイマー病の新薬レカネマブとはどのような薬なのか?概要を解説します。

どんな薬?開発元・作用機序

レカネマブは、日本の製薬大手エーザイと米バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病治療薬です。

商品名は「レケンビ」で、点滴静注による投与が特徴。

この薬の最大のポイントは、アミロイドβを脳内から除去する作用にあります。

具体的には、アミロイドβが凝集する前の可溶性プロトフィブリルに結合し、免疫系を通じてこれを取り除く仕組みです。

これにより、神経細胞へのダメージを軽減し、病気の進行を遅らせることが期待されています。

エーザイの発表によると、従来の治療薬とは異なり、原因物質に直接アプローチする「疾患修飾薬」として位置づけられています(参考:エーザイ株式会社※3)。

従来薬との違い

これまでのアルツハイマー病治療薬、例えばドネペジルやメマンチンは、神経伝達物質を調整して症状を一時的に改善するものでした。

しかし、これらは病気の進行を止める効果はなく、あくまで対症療法にとどまります。

一方、レカネマブはアミロイドβを標的とし、進行抑制を目指す点で大きく異なります。

従来薬が「症状を和らげる」アプローチだったのに対し、レカネマブは「病態そのものに介入する」戦略を取っているのです。

この違いが、患者や家族に新たな希望をもたらしている理由といえるでしょう。

期待される効果と対象患者

レカネマブには、認知機能の低下を遅らせる効果が期待されています。

具体的には、早期アルツハイマー病患者において、症状悪化を約27%抑制するという臨床データが報告されています(後述の治験データ参照)。

対象となるのは、軽度認知障害(MCI)または軽度のアルツハイマー病患者で、アミロイドβの蓄積が確認された方。

進行した中等度以上の患者には効果が認められていないため、早期介入が鍵となります。

この特性から、早期診断の重要性が一層高まっているといえるでしょう。

アルツハイマー病新薬レカネマブの承認状況【2025年最新】

レカネマブに関する国内、海外の承認状況を紹介します。

厚生労働省の承認スケジュール

日本では、2023年9月25日に厚生労働省がレカネマブの製造販売を正式承認しました。

その後、2023年12月20日から保険適用が開始され、臨床現場での使用が始まっています。

2025年現在も厚労省は使用状況をモニタリングし、副作用や効果の検証を続けている段階です。

最適使用推進ガイドラインも策定され、投与可能な医療機関や医師の要件が明確に定められている点が特徴(参考:厚生労働省※4)。

海外(米国・欧州)での使用実績

米国では2023年1月に日本の厚生労働省に相当するアメリカのFDAが迅速承認を行い、同年7月に完全承認を取得しました。

これにより、高齢者向け公的保険「メディケア」の適用が拡大し、広く使用される基盤が整っています。

一方、欧州では2024年7月に欧州医薬品庁(EMA)の評価委員会が「効果が副作用のリスクに見合わない」と否定的な見解を示し、承認に至っていません(参考:ロイター※5)。

この対照的な状況は、2025年時点での国際的な評価の違いを浮き彫りにしています。

今後の保険適用と価格見通し

日本ではレカネマブの薬価が1人あたり年間約298万円(体重50kgの場合)に設定されています。

高額療養費制度により、70歳以上の一般所得層では自己負担が年間14万4,000円程度に抑えられる仕組みです。

2025年以降も使用実績や財政影響を踏まえ、薬価の見直しや適用範囲の調整が検討される可能性があります。

高額な費用が課題となる中、保険制度の持続性が今後の焦点となるでしょう。

治験データから見る効果と副作用

レカネマブの治験に関する情報を紹介します。

治験の概要と対象者

レカネマブの効果は、国際的な第III相臨床試験「Clarity AD」で検証されました。

50~90歳の早期アルツハイマー病患者約1,800人を対象に、2週間に1度の点滴投与を18カ月間実施。

偽薬(プラセボ)群と比較し、認知機能の変化を評価したものです。

対象者は軽度認知症(MCI)で、アミロイドβ蓄積がPET検査や脳脊髄液検査で確認された患者に限定されています(参考:エーザイ株式会社※6)。

改善率や進行抑制効果の統計

試験結果によると、レカネマブ投与群はプラセボ群に比べ、認知機能低下が27%抑制されました。

具体的にはCDR-SB(臨床認知症尺度)で評価した症状進行が、約7.5カ月遅延したと報告されています。

また、日常生活能力(ADCS MCI-ADL)の低下も37%抑えられたとのデータが。

この結果から、早期介入による進行抑制効果が一定程度裏付けられたといえます(参考:厚生労働省※7)。

副作用(脳出血・浮腫など)とリスク管理

一方で副作用として脳浮腫(ARIA-E)や微小脳出血(ARIA-H)が10~20%の患者で確認されています。

大半は無症状で経過するものの、0.6~0.8%で痙攣や意識障害などの重篤なケースも報告されました。

特に抗凝固薬使用中の患者やAPOEε4遺伝子保有者ではリスクが高い傾向に。

投与前のMRI検査や定期モニタリングが必須とされ、ガイドラインでもリスク管理が強調されています。

誰が使用できるのか?適応条件と注意点

アルツハイマー病新薬レカネマブの投与を受けるにはいくつかの条件が定められています。

早期アルツハイマーが対象

レカネマブは、早期アルツハイマー病患者(MCIまたは軽度認知症)に限定されています。

アミロイドβ蓄積が確認されない場合や、中等度以上の進行患者には適応外。

このため、症状が軽いうちに診断を受けることが重要です。

厚労省のガイドラインでもMMSEスコア22点以上、CDRスコア0.5~1の患者が対象と定められています。

使用可能な医療機関

レカネマブの投与は認知症専門医が常勤し、MRI検査が可能な施設に限られます。

たとえば、国立長寿医療研究センターや埼玉県総合リハビリテーションセンターなどが対応。

2025年時点で、全国の限られた医療機関でしか処方できないため、かかりつけ医からの紹介が必要な場合も多いです。

事前の検査・診断の必要性

レカネマブ使用には、アミロイドPETや脳脊髄液検査でAβ蓄積を確認する必要があります。

これらの検査は高額で、保険適用が限定的な場合もあるため、費用負担が課題に。

また、MRIで脳出血リスクを評価することも必須とされ、診断プロセスが複雑である点に注意が求められます。

家族や介護者にとっての影響と支援制度

レカネマブによってご家族や介護者の方にどのような影響があるのか解説します。

負担軽減の可能性

レカネマブが進行を遅らせれば、家族の介護負担が軽減される可能性があります。

たとえば、軽度状態が2~3年延長されれば、自立した生活が続く期間が長くなり、介護施設入所の時期を遅らせられるかもしれません。

患者本人だけでなく、家族にとっても生活の質向上が期待できるのです。

介護保険や公的支援との関係

現状レカネマブ治療費は医療保険で賄われますが、介護保険との直接的な連携は未整備。

将来進行抑制効果が介護ニーズに影響を与えれば、介護保険の認定基準や支援内容が見直される可能性も。

高額療養費制度を活用すれば負担は軽減されますが、検査費用などは別途かかる点に留意が必要です。

よくある質問(FAQ)

アルツハイマー病のレカネマブに関するよくある質問を紹介します。

レカネマブはどこで処方されるの?

認知症専門医がいる医療機関でしか処方されません。

地域の認知症疾患医療センターや連携病院が候補に挙がります。

具体的な施設は厚労省のガイドラインや各自治体の情報を確認してください。

保険は使える?費用は?

はい、公的医療保険が適用されます。

年間約298万円の薬価に対し、高額療養費制度で自己負担は年14万4,000円程度(70歳以上、一般所得層の場合)。

ただし、事前検査費用は別途かかる場合があります。

再発や進行を止められるのか?

レカネマブは進行を完全に止める薬ではなく、あくまで遅らせる効果が期待されています。

認知機能を元に戻す効果もないため、早期使用が推奨されるのです。

まとめ

レカネマブの登場は、アルツハイマー病治療に新たな選択肢をもたらしました。

高齢化が進む日本では、認知症患者の増加が社会的な負担となっていますが、進行抑制が可能になれば、医療費や介護コストの削減につながるかもしれません。

一方で高額な薬価や限定的な適応条件は課題として残ります。

2025年現在、レカネマブは希望の光であると同時に、慎重な運用が求められる薬です。

効果を最大限に引き出すには、早期診断体制の充実や副作用管理の徹底が不可欠。

今後の研究や実績次第で、アルツハイマー治療の未来がさらに開かれるでしょう。

参考資料・サイト

1 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/nop1-2_3.pdf
2.慶應義塾大学病院 https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000321.html
3.エーザイ株式会社 https://www.eisai.co.jp/news/2023/news202359.html
4.厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001178607.pdf
5.ロイターhttps://jp.reuters.com/markets/japan/funds/HPRAKWOX6NLPJMZ2SUWHTYID3A-2024-07-26/
6.エーザイ株式会社 https://www.eisai.co.jp/news/2023/news202335.html
7.厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001178607.pdf