子どもの病気というイメージが強い「喘息」。
しかし実は大人になってから発症するケースも少なくありません。
「最近、咳が長引く」「夜になると息が苦しい」──そんな症状は、成人喘息のサインかもしれません。
この記事では、大人の喘息の特徴や原因、症状、治療法、生活上の注意点までわかりやすく解説します。
大人になってから喘息とは?子どもの喘息と何が違うのか
喘息は気道が過敏に反応し、狭くなることで呼吸困難や咳を引き起こす病気です。
子どもの頃に喘息がなかった人でも、生活環境や体質の変化で発症する可能性があるのです。
小児喘息との違い(治りにくさ、重症化しやすさ)
子どもの喘息は成長とともに自然に治ることが多いのに対し、成人喘息は治りにくいとされています。
気道の炎症が慢性的になりやすく、治療を中断すると再発リスクが高まるためです。
また、重症化しやすい傾向もあり、放置すると夜間の発作で睡眠が妨げられたり、仕事に支障が出たりするケースも報告されています。
こうした小児喘息と成人喘息の違いを理解しておくことが重要です。
男女差や発症年齢について
成人喘息には男女差が見られ、女性ではホルモンバランスの変化が関係している可能性が指摘されています。
一方、男性では喫煙歴や職場での化学物質への暴露がきっかけとなる場合も。
発症年齢は20代から60代以上まで幅広く、特に40代以降で増加する傾向があります(参考:厚生労働省1)。
なぜ大人になってから喘息に?その原因とは
大人になってから喘息になる原因を紹介します。
ダニやハウスダストなどのアレルギー
大人になってから喘息を発症する主な原因の一つがアレルギーです。
ダニ、ハウスダスト、花粉、カビといったアレルゲンが気道を刺激し、炎症を引き起こします。
特に都市部ではこれらが成人喘息に関与するケースが目立つとされています。
アレルギー性の喘息は「アレルギー喘息」とも呼ばれます。
喫煙歴や職場環境、ストレスの影響
喫煙は気道を直接傷つけ、喘息リスクを高めます。
受動喫煙を含め、タバコの煙に長期間さらされると発症しやすくなるとされています(参考:厚生労働省2)。
また、職場での化学物質や粉塵への暴露、過労やストレスも引き金に。
ストレスは免疫系に影響を与え、気道の過敏性を増すことが示唆されています。
これらは現代の生活環境と密接に関係しています。
子どもの頃の喘息が再発するケースも
子どもの頃に喘息があり一度は治ったと思っていた人が、大人になって再発するケースも見られます。
風邪やアレルギーがきっかけで症状がぶり返すことが多く、気づかず放置すると気道の炎症が進行し、治療が難しくなることも。
再発型の成人喘息は、過去の病歴を振り返ることで早期発見につながる可能性があります。
大人の喘息に多い症状とチェックリスト
成人喘息に多い症状について解説します。
長引く咳、夜間や早朝に出やすい息切れ
大人の喘息で最も多い症状は、2週間以上続く咳です。
特に夜間や早朝に悪化しやすく、息切れや喘鳴(ゼーゼーする音)を伴うこともあります。
風邪が治ったはずなのに咳が長引く状態が続く場合、喘息を疑うべきサインとされています(参考:慶應義塾大学病院3)。
睡眠の質が下がり、日中の疲労感につながることも少なくありません。
痰が少ない乾いた咳
成人喘息の咳は痰が少なく、乾いた音が特徴的です。
気道の炎症が原因で、粘液が過剰に分泌されないためと考えられます。
風邪や気管支炎とは異なり、数カ月にわたって続くことがあり、こうした症状を知っておくことが早期対応の鍵になります。
「咳喘息」との違いについて
似た症状に「咳喘息」がありますが、これは喘息の一歩手前の状態ともいえます。
喘鳴や呼吸困難が少なく、咳だけが主症状。
しかし、放置すると本格的な喘息に進行するといわれています。
咳喘息と成人喘息の違いを理解し、適切なタイミングで受診することが大切です。
受診と診断方法|何科に行けばいい?
成人喘息の疑いがある場合、どのような病院に行けばいいのかを解説します。
呼吸機能検査・血液検査など
喘息の診断には呼吸機能検査(スパイロメトリー)が欠かせません。
気道の狭窄度を測定し、薬で改善するかどうかを確認します。
血液検査ではアレルギーの有無や炎症マーカーを調べ、胸部X線で他の疾患を除外することもあります。
これらの検査で喘息の診断を行うことが可能です。
呼吸器内科 or アレルギー科の選び方
成人喘息で何科に行けばいいか迷ったら、まずは呼吸器内科へ。
気道疾患の専門家が在籍し、適切な検査を受けられます。
アレルギーが疑われる場合はアレルギー科でも対応可能ですが、総合病院なら両方の視点で診てもらえるので、症状が重い場合にはそちらを選ぶのも良いでしょう。
自己判断NG!風邪との違いにも注意
長引く咳を「ただの風邪」と自己判断するのは危険です。
風邪は通常1~2週間で治りますが、喘息はそれ以上続くことが多く、放置すると悪化する恐れも。
早めに医療機関を受診し、専門医による診断を受けることが健康を守る第一歩になります。
治療法と日常でできる予防対策
成人喘息の治療法と日々できる予防対策を紹介します。
薬物療法(吸入薬、内服薬)の基本
成人喘息の治療の中心は「吸入ステロイド」です。
気道の炎症を抑え、発作を予防する効果があります。
発作時には短時間作用型の吸入薬を使い、症状を速やかに緩和。
重症の場合は内服薬や点滴が追加されることもありますが、基本的には吸入薬でコントロールを目指します(参考:アレルギーポータル4)。
治療を続けることで、重症化を抑えることが可能とされています。
アレルゲン除去・加湿・禁煙などのセルフケア
日常生活では、アレルゲンを減らす工夫が重要です。
ダニ対策として寝具を清潔に保ち、加湿器で湿度を50~60%に維持するのも効果的(参考:東京都保健医療局5)。
喫煙者は禁煙を心がけ、周囲にも協力を求めるのが理想的です。
エアコンにフィルターをつけたり、掃除をこまめにしたりするのも喘息の予防法として推奨されています。
こうしたセルフケアが発作の頻度を減らす助けになります。
発作時の対処法と生活の工夫
発作が起きたら、まず落ち着いて吸入薬を使用します。
姿勢は前かがみだと比較的楽になるとされています。
それでも改善しない場合は速やかに医療機関へ。
発作を繰り返す人は、医師と相談して発作が起きた際にどう対処するかの「アクションプラン」を作成しておくと安心です。
また、風邪を引かないよう手洗いやマスクを徹底し、空気の清潔さを保つことも大切。
まとめ
大人になってからの喘息は、風邪と間違えられやすい病気です。
注意すべきは、2週間以上続く場合。
気づかずに放置すると気道のダメージが蓄積し、重症化するリスクが高まります。
特に夜間や早朝に悪化する咳や息切れは、見逃さないよう注意が必要です。
早期に治療を始めれば、重症化を防ぎ、快適な生活を取り戻すことも可能です。
吸入薬や生活改善でコントロールが可能なので、見逃しを避けることが重要。
健康な毎日を守るためにも「最近息苦しい」「咳が長引く」といった症状があれば、専門医に相談を。
大人の喘息は気づきにくいからこそ、早めの対処が鍵になります。
参考資料・サイト一覧
1.厚生労働省 https://chiken-japan.co.jp/blog/phv-vaccination-rate/
2.厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/kaigi/060810/07.html
3.慶應義塾大学病院 https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000263/
4.アレルギーポータル https://allergyportal.jp/knowledge/adult-asthma/
5.東京都保健医療局 https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/allergy/measure/indoor.html