皮膚科に行ってもニキビが治らない?原因の再診断と治療ステップ見直し

2025年10月1日

「皮膚科に通い、処方された薬も真面目に塗っているのに、なぜニキビが治らないんだろう…」 そんな出口の見えない不安もあるかもしれません。

「色々試したのに、もう自分の肌は治らないのかもしれない」と、諦めかけている方も少なくないでしょう。

しかし、皮膚科の治療でニキビが治らないのには、必ず理由があります。

それは治療法が合っていない、効果が出るまでの期間が不足している、あるいは生活習慣に隠れた原因があるなど様々です。

この記事では、皮膚科治療で効果を実感できていない方のために、皮膚科医 川島眞医師監修のもと、以下の点を徹底的に解説します。

  • 治らない原因を特定する5つのチェックリスト
  • 日本皮膚科学会推奨の「標準治療」の正しい進め方
  • 治療効果を見極める「3ヶ月の目安」と次のアクション
  • 保険診療と自費診療の賢い使い分け
  • ニキビ跡にさせないための長期的な戦略

この記事を読めば、ニキビがなぜ治らないのかが明確になり、次に何をすべきか具体的な道筋が見えるはずです。

ニキビが皮膚科で治らない5つの理由

治療がうまくいかないと感じる時、まずは原因を正しく見極めることが重要です。

以下の5つのポイントをチェックしてみましょう。

効果判定には時間がかかる【目安は3ヶ月】

最もよくある誤解の一つが、効果判定のタイミングです。

  • 多くの外用薬は効果実感までに2〜3ヶ月必要
    ニキビ治療で中心となる塗り薬(ベピオ、ディフェリンなど)は、できてしまったニキビを治すだけでなく、「ニキビの芽」である微小面皰(マイクロコメド)に働きかけ、新しいニキビをできにくくする作用がメインです。

    肌のターンオーバーは約28日周期ですが、効果が目に見えて安定するまでには、少なくとも2〜3ヶ月の継続が必要です(参考:米国皮膚科学会 1)。

  • 「すぐ効かない=合わない」ではない
    治療開始から1ヶ月程度で「効果がない」と自己判断で中断してしまうと、またすぐにニキビが再発し、「治らない」という悪循環に陥ります。

    医師の指示通り、まずは3ヶ月間、根気強く治療を続けることが最初のステップです。

処方薬の使い方が適切でない可能性

処方された薬も、正しく使わなければ効果を最大限に発揮できません。

  • 塗る量が少ない・範囲が狭い
    ニキビのある部分だけに薬を塗っていませんか?多くのニキビ治療薬は、ニキビができやすいエリア全体に広めに塗る「予防塗り」が基本です。

    これにより、目に見えないニキビの芽の段階から抑えることができます。

  • 副作用(乾燥・刺激感)で自己中断してしまっている
    特に使い始めは、乾燥、ヒリヒリ感、皮むけといった副作用が出ることがあります。

    しかし、これらは保湿ケアを徹底したり、塗る回数を調整したりすることで徐々に慣れていくことがほとんどです。

    つらい場合は自己中断せず、必ず処方した医師に相談しましょう。

  • 抗菌薬(抗生物質)の長期使用による耐性菌の問題
    赤ニキビ(炎症性皮疹)がひどい場合に処方される抗生物質の飲み薬や塗り薬は、長期間使い続けると薬が効きにくくなる「薬剤耐性菌」を発生させるリスクがあります(参考:日本皮膚科学会 2)。

    そのため、炎症が落ち着いたら他の薬剤に切り替えるなど、漫然と使用しないことが重要です。

複数の原因が複雑に絡んでいる

ニキビは様々な要因が複雑に絡み合って発生します。

薬だけの治療には限界がある場合も少なくありません。

  • ホルモンバランスの乱れ(生理周期、ストレス)
    特に大人の女性は、生理前に悪化するケースが多く見られます。

    これは、男性ホルモンと似た働きをする黄体ホルモンの影響で皮脂分泌が活発になるためです(参考:クリーブランドクリニック 3)。

    また、ストレスや睡眠不足もホルモンバランスを乱し、ニキビの大きな原因となります。

  • 不適切なスキンケア(洗いすぎ、保湿不足、摩擦)
    皮脂が気になるからと一日に何度も洗顔したり、ゴシゴシこすったりすると、肌のバリア機能が低下し、かえってニキビを悪化させます(米国皮膚科学会 4)。

    洗顔後は、肌質に合った保湿剤でしっかりと潤いを補給することも非常に重要です。

  • 生活習慣の乱れ(睡眠、食事、腸内環境)
    質の良い睡眠、バランスの取れた食事は、肌の健康に不可欠です。

    特に高糖質・高脂質な食事は皮脂の分泌を増やす可能性が指摘されています。

ニキビの重症度に治療が合っていない

あなたのニキビの「重症度」と、現在行っている「治療法」は合っていますか?

日本皮膚科学会は、ニキビを以下のように分類しています。

  • 軽症: 白ニキビや黒ニキビが中心で、炎症のある赤ニキビが少しある状態。
  • 中等症: 赤ニキビが顔全体に広がり、膿を持った黄ニキビもある状態。
  • 重症: 顔全体に赤ニキビ、黄ニキビが多数あり、硬く盛り上がったニキビ(硬結)もある状態。
  • 最重症: 赤ニキビや黄ニキビが多数あるとともに、硬結や、ニキビ同士が繋がった嚢腫(のうしゅ)が多数混在する状態。

軽症であれば外用薬(塗り薬)が中心ですが、中等症以上では飲み薬の併用、さらに重症・最重症では自費診療の選択肢も検討が必要になります(参考:日本皮膚科学会 5)。

そもそもニキビではない可能性

同じ場所に繰り返しできる、なかなか治らない…という場合、ニキビとよく似た別の皮膚疾患の可能性も考えられます。

  • 同じ場所に繰り返すなら「粉瘤(アテローム)」かも?
    粉瘤は、皮膚の下に袋状の構造物ができ、そこに角質や皮脂が溜まったものです。

    中央に黒い点が見えたり、強く押すと臭いのある内容物が出たりすることが特徴です。

    無理に自分で潰すと炎症が悪化するため、皮膚科での摘出手術が必要になります(参考:日本皮膚科学会 6)。

  • その他、毛嚢炎や酒さなど似ている皮膚疾患の紹介
    毛穴の奥に細菌が感染して起こる「毛嚢炎(もうのうえん)」や、顔の赤みやほてりを伴う「酒さ(しゅさ)」なども、ニキビと見間違えやすい疾患です。

自己判断は禁物であり、専門医による正確な診断が不可欠です。

>>酒さは一生治らない?その真実と向き合い方を徹底解説

【医師監修】ニキビ治療の正しいステップと見直し方

「治らない」と焦る前に、まずは基本となる治療の全体像を把握しましょう。

ここでは、日本皮膚科学会が推奨する「標準治療」の正しいステップと、その後の見直し方について解説します。

>>大人ニキビが治らない?原因と正しいケア方法を徹底解説

STEP1:基本の標準治療(保険適用)を徹底する

現在、日本の皮膚科で行われるニキビ治療は、科学的根拠に基づいた「標準治療」が確立されています。

治療の基本は、塗り薬の組み合わせです。

  • 「アダパレン(ディフェリン)」と「過酸化ベンゾイル(ベピオ)」の併用も考える
    これらの薬は毛穴の詰まりを改善し、新しいニキビを予防する効果があります。

    作用の仕方が異なるため、併用することでより高い効果が期待できます。

  • 炎症が強い場合は「抗菌薬」を短期的に併用
    赤ニキビや黄ニキビが多い場合は、アクネ菌を殺菌する抗生物質の塗り薬や飲み薬を、原則として3ヶ月以内の短期間で併用します。

STEP2:3ヶ月後の効果判定と次のアクション

STEP1の治療を3ヶ月間しっかり継続した上で、効果を判定します。

  • 改善が見られない場合に医師に伝えるべきこと
    「どの薬を、いつから、どのように使って、どの程度の効果があったか(あるいは、なかったか)」を具体的に伝えましょう。

    「新しいニキビの数が減ったか」「赤みが引いたか」など、変化を記録しておくとスムーズです。

  • 処方変更・追加の選択肢
    効果が不十分な場合、抗生物質の種類を変更したり、皮脂の分泌をコントロールするビタミン剤や、体質改善を目指す漢方薬などを追加したりすることがあります。

STEP3:保険治療で改善しない場合の選択肢(自費診療)

標準治療を3ヶ月以上行っても改善が乏しい重症ニキビの場合、次の選択肢として自費診療が検討されます。

  • イソトレチノイン(アキュテイン)の位置づけと効果・注意点
    皮脂腺を強力に縮小させ、ニキビの原因を根本から絶つ効果が期待できる飲み薬です。

    高い効果がある一方で、胎児への催奇形性など重篤な副作用のリスクがあるため、医師の厳格な管理のもとで内服する必要があります。

    日本ではまだ承認されていませんので自由診療になります。

  • ケミカルピーリング、レーザー治療などの施術
    薬剤で古い角質を取り除くケミカルピーリングや、皮脂腺を破壊するレーザー治療など、様々な美容皮膚科の施術があります。

  • 保険診療と自費診療のメリット・デメリット比較表
項目 保険診療 自費診療
メリット 費用が安い、治療実績が豊富 選択肢が多い、ニキビ跡の治療も可能
デメリット 治療法が限定的、ニキビ跡治療は対象外 費用が高い、施術によってはダウンタイムがある

【女性特有の悩み】生理前・妊娠中の「治らないニキビ」対策

特に成人女性のニキビは、ホルモンバランスの影響を大きく受けます。

生理周期で悪化するニキビの原因と対策

  • ホルモンバランスの変動と皮脂の関係
    排卵後から生理前にかけて分泌が増える「黄体ホルモン」は、皮脂の分泌を促進させるため、ニキビが悪化しやすくなります。

  • 低用量ピルやスピロノラクトンなど、ホルモン治療の選択肢
    他の治療で効果が不十分な場合、ホルモンバランスを整える低用量ピルや、男性ホルモンの働きを抑えるスピロノラクトンという利尿薬が有効なことがあります。

これらは婦人科や美容皮膚科で処方されます。

妊娠中・授乳中に使える薬とスキンケア

  • 使用を避けるべき薬剤と安全に使える治療法
    妊娠中は、ビタミンA誘導体(ディフェリン、イソトレチノインなど)や一部の抗生物質は使用できません。

    使用できる薬剤は限られるため、必ず医師に妊娠中・授乳中であることを伝えてください。

  • 敏感な肌状態に合わせた保湿・紫外線対策の重要性
    妊娠中は肌がデリケートになりがちです。

    低刺激性のスキンケア製品を選び、保湿と紫外線対策をいつも以上に丁寧に行いましょう。

ニキビ跡にしない・させないための治療戦略

ニキビ治療の最終ゴールはニキビを治すことだけでなく、「ニキビ跡を残さない」ことです。

ニキビ跡の種類を知る(赤み・色素沈着・クレーター)

ニキビ跡は、大きく3つのタイプに分けられます。

  • 赤み: 炎症が残っている状態。
  • 色素沈着: 炎症によってメラニンが過剰に作られ、シミのようになった状態。
  • クレーター(瘢痕): 炎症が真皮層にまで及び、皮膚が陥没してしまった状態。

保険診療でできるニキビ跡ケア

  • 「赤み」は炎症を抑える治療の継続が鍵
    ニキビの炎症を早期に抑えることが、赤みを長引かせない最善の策です。

  • ヘパリン類似物質やビタミンC誘導体などの処方
    血行を促進し保湿するヘパリン類似物質や、メラニンの生成を抑えるビタミンC誘導体などが処方されることがあります(参考:日本皮膚科学会 7)。

美容皮膚科(自費)での本格的なニキビ跡治療

できてしまった色素沈着やクレーターを本格的に治療するには、自費診療が必要です。

  • 色素沈着へのアプローチ(レーザー、光治療)
    レーザー治療や光治療(IPL)で、メラニン色素を破壊します。

  • クレーター(瘢痕)へのアプローチ(ダーマペン、フラクショナルレーザー)
    ダーマペンやフラクショナルレーザーなどで皮膚に微細な穴を開け、肌の再生能力(創傷治癒)を利用して凹みを滑らかにしていきます。

新たな治療法を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。

日本ではニキビでお悩みの方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。

例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。

・最新の治療をいち早く受けられる
・専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
・治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる

ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。

実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

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皮膚科医 川島眞医師がよくある質問に答える

Q1. 皮膚科に行ってもニキビが治らないのはなぜですか?

A. 治療期間の不足、薬の使い方の誤り、生活習慣の乱れ、治療法が重症度に合っていない、などが考えられます。まずは3ヶ月間、医師の指示通りに治療を継続することが重要です。

Q2. 皮膚科のニキビ治療は、何ヶ月くらいで効果が出ますか?

A. 一般的に、保険適用の外用薬(ディフェリン、ベピオなど)の効果を実感するには2〜3ヶ月かかると言われています。焦らず根気強く治療を続けましょう。

Q3. 治らないニキビ、どうすればいいですか?

A. まずは現在受けている標準治療を3ヶ月間徹底し、それでも改善しない場合は、治療法の変更や追加(自費診療を含む)を主治医に相談しましょう。

セカンドオピニオンを検討するのも一つの方法です。

Q4. もう一生ニキビは治らないのでしょうか?

A. 適切な治療を根気よく続ければ、ニキビはコントロールできます。

「完全にゼロにする」ことよりも「新しいニキビができにくく、跡を残さない状態」を目指すことが大切です。

絶望せず、専門家と一緒に最適な道を探しましょう。

まとめ

皮膚科に行ってもニキビが治らないと感じる時、最も大切なのは「正しい知識を持って、諦めずに治療を継続すること」です。

この記事で解説したポイントを振り返りましょう。

  • 原因の再確認: 治らない理由は一つではありません。治療法、期間、生活習慣、鑑別疾患の視点で見直しましょう。
  • 治療のロードマップ: まずは保険適用の標準治療を3ヶ月。効果を見ながら医師と次のステップを相談することが基本です。
  • 長期的な視点: ニキビをコントロールし、「跡を残さない」ことが最終ゴールです。

この記事を参考に、再度かかりつけの医師に相談したり、時にはセカンドオピニオンを求めたりするなど、前向きな一歩を踏み出してみてください。

参考サイト・資料一覧
1.米国皮膚科学会 https://www.aad.org/public/diseases/acne/derm-treat/treat
2.日本皮膚科学会 https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/zasou2023.pdf
3.クリーブランドクリニック https://health.clevelandclinic.org/period-acne
4.米国皮膚科学会 https://www.aad.org/public/diseases/acne/skin-care/tips
5.日本皮膚科学会 https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/zasou2023.pdf
6.日本皮膚科学会 https://qa.dermatol.or.jp/qa17/q01.html
7.日本皮膚科学会 https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/zasou2023.pdf

記事監修者情報

記事監修者情報

川島眞の画像
川島 眞(かわしま まこと)
皮膚科専門医・医学博士
東京女子医科大学 名誉教授
Dクリニックグループ代表

日本皮膚科学会認定専門医として、アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の診療・研究に長年従事。

本記事では医学的情報の正確性と内容監修を担当。

所属学会:

  • 日本皮膚科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本皮膚アレルギー学会
  • 日本香粧品学会
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