爪水虫の爪は切った方がいい?切る・削るの効果と注意点を解説

2025年8月20日

爪水虫(爪白癬)は、見た目の変化や不快感を引き起こすやっかいな病気です。

「爪を切れば治るのでは?」と考える人もいるかもしれませんが、実はそれだけでは不十分。

むしろ間違った自己処理は症状を悪化させるリスクもあります。

この記事では皮膚科専門医 川島眞医師の監修のもと、爪水虫の正しい知識から、皮膚科が推奨するケア方法、治療法、予防策までを詳しく解説。

正確な情報をもとに、早期回復を目指しましょう。

爪水虫(爪白癬)とは?

爪水虫(爪白癬)の基本知識と自然治癒する可能性を解説します。

爪水虫の症状と見た目の特徴

爪水虫は医学的には爪白癬(つめはくせん)と呼ばれます。

爪水虫は白癬菌(はくせんきん)というカビが爪に感染することで起こります。

主な症状は爪の変色(白色や黄色)、厚くなる、ボロボロになる、剥がれるなど。

初期には爪の一部が白く濁る程度ですが、進行すると爪全体が変形したり、悪臭を伴う場合もあります。

特に高齢者や足の環境が湿りやすい人に多く見られます。

また、足の爪だけではなく、手の爪が水虫になることもあります。

皮膚の水虫との違いとは?

皮膚の水虫(足白癬)と爪水虫は同じ白癬菌が原因ですが、影響を受ける部位が異なります。

皮膚の水虫は足の裏や指の間に赤み、かゆみ、水ぶくれを引き起こしますが、爪水虫は爪そのものに感染し、かゆみは少ない傾向があります。

皮膚の水虫が放置されると、爪に菌が広がり爪水虫へと進行することもあります。

両者は併発することもあるため、足全体のチェックが必要です(参考:日本皮膚科学会1)。

>>水虫なのにかゆくない?症状・見分け方から治療法まで解説

爪水虫は自然に治るのか?

爪水虫は自然治癒することはほぼありません。

白癬菌は爪の内部に深く入り込むため、体の免疫力だけで排除するのは難しいのです。

放置すると菌が爪全体や隣の爪に広がり、治療がより複雑になるリスクもあります。

早期に適切な治療を始めることで、回復の可能性が高まります。

まずは自己判断せず、専門医の診断を受けることが重要です(参考:米国疾病対策センター2)。

>>水虫を放置するとどうなる?リスクと対処法を徹底解説

爪水虫のとき「爪を切る」のは効果があるのか

爪を切るだけでは爪水虫は治りませんが、塗り薬の浸透を促してくれる効果に期待ができます。

切るだけでは治らない理由

「爪を切れば菌が減るのでは?」と考える人もいますが、単に爪を切るだけでは爪水虫は治りません。

白癬菌は爪の表面だけでなく、爪床(そうしょう)と呼ばれる爪の下の皮膚や爪の深部に潜んでいるため、表面を切除しても菌は残ります。

そのため、適切な薬物療法が必要です。

削ることで薬の浸透が良くなるって本当?

爪を適切に削ることで、外用薬(塗り薬)の浸透が良くなる可能性はあります(参考:日本皮膚科学会3)。

厚くなった爪は薬が内部に届きにくいため、医師が専用の器具で爪を薄く削る処置を行う場合もあります。

ただし、自己処理で過度に削ると爪床を傷つけ、細菌の感染症のリスクが高まるため注意しましょう。

あくまでも医師の指導のもとで行うことが推奨されます。

厚くなった爪はどう処理すべきか

厚くなった爪は見た目や歩行時の不快感を軽減するため、処理が必要な場合があります。

以下は基準の目安です:

  • 切る:伸びた部分が邪魔な場合、爪切りで慎重に切り揃える。ただし、深爪は避ける。
  • 削る:厚い部分を薄くしたい場合、専用の爪やすりを使用。ただし、過度な削りはNG。

皮膚科での専門的な削りが推奨されるケースも多いです。

自己処理でのリスクと注意点

自分で爪を切ったり削ったりする際、以下のリスクに注意してください。

  • 感染拡大:不潔な爪切りを使うと、菌が他の爪や皮膚に広がる可能性。
  • ケガ:深爪や過度な削りで爪床を傷つけ、細菌感染を引き起こすリスク。
  • 悪化:不適切な処理で爪の変形が進行する場合も。

使用する器具はアルコール消毒し、清潔な状態で処理することが重要です。

皮膚科が推奨する正しい爪のケア方法

自分で爪を切るにしても、正しい爪ケア方法を理解しておくことが重要です。

爪を切る・削る正しい手順とタイミング

爪を切る際は、以下の手順を守りましょう。

  • 爪を清潔にし、柔らかくするために入浴後に行う。
  • 清潔な爪切りを使用し、爪の端を直線的に切る(深爪は避ける)。
  • 切った後は爪やすりで角を滑らかに。

削る場合は、専用の爪やすりを使い、力を入れすぎないように注意。

週1~2回のケアが適切です。

スクエアオフカットって何?ケガを防ぐ切り方

スクエアオフカットとは爪の先端を直線的に切り、角を軽く丸める切り方です。

この方法は、巻き爪や深爪によるケガを防ぎます。

具体的な手順は、爪の先を直線に切り、角を軽くやすりで整えます。

爪切り後の清潔管理と保湿ケアの重要性

爪を切った後は、以下のケアが欠かせません。

  • 清潔管理:爪や周辺の皮膚を石鹸で洗い、乾燥させる。
  • 保湿:乾燥によるひび割れを防ぐため、尿素配合クリームなどで保湿。

これにより、菌の増殖を抑え、皮膚のバリア機能を高められます。

爪水虫の治療法と期間の目安

爪水虫の治療には外用薬と内服薬が主に処方され、外用薬で効果が見られない場合は内服薬が使用されます。

外用薬(塗り薬)の使い方と効果を高める方法

外用薬は爪水虫の第一選択治療で、ルリコナゾールやエフィナコナゾールが一般的です。

使い方のポイントは、

  • 爪表面を軽く削り、薬の浸透を助ける。
  • 毎日決まった時間に塗り、乾燥させる。
  • 塗る前に爪を清潔に保つ。

効果は6~12ヶ月で現れることが多いですが、爪の伸びる速度により異なります。

内服薬(飲み薬)が必要なケースとは?

内服薬(テルビナフィンやイトラコナゾール)は、爪の半分以上が感染している重症例や外用薬で効果が出ない場合に使用されます。

内服薬の場合は、6~12ヶ月程度で効果が期待できます。

また、最近では3か月の服用で効果が期待できるホスラブコナゾールという薬も多く利用されています。

これらの内服薬は医師の管理下での服用が必要です。

市販薬と皮膚科処方薬の違い

市販薬(例:抗真菌クリーム)は皮膚の水虫にはある程度有効ですが、爪水虫には効果がありません。

爪は薬が浸透しにくいため、皮膚科の処方薬(高濃度の抗真菌成分)が必要です。

市販薬での治療は行わず、早めに皮膚科を受診しましょう。

治療にかかる期間と再発防止のポイント

爪水虫の治療期間は、爪の成長速度により6ヶ月~1年以上かかることもあります。

また、爪水虫は再発しやすい疾患であるため、完治後も再発防止が重要です。

  • 靴や靴下を清潔に保つ。
  • 足を乾燥させ、湿気を避ける。
  • 定期的な皮膚科のフォローアップ。

これらを守ることで再発リスクを抑えられます。

>>水虫の治し方|タイプ別治療法と自宅でできる予防・再発防止策

爪水虫を悪化させないための生活習慣

爪水虫を悪化させないためには、家庭内の環境や靴・靴下の見直しが必要です。

家庭内感染を防ぐための予防策

爪水虫は家族間でうつる可能性があります。

予防策は以下の通りです。

  • バスマットやスリッパは共有しない。
  • 足を洗った後、しっかり乾燥させる。
  • 靴下は毎日交換し、洗濯する。

これで家庭内感染のリスクを軽減できます。

通気性・靴・靴下の選び方

靴や靴下の選び方は重要です。

  • 靴:夏は通気性の良い素材を選び、毎日同じ靴を履かない。
  • 靴下:綿や吸湿性の高い素材を選び、こまめに交換。

適切な靴・靴下を選ぶことで足の湿気を抑え、菌の増殖を防ぐこともできます。

再発しやすい人の特徴と対策

再発しやすいのは、以下のような人です。

高齢者(爪の成長が遅い)。
糖尿病や免疫力の低下がある人。
長時間靴を履く職業の人。

当てはまる方は定期的に足のチェックや皮膚科の受診で対策しましょう。

爪水虫はいつ皮膚科を受診すべき?

爪水虫で病院を受診すべきタイミングについて解説します。

自分で治療しても改善しないとき

市販薬や自己処理では効果が期待できませんので、なるべく早期に皮膚科の受診を検討しましょう。

専門医は正確な診断(顕微鏡検査など)を行い、適切な治療を提案します。

変色・痛み・変形がある場合は要注意

爪の変色(黒や緑)、痛み、変形がある場合、爪水虫以外の感染症(細菌感染や緑膿菌)の可能性も考えられます。

この場合は早急な受診が必要です。

医師による爪削りの必要性

厚くなった爪は医師による安全に削れます。

これにより薬の効果が高まり、見た目や不快感も改善する可能性があります。

自己処理では難しい場合、専門医に相談しましょう。

新たな治療法を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。

日本ではアトピー性皮膚炎でお悩みの方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。

例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。

・最新の治療をいち早く受けられる
・専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
・治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる

ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。

実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

>>治験ジャパン新規登録はこちら<<

爪水虫に関するよくある質問

Q. 爪を切ったら菌は減りますか?

爪を切るだけでは菌は減りません。

白癬菌は爪の深部や爪床に潜むため、薬物療法が必要です。


Q. 毎日切った方がいいですか?
毎日切る必要はなく、週1~2回のケアで十分です。

むしろ過度な切削は逆効果となる可能性があるため注意しましょう。


Q. 家族にうつりますか?対策は?
うつる可能性はあります。

バスマットやスリッパの共有を避け、足を清潔に保つことが対策です。


Q. 市販薬で治せますか?
軽度の皮膚の水虫には有効ですが、爪水虫には効果がありません。

皮膚科の処方薬が推奨されます。

まとめ|切るだけではNG!医師の診断と治療が回復の近道

爪水虫は放置すると悪化し、治療期間も長引きます。

早期に皮膚科を受診し、正しい治療とケアを始めることが回復の鍵です。

爪を切るだけでは不十分なため、専門的な治療を取り入れましょう。

参考資料・サイト一覧
1.日本皮膚科学会 https://www.dermatol.or.jp/qa/qa10/q10.html

2.CDC(米国疾病対策センター)https://www.cdc.gov/ringworm/treatment/index.html

3.日本皮膚科学会 https://www.dermatol.or.jp/qa/qa10/q23.html

記事監修者情報

記事監修者情報

川島眞の画像
川島 眞(かわしま まこと)
皮膚科専門医・医学博士
東京女子医科大学 名誉教授
Dクリニックグループ代表

日本皮膚科学会認定専門医として、アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の診療・研究に長年従事。

本記事では医学的情報の正確性と内容監修を担当。

所属学会:

  • 日本皮膚科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本皮膚アレルギー学会
  • 日本香粧品学会
臨床研究の実施先をお探しの企業様へ
弊社は医療の未来を支える臨床研究の支援を通じ、社会に貢献することを理念として掲げております。
ご相談いただく研究内容や条件に応じて、柔軟かつ誠実に対応させていただきます。
臨床研究の実施にあたりご支援が必要な場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせはこちら

関連記事