アトピーによる顔の赤みを抑える方法|セルフケア・皮膚科治療を解説

2025年8月20日

アトピー性皮膚炎による顔の赤みは、かゆみや見た目の悩みから生活に影響を及ぼすことがあります。

出来る限り顔の赤みを抑えたいと考えている方も少なくないでしょう。

この記事では皮膚科専門医 川島眞医師の監修のもと、顔の赤みが起こる原因や、すぐに試せる応急処置、日常のセルフケア、皮膚科での治療法を詳しく解説。

赤みを悪化させない生活習慣や、炎症・乾燥・色素沈着ごとのケア方法も紹介します。

正しい知識でアトピーの赤みを軽減し、快適な毎日を目指しましょう。

アトピー性皮膚炎による顔の赤み、なぜ起こる?

アトピーによる顔の赤みは炎症や傷、バリア機能の低下などが要因となります。

アトピー性皮膚炎の赤みの正体

顔の赤みが目立つのは皮膚の炎症、かき壊しによる傷、そしてバリア機能の低下が主な原因です。

アトピー性皮膚炎では皮膚のバリア機能が弱まり、単純な刺激やダニや花粉などのアレルゲンが侵入しやすくなります。

これが炎症を引き起こし、赤みやかゆみを生じさせるのです。

顔は皮膚が薄いため、より赤みが目立つ傾向にあります。

また、皮膚の乾燥により角質層の水分保持能力が低下し、外部刺激に対する抵抗力が落ちることも赤みの原因となります(参考:日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」1)。

さらにかゆみで掻いてしまうと皮膚が傷つき、炎症が悪化することがあります。

掻き壊しによる傷が治る過程で、炎症が長引き、赤みが慢性化する可能性も。

この悪循環を断ち切ることが、赤みを抑える鍵となります。

炎症とかき壊しバリア機能の低下が連鎖的に赤みを引き起こすため、これらを同時にケアすることが大切です。

>>アトピー性皮膚炎を徹底解説!症状・原因・治療法から日常生活の対策まで

赤ら顔との違いは?見極めのポイント

アトピー性皮膚炎による顔の赤みと、一般的な赤ら顔(酒さなど)は原因や症状が異なります。

見極めるポイントを知ることで、適切な対処が可能です。

アトピー性皮膚炎の赤みはかゆみを伴う湿疹や乾燥が特徴で、炎症が原因で毛細血管が拡張し、赤く見えます。

一方赤ら顔は毛細血管の拡張や過敏反応が主で、かゆみよりもほてりを感じる場合があります。

また、アトピーでは左右対称に症状が出やすく、顔全体や首にも広がりやすいのに対し、赤ら顔は鼻や頬に集中することが多いです。

さらにアトピーでは掻き壊しによる傷や色素沈着が残ることがありますが、赤ら顔ではこうした症状は少ないです。

自己判断が難しい場合は、皮膚科での診断を受けることが重要です。

アトピー性皮膚炎による赤みと赤ら顔は異なる原因を持つため、症状を観察し適切なケアを選ぶことが必要です。

顔の赤みを抑える応急処置とセルフケア

アトピーによる顔の赤みを抑えるには、冷却やスキンケアの見直し、保湿剤の使用などが効果的です。

冷やすことで炎症を一時的に抑える方法

顔の赤みが強いとき、冷却は即効性のある応急処置として有効です。

冷却することで炎症による熱感やかゆみを抑え、毛細血管の拡張を一時的に緩和できます。

たとえば、清潔なタオルで包んだ保冷剤や冷やした濡れタオルを、5~10分程度、患部に優しく当てる方法です。

氷を直接当てると刺激が強すぎるため避けましょう。

ただし、冷却は一時的な対処法であり、根本的な治療には医療機関の受診が必要です。

赤みを抑えるには冷却で炎症を落ち着かせることがある程度有効ですが、適切な温度と方法を守りましょう(参考:厚生労働省1)。

刺激を避けるスキンケア(洗顔・化粧水・保湿)

アトピー肌のスキンケアは、刺激を最小限に抑え、バリア機能を整えることが重要です。

洗顔は低刺激の洗顔料を泡立て、ぬるま湯(32~34℃)で優しく洗い流します。

ゴシゴシ擦るとバリア機能がさらに低下するため、手で泡を滑らせるようにしましょう。

洗顔後はすぐに化粧水と保湿剤で水分と油分を補給します。

敏感肌用の低刺激製品を選び、界面活性剤が少ないものを優先してください。

特にセラミド配合の化粧水やクリームは、肌のバリア機能を補強し、乾燥による赤みを軽減する効果が期待できます。

刺激を避けたスキンケアはアトピー性皮膚炎による赤みを抑え、肌を保護する基本です。

ワセリン・ヒルドイドなど保険適用の保湿剤の使い方

保険適用の保湿剤は、コストを抑えつつ効果的なケアが可能です。

ワセリンは皮膚表面を保護し、水分蒸発を防ぐ効果があり、刺激が少ないため顔にも使いやすいです。

ヒルドイド(ヘパリン類似物質)は、血行促進と保湿効果を持ち、乾燥や皮むけ予防に期待できます。

使用方法は入浴後や洗顔後に清潔な手で薄く塗布し、1日2~3回が目安です。

ただし、塗りすぎはべたつきや毛穴詰まりの原因になるため、医師の指示を守りましょう。

ワセリンやヒルドイドを正しく使うことで、赤みと乾燥を効果的にケアできます(参考:日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」2)。

皮膚科で処方される薬とその効果

アトピーによる皮膚科の受診ではステロイド外用薬やタクロリムス(プロトピック)、抗ヒスタミン薬などが処方されます。

ステロイド外用薬の役割と正しい使い方

ステロイド外用薬は、アトピー性皮膚炎の炎症と赤みを抑える主要な治療法です。

ステロイド外用薬は免疫反応を抑え、炎症を鎮める効果があり、顔の赤みを軽減します。

強さは5段階(Ⅰ群~Ⅴ群)に分類され、顔には弱めの外用薬が使われることが多いです。

使用時は医師の指示に従い塗布し、症状改善後は徐々に減量する漸減療法が推奨されます(日本皮膚科学会「参考:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」3)。

自己判断でステロイド外用薬の使用を中止すると再燃リスクが高まるため、医師と相談しながら使用しましょう。

タクロリムス(プロトピック)やデルゴシチニブの特徴

ステロイド以外の外用薬も、顔の赤み対策に有効です。

タクロリムス(プロトピック)は免疫抑制作用で炎症を抑えることに期待でき、特に顔や首に適しています。

タクロリムスはステロイド外用薬で副作用が出やすい部位での使用実績が多く、赤みの軽減に役立つとされています。

また、デルゴシチニブ(コレクチム)は、JAK阻害薬で炎症やかゆみを抑える新しい選択肢として注目されています。

タクロリムスやデルゴシチニブは、顔の赤みを安全に抑える選択肢として有効です。

JAK阻害薬・抗ヒスタミン薬・内服薬の補助的役割

補助的な薬も赤みやかゆみのコントロールに役立ちます。

JAK阻害薬(バリシチニブなど)は内服や外用で炎症を抑え、重症例に使用されます。

また、抗ヒスタミン薬はかゆみを軽減し、掻き壊しによる赤みの悪化を防ぎます。

漢方薬などの内服薬は、体質改善を目指す場合に補助的に使われることもあります。

ただし、効果には個人差があるため、医師と相談が必要です。

副作用・長期使用のリスクはあるの?

薬の副作用や長期使用のリスクを理解しておくことは大切です。

ステロイド外用薬は長期使用で皮膚の菲薄化(ひはくか:皮膚が薄くなること)や毛細血管拡張のリスクがありますが、適切な使用では問題が少ないです。

タクロリムスやJAK阻害薬も刺激感や感染症リスクが報告されていますが、重篤な副作用はまれです。

薬の副作用は適切な管理で回避することもできます。

>>アトピー性皮膚炎の治し方|症状を改善する薬と生活習慣の全知識

顔の赤みを悪化させない日常生活の工夫

アトピーによる顔の赤みを悪化させないためには、紫外線対策や睡眠・食事などの生活習慣の見直しが重要です。

紫外線対策と肌のバリアを守る方法

紫外線はアトピー性皮膚炎の赤みを悪化させる要因の一つです。

紫外線は皮膚の乾燥を進め炎症を誘発する可能性があるため、日焼け止め(SPF30程度、敏感肌用)や帽子、日傘で保護しましょう。

夏場に紫外線対策を徹底した患者では、赤みやかゆみの悪化が抑えられた例があります。

紫外線対策は肌のバリアを守り、赤みを予防する重要な習慣です(日本皮膚科学会「参考:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」4)。

衣類・寝具の素材選びと摩擦の回避

衣類や寝具の素材選びも、赤み対策に影響します。

肌に優しい素材を選び、化学繊維やウールは避けましょう。

摩擦による刺激は炎症を悪化させるため、ゆったりした服やシーツを選ぶことが大切です。

食事・ストレス・睡眠が肌に与える影響

生活習慣は肌の状態に大きく影響します。

タンパク質やビタミンA、亜鉛を摂取し、腸内環境を整えることで肌の修復を促します。

また、ストレスはかゆみや炎症を悪化させる可能性があるため、リラックス法や十分な睡眠(7~8時間)を心がけましょう。

食事や睡眠の改善で、赤みを抑える体質づくりが可能です。

赤みのタイプ別ケア方法

一言にアトピーの赤みと言っても、その症状ごとに対処方法も変わってきます。

ここでは症状ごとの対処法を解説します。

炎症が強いとき(ジュクジュク・腫れ)

ジュクジュクした赤みや腫れがある場合、炎症が強い状態です。

ステロイド外用薬やタクロリムスで炎症を抑えつつ、清潔を保つことが重要です。

また、入浴で滲出液を洗い流し、低刺激の保湿剤で保護しましょう。

炎症が強いときは速やかに医療機関を受診し、適切なケアを受けることが推奨されます。

乾燥が強いとき(カサカサ・皮むけ)

乾燥によるカサカサや皮むけは、バリア機能の低下が原因だと考えられます。

ヒルドイドやセラミド配合の保湿剤をこまめに塗り、加湿器で室内湿度(50~60%)を保ちます。

また、洗顔や入浴時の高温の湯は避け、刺激を減らしましょう。

乾燥が強いときは、保湿と環境調整で赤みを軽減できます。

色素沈着が残っているとき(茶色っぽい赤み)

色素沈着を伴った赤みは、炎症後のメラニン蓄積が原因だと考えられます。

炎症が落ち着いた後、ビタミンC誘導体やハイドロキノンを試す場合がありますが、表皮の色素沈着は自然に薄れることもあります。

レーザー治療は効果がみられることもありますが、アトピー肌では慎重な判断が必要です。

新たな治療法を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。

日本ではアトピー性皮膚炎でお悩みの方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。

例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。

  • 最新の治療をいち早く受けられる
  • 専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
  • 治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる

ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。

実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

>>治験ジャパン新規登録はこちら<<

皮膚科医 川島眞医師がアトピーの疑問に回答

アトピー性皮膚炎に悩む患者の質問
Q1:アトピー性皮膚炎が完治することはありますか?
皮膚科専門医 川島眞
成長に伴って自然に症状が軽くなることはありますが、現代医学では「完治」という表現は慎重に使います。根気強く治療・日常ケアを続けることにより症状の軽い状態を維持することが可能であり、それが治療のゴールです。
アトピー性皮膚炎に悩む患者の質問
Q2:ステロイド外用薬は危険ではないですか?
皮膚科専門医 川島眞
医師の管理のもと正しく使えば安全です。むしろ、使うべきときに使わない方が皮膚の状態を悪化させ、治療が長引く可能性があります。炎症が強いときはステロイドでしっかり抑えることが重要であり、その後の保湿治療で再発を防ぐというのが基本的な方針です。
アトピー性皮膚炎に悩む患者の質問
Q3:市販の保湿クリームやオイルでも効果はありますか?
皮膚科専門医 川島眞
一定の効果は期待できますが、香料や添加物が刺激となる場合があるため注意が必要です。特にオイル(ワセリンなど)はシンプルで安全性が高いですが、べたつきが気になる方もいます。皮膚科で処方されるヘパリン類似物質配合外用剤は医療用として低刺激性で効果が確認されており、まずはそちらを推奨します。
アトピー性皮膚炎に悩む患者の質問
Q4:かゆみが強くて眠れない場合、どうしたらいいですか?
皮膚科専門医 川島眞
皮膚科では抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を併用し、症状を軽減する治療を行います。掻かない工夫(爪を短く、手袋、冷湿布など)も併用してください。また、温度湿度などの管理も重要です。痒みを抑える効果の高い注射薬もあります。
アトピー性皮膚炎に悩む患者の質問
Q5:最近注目されている新しい治療法はありますか?
皮膚科専門医 川島眞
はい。近年では以下のような新しい治療法が登場しています。
デュピルマブ(デュピクセント):重症例に有効な生物学的製剤(注射薬)
JAK阻害薬:新しい経口薬(成人向けが主)
ネモリズマブ(ミチーガ):痒み抑制効果の高い生物学的製剤(注射薬)
プロアクティブ療法:症状が落ち着いても予防的に抗炎症薬を短期間続ける方法
これらはすべて皮膚科専門医の診断のもと、重症度に応じて適切に選択しましょう。

まとめ|正しい対処で赤みを軽減しよう

アトピーの顔の赤みを抑えるには、応急処置と根本治療の両方が必要です。

保湿などで一時的に赤みを抑えつつ、ステロイド外用薬やタクロリムスで炎症をコントロールします。

ただし、自己判断では赤みの原因や適切な治療が難しい場合があります。

皮膚科では症状に応じた薬やケア方法を提案してもらえます。

アトピー性皮膚炎による顔の赤みに悩んだら早めに皮膚科を受診し、専門的なアドバイスを受けましょう。

参考資料・サイト一覧
1.厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/allergy/dl/s070914-03_0037.pdf
2.日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」 https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/ADGL2024.pdf
3.日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」 https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/ADGL2024.pdf
4.日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/ADGL2024.pdf

記事監修者情報

記事監修者情報

川島眞の画像
川島 眞(かわしま まこと)
皮膚科専門医・医学博士
東京女子医科大学 名誉教授
Dクリニックグループ代表

日本皮膚科学会認定専門医として、アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の診療・研究に長年従事。

本記事では医学的情報の正確性と内容監修を担当。

所属学会:

  • 日本皮膚科学会
  • 日本美容皮膚科学会
  • 日本皮膚アレルギー学会
  • 日本香粧品学会
臨床研究の実施先をお探しの企業様へ
弊社は医療の未来を支える臨床研究の支援を通じ、社会に貢献することを理念として掲げております。
ご相談いただく研究内容や条件に応じて、柔軟かつ誠実に対応させていただきます。
臨床研究の実施にあたりご支援が必要な場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせはこちら

関連記事