巻き爪(まきづめ)は足の爪が内側に彎曲(わんきょく)して皮膚に食い込む状態を指します。
時には痛みを引き起こし、日常生活に影響を与えることもあります。
しかし、巻き爪治療の中には保険適用外となるものもあり、治療費が高額になるケースが少なくありません。
なぜ巻き爪治療は保険が適用されないのか、その理由を医療保険制度や治療方法の観点から、皮膚科専門医 川島裕平医師の監修のもと詳しく解説します。
また、保険適用となるケースや費用の目安についても紹介します。
巻き爪でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
巻き爪治療に保険適用外があるのはなぜ?
巻き爪治療法の中に保険適用外がある理由を解説します。
結論:医療行為として認められないケースがある
巻き爪治療において保険適用外となるケースがある理由は、治療が「医療行為」として国の基準で認められていない場合があるためです。
日本の健康保険制度では、治療が医学的に必要と判断される場合にのみ保険が適用されます。
巻き爪治療の中には、予防的ケアや見た目の改善を目的としたものが含まれるため、これらは保険の対象外とされることが一般的です。
例えば、ワイヤー矯正やプレート矯正といった矯正治療は、痛みや炎症が軽度な場合、医療的必要性が低いとみなされることがあります。
このような背景から、巻き爪治療の多くが保険適用外となるのです。
したがって、巻き爪治療を検討する際は、治療内容や症状の重症度に応じて保険適用の可否を確認することが重要です。
美容目的と判断される治療
保険適用外となる理由の一つに、治療が「美容目的」と判断されるケースがあります。
巻き爪治療では爪の形状を整えるための矯正治療(例:ワイヤー法やプレート法)が美容目的とみなされることが多く、特に痛みや炎症がない場合は自費診療となります。
また、ネイルサロンやフットケアサロンで行われる施術も、医療行為として認められていないため、全額自己負担となります。
このように美容目的とみなされる治療は保険適用外となり、患者が全額負担するケースが多いのです。
保険適用になる巻き爪治療とは?
保険が適用される巻き爪治療法を解説します。
重症度による基準
巻き爪治療が保険適用となるかどうかは、症状の重症度によって大きく左右されます。
軽度の巻き爪で痛みや炎症がない場合は、保険適用外となることが一般的です。
しかし、巻き爪の影響で爪が皮膚に食い込んで炎症を生じた陥入爪(かんにゅうそう)の場合は、医療的治療が必要と判断され、保険適用となる可能性があります。
また、爪の食い込みによる感染や肉芽形成が確認された場合も、保険適用の対象となることが多いです。
このように症状の重症度も保険適用の基準となるため、軽度なうちは自費診療となるケースが多いのです。
医師の診断が必要なケース
保険適用を受けるには、医師による診断が不可欠です。
巻き爪の影響で陥入爪などを引き起こしている場合、皮膚科や形成外科の医師が医療的必要性を判断します。
例えば、爪が皮膚に食い込んで赤みや腫れ、痛みがひどい場合、医師はこれを治療が必要な状態と診断します。
この場合、保険適用の治療を提案することがあります。
一方、医師が「予防的ケア」と判断した場合や、見た目の改善を目的とした矯正治療は保険適用外となります。
自己判断せずまずは専門医を受診して正確な診断を受けることが重要です。
>>巻き爪は何科を受診すべき?症状から治療法、費用まで徹底解説
保険適用外になる主な治療例
保険適用外となる巻き爪の治療法を解説します。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は巻き爪治療の主流ですが、原則として保険適用外です。
ワイヤー矯正は形状記憶合金のワイヤーを爪に装着して彎曲を矯正する方法で、痛みが少なく施術時間も短いのが特徴です。
しかし、予防的ケアや美容目的とみなされるため自費診療となります。
例えば、マチワイヤー法やVHO式は、1回あたり10,000円~15,000円程度で、1~2か月ごとにワイヤー交換が必要です。
また、爪に穴を開ける必要がある場合、爪の状態によっては施術が難しいこともあります。
ワイヤー矯正は効果的ですが、保険適用外のため全額自己負担となる点に注意が必要です。
プレート矯正
プレート矯正も巻き爪治療の一般的な方法ですが、保険適用外です。
プレート矯正は特殊な樹脂や金属製のプレートを爪表面に貼り付け、弾力で爪を矯正する方法です。
代表的な治療としてB/Sスパンゲ法などがあり、見た目が目立たず、爪が短くても施術可能な点がメリットです。
しかし、医療行為として認められていないため、1回あたり5,000円~10,000円程度の費用がかかります。
半年~1年ほどで症状の改善が期待できますが、毎月のプレート交換が必要で、トータルの治療費が高額になる場合もあります。
プレート矯正は再発しにくいとされますが、保険適用外であるため費用を事前に確認することが大切です。
形状矯正・美容目的の施術
形状矯正や美容目的の施術は、ほぼ全て保険適用外となります。
爪の見た目を整えるための矯正や、ネイルサロンでのジェルネイルを用いた施術は、保険の対象外です。
例えば、アップジェルや巻き爪ブロックといった方法は、1回あたり3,000円~5,000円程度で提供されていますが、全額自己負担となります。
また、こうした施術は医療機関以外で行われる場合もあり、衛生管理や施術者の技術にばらつきがあるため、注意が必要です。
保険適用・適用外の治療費の目安
保険適用・適用外それぞれの治療費の目安を解説します。
保険診療の場合の費用例
保険適用となる巻き爪治療の費用は、比較的低額で抑えられます。
ただ、初診料や処方箋料が別途かかる場合があり、総額で10,000円前後となることもあります。
これらの治療は巻き爪の影響で陥入爪を生じている場合などに適用されるため、医師の診断が重要です。
自費診療の相場
自費診療の巻き爪治療は、治療法や施設によって費用が大きく異なります。
ワイヤー矯正は1回あたり4,000円~15,000円、プレート矯正は5,000円~15,000円が相場です。
また、初診料や再診料が加算される場合、費用はさらに高額になる可能性があります。
医療機関以外(ネイルサロンやフットケアサロン)では、施術者の技術や使用する器具によって価格が変動し、1回あたり3,000円~15,000円程度が一般的です。
自費診療は高額になるため、事前に費用を確認することが大切です。
医療機関やサロンでの価格差
医療機関とサロンでは、巻き爪治療の価格やサービス内容に差があります。
医療機関では医師が診断を行い、必要に応じて保険適用治療を提供するため、信頼性が高いです。
一方、サロンではプレート矯正やジェルネイルを用いた施術が主流で、費用は1回あたり3,000円~15,000円程度と医療機関と同等かやや安価な場合があります。
しかし、サロンでは薬の処方や医学的な治療ができないため、感染や炎症所見がある場合は医療機関の受診が必要です。
また、サロンの施術者は国家資格を持たない場合が多く、技術のばらつきが懸念されます。
新たな治療法を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。
日本では巻き爪でお悩みの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。
例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
・最新の治療をいち早く受けられる
・専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
・治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。
実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
巻き爪治療に関するよくある質問
巻き爪治療に関するよくある質問を紹介します。
保険証は使えるの?
巻き爪治療で保険証が使えるかどうかは、症状と治療内容によります。
巻き爪の影響による陥入爪などの治療は保険適用となることが多く、保険証を使用できます。
しかし、ワイヤー矯正やプレート矯正など、爪の形状を整える治療は保険適用外となり、保険証を使っても全額自己負担となります。
医療機関によっては、初診時に保険証を提示することで診断や検査が保険適用となる場合もあるため、受診時に確認することをおすすめします。
保険証の使用可否は治療前に医療機関で確認することで明確になります。
軽度でも保険が効く?
軽度の巻き爪では、保険適用となる可能性は低いです。
痛みや炎症がない軽度の巻き爪は、予防的ケアや美容目的とみなされるため、保険適用外となることが一般的です。
ただし、軽度でも爪が皮膚に食い込んで赤みや軽い痛みがある場合、医師が医療的必要性を認めた場合には保険適用となる可能性があります。
どこで相談すればいい?
巻き爪の相談先は、症状の重さや目的によって異なります。
まずは皮膚科や形成外科、フットケア外来のある医療機関を受診するのが最適です。
医師による診断で保険適用の可能性が判断され、適切な治療が受けられます。
軽度の巻き爪や見た目の改善を希望する場合は、巻き爪専門のサロンや整骨院も選択肢になりますが、衛生管理や施術者の技術を確認することが重要です。
まとめ|保険適用かどうかは医師に相談を
巻き爪治療の保険適用可否は自己判断では難しいため、専門医への相談が不可欠です。
巻き爪の症状は個人差が大きく、軽度に見えても陥入爪や感染が潜んでいる場合があります。
専門医の診断を受ければ症状の重症度や適切な治療法、保険適用の可否が明確になります。
自己判断でセルフケアを続けると、症状が悪化するリスクもあるため、早めに専門医に相談することが賢明です。
記事監修者情報

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医として、専門分野の爪疾患、重症のアトピー性皮膚炎や尋常性乾癬などの皮膚疾患の診療、美容皮膚科診療に従事。
本記事では医学的情報の正確性と内容監修を担当。
所属学会:
- 日本皮膚科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本睡眠学会
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