子どもの水いぼ(伝染性軟属腫)は、ウイルス性の皮膚感染症で、特に幼児や小学生に多く見られます。
「子どもの水いぼが治らない」と悩む保護者の方も多いのではないでしょうか。
自然治癒することもある一方で、治るまでに時間がかかったり、広がったりすることもあります。
この記事では皮膚科専門医 川島眞医師の監修のもと、水いぼの特徴や原因、治療法、家庭でのケア方法をわかりやすく解説。
病院に行くタイミングやよくある質問にもお答えします。
子どもの肌トラブルに悩む保護者の方、ぜひ参考にしてください。
水いぼとは?子どもに多い皮膚ウイルス感染症
水いぼに関する基礎知識を解説します。
水いぼの特徴と見分け方
水いぼは子どもによく見られるウイルス性の皮膚疾患で、小さなイボが特徴です。
水いぼの正式名称は「伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)」と言います。
通常1~5mm程度の光沢のある白やピンク色の隆起で、中央にへこみがあるケースが多いのが特徴。
かゆみを伴う場合もあり、触ると柔らかい感触があります。
主に腕、脇、膝裏、腹部などに現れ、顔や首に広がることもあります。
水いぼは見た目で判断できる場合が多いです。
見分けるポイントはイボの光沢と中央のへこみですが、自己判断が難しい場合は皮膚科での診断が確実です。
どうして子どもに多く見られるのか?
水いぼは子どもの免疫システムがまだ未熟なため発生しやすい疾患です。
ウイルスに抵抗する力が大人に比べて弱く、肌のバリア機能も完全ではないため、感染が広がりやすい傾向にあります。
また、保育園や小学校でのスキンシップやタオルの共有、プールでの接触が感染経路になることがあります(参考:厚生労働省1)。
特に5歳以下の幼児や小学生に多く、集団生活での接触機会がリスクを高めることもあります。
健康な子どもでも感染する可能性があり、特別な体質でなくても発症します。
子どもの水いぼが中々治らない理由とは
子どもの水いぼが中々治らない理由を解説します。
自然治癒に時間がかかる
水いぼが治らないと感じる最大の理由は、自然治癒に時間がかかることです。
多くの場合、子どもの免疫力がウイルスを抑え込み、半年から1年で自然に消滅します。
しかし、この期間は個人差が大きく、早く治る子もいれば数年に渡り長引く子もいます。
免疫システムがウイルスを完全に排除するまで新しいイボが次々と出てくることもあり、「治らない」と感じられる場合があります。
免疫力や肌質の影響(アトピー・乾燥肌)
免疫力の強さや肌の状態が、水いぼの治癒に大きく影響します。
アトピー性皮膚炎や乾燥肌の子どもは肌のバリア機能が弱いため、ウイルスが広がりやすく、治りにくい傾向があります。
また、かゆみでひっかくことで、ウイルスが他の部位に広がることもあります。
免疫力が一時的に低下している場合(風邪やストレスなど)も、治癒が遅れる可能性があります。
>>アトピー性皮膚炎の治し方|症状を改善する薬と生活習慣の全知識
ひっかく・潰すことで再発しやすい
水いぼをひっかいたり、潰したりすると、ウイルスが周囲の皮膚に広がり、新しいイボができやすくなります。
子どもはかゆみや違和感で無意識に触ることが多く、保護者が気づかないうちに悪化することもあります。
潰れたイボから出る白い芯にはウイルスが含まれており、これが他の部位や他の人に感染する原因になります。
かゆみを抑えるケアが再発防止の鍵です。
兄弟や子ども間の感染の連鎖も原因に
水いぼは接触感染が主なため、兄弟や保育園・小学校での感染が連鎖的に広がることがあります。
同じタオルやおもちゃを共有したり、プールで遊んだりすることで、ウイルスが移りやすいです。
一度感染した子どもが治っても、園内で他の子から再感染するケースもあります。
感染予防策を家庭や園・学校全体で徹底することが、連鎖を断ち切るカギとなります。
水いぼの治療法と対応策
水いぼの治療法について解説します。
治療が必要なケース/自然に任せてよいケース
水いぼは自然治癒することも時にあるため、治療せずに経過観察する場合もあります。
治療が不要なケースは、イボが少ない、かゆみがない、広がっていない場合などです。
一方治療が必要なケースは、イボが広範囲に広がる、化膿する、顔やデリケートな部位にできる、かゆみが強い場合です。
治療か経過観察か迷う場合は、一度皮膚科医に相談してみると良いでしょう。
ピンセット除去法とその痛み
ピンセットでイボを一つずつ摘除する方法が一般的な治療です。
専用のピンセットでイボの芯を取り除き、ウイルスを除去します。
施術時間は短いですが、水いぼの数が多い場合は時間がかかることもあります。
痛みは子どもの年齢や感受性によりますが、麻酔テープ(ペンレス)や麻酔クリーム(EMLAクリーム)を事前に使用することで軽減できる場合も多いです。
事前に医師に相談して、痛み対策を講じると安心です。
漢方・ヨクイニンやハトムギ外用薬
ヨクイニン(ハトムギの種子由来の漢方)は免疫力を高めて水いぼの治癒を促すとされます。
内服薬として使用されますが、科学的なエビデンスは限定的である点は注意です。
効果には個人差があり、必ずしも全ての子どもに有効とは限りません。
自己判断での使用は避け、子どもの体質や状態に合った処方を受けることが大切です。
液体窒素・硝酸銀など他の選択肢
液体窒素(えきたいちっそ)でイボを凍結させる方法や、硝酸銀を塗布してイボを焼く方法もあります。
液体窒素は短時間で施術が終わる一方、痛みを伴うことがあり、幼い子どもには負担が大きい場合があります。
硝酸銀は比較的簡便ですが、色素沈着のリスクがあります。
これらの治療法を選ぶ際は、医師とメリット・デメリットを丁寧に相談することをおすすめします。
家庭でできる水いぼケアと感染予防策
家庭でできる水いぼケアについて解説します。
入浴・プール・タオルの使い回しの注意点
水いぼは接触でうつるため、タオルやバスタオルの共有は厳禁。
入浴後は清潔なタオルで優しく拭き、プールではイボを防水テープでカバーするなどの対策が有効です。
医師の許可を得て参加を判断しましょう。
保湿と肌を清潔に保つ習慣
乾燥肌は水いぼを悪化させる可能性があるため、低刺激の保湿剤でケアを行いましょう。
かゆみを抑えるため刺激の強い石鹸は避け、弱酸性のボディソープを選ぶのが理想的です。
アトピーや湿疹との関係性
アトピー性皮膚炎がある子は、水いぼが治りにくく、かゆみで悪化しやすい傾向にあります。
湿疹と水いぼが混在する場合、専門医の診断が必要です。
病院に行くタイミングと診察の流れ
子どもの水いぼで病院に行く目安と診察の流れを解説します。
受診すべきサイン(広がる/化膿する/顔にできる)
水いぼが急に増える、赤く腫れる、膿む、顔やデリケートな部位にできる場合は受診を検討しましょう。
かゆみが強く、子どもが我慢できない場合も、専門医の診察を受けることをおすすめします。
皮膚科での対応と流れ
皮膚科では視診で水いぼを診断し、必要に応じて治療方針を提案します。
ピンセット除去や液体窒素療法などの選択肢を説明され、保護者の希望も考慮されます。
治療後は、経過観察のスケジュールや家庭でのケア方法を指導してもらえます。
初診では不安な点や質問を事前に整理しておくと、医師との相談がスムーズです。
痛みを和らげる処置(麻酔テープ等)の有無
ピンセット除去の際、痛みを軽減するために麻酔テープ(ペンレス)や麻酔クリーム(EMLAクリーム)を使用する医院もあります。
ただし、麻酔の使用可否や費用は施設によって異なるため、事前に確認することをおすすめします。
子どもの不安を和らげるため、治療の流れや痛み対策について医師と相談してください。
新たな治療法を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。
日本では水いぼでお悩みの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。
例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
・最新の治療をいち早く受けられる
・専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
・治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。
実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
子どもの水いぼに関するよくある質問
子どもの水いぼに関するよくある質問を紹介します。
Q. ずっと治らないけど放置して大丈夫?
A. 水いぼは自然治癒する場合が多いですが、広がる、化膿する場合は皮膚科を受診してください。
経過観察中も、保湿や感染予防を徹底することが大切です。
Q. 兄弟にうつりますか?
A. タオルやおもちゃの共有で感染する可能性があります。
兄弟間でタオルを分ける、スキンシップを控えるなどの対策をおすすめします。
感染が確認された場合は、早めにケアを始めましょう。
Q. プールは行ってもよい?
A. 医師の許可があれば、防水テープでイボをカバーし、プールに参加可能です。
Q. 市販薬や自然療法は効きますか?
A. 市販薬(ハトムギ茶など)の効果は、科学的根拠が乏しいとされています。
ヨクイニンも、医師の指導のもとで使用してください。
自己判断での使用は避けましょう。
まとめ:水いぼが治らないときに大切なこと
水いぼは自然治癒するケースも時にはあるため、焦らず経過を観察することが大切です。
ただ、水いぼが中々治らない、広がる、かゆみが強い場合は、迷わず皮膚科医に相談してください。
専門医のアドバイスを受ければ、子どもの状態に最適なケアが見つかります。
参考資料・サイト一覧
1.厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002q4hg-att/2r9852000002q4lb.pdf
記事監修者情報

Dクリニックグループ代表
日本皮膚科学会認定専門医として、アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の診療・研究に長年従事。
本記事では医学的情報の正確性と内容監修を担当。
所属学会:
- 日本皮膚科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚アレルギー学会
- 日本香粧品学会
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