花粉症に悩む人にとって、毎年春が来るたびに憂鬱な気持ちになるのは辛いもの。
鼻水やくしゃみ、目のかゆみに耐えながら薬を飲む生活から抜け出したいと考える方も少なくないでしょう。
そんな中「舌下免疫療法」が注目され始めています。
この治療法は花粉症の症状を一時的に抑えるだけでなく、体質を改善して根本的な解決を目指せるとして注目されています。
本記事では舌下免疫療法の仕組みや効果、副作用、費用、さらにはどんな人に向いているのかまで徹底解説。
花粉症対策を見直したい方はぜひ最後までご覧ください。
花粉症 舌下免疫療法の基本情報
花粉症の舌下免疫療法とはどのような治療法なのか、基本的な部分を解説します。
どんな治療?仕組みと目的
舌下免疫療法は、花粉症やアレルギー性鼻炎の体質を根本から改善する治療法として知られています。
アレルギーの原因物質(アレルゲン)を少量ずつ舌の下に投与し、身体に慣れさせることで過剰な免疫反応を抑えるのが目的。
この方法は、アレルギー症状を緩和するだけでなく、将来的に薬の使用量を減らしたり、症状自体を軽減したりする可能性があります。
例えば、スギ花粉が体内に入った際に「敵」とみなして攻撃する免疫システムに対し、「無害」と認識させるプロセスを経るのです。
厚生労働省も認可した治療法であり、科学的根拠に基づいたアプローチとして医療現場で採用されています(厚生労働省※1)。
舌下免疫療法の対象となる花粉症の種類
現時点で舌下免疫療法が保険適用となるのは、スギ花粉症とダニアレルギー性鼻炎の2種類に限定されています。
日本では花粉症患者の約70%がスギ花粉に反応するとされており、多くの人がこの治療の恩恵を受けられる可能性があるのです(アレルギーポータル※2)。
また、ダニによる通年性のアレルギー性鼻炎にも対応しており、季節を問わず症状に悩む人にも適しています。
ただし、ヒノキやブタクサ、カモガヤなど他のアレルゲンには舌下免疫療法の効果が認められていないため、事前の検査でアレルギーの原因を特定することが重要です。
治療薬の種類
舌下免疫療法で使用される主な治療薬は、スギ花粉症向けの「シダキュア」とダニアレルギー向けの「ミティキュア」です。
シダキュアはスギ花粉エキスを含み、ミティキュアはダニ抗原を配合した錠剤で、いずれも1日1回舌の下で溶かして服用します。
以前は「シダトレン」という液剤もありましたが、現在は錠剤が主流。
これらの薬は医師の処方箋が必要で、初回投与は医療機関で行い、安全性が確認された後に自宅で継続します。
どちらも日本で承認されており、信頼性の高い選択肢として広く使われています。
舌下免疫療法はどんな人に向いている?治療適応と注意点
舌下免疫療法はお子さんや妊娠中の方でも受けられるのかを解説していきます。
子どもでも受けられる?年齢制限と条件
舌下免疫療法は5歳以上の子どもから治療が可能です。
特にスギ花粉症やダニアレルギーが低年齢化している現代では、早めに体質改善を始めるメリットが大きいとされています。
ただし、錠剤を舌の下で1分間保持する能力が必要なため、小さなお子さんの場合は医師が適性を判断します。
臨床試験でも子どもへの安全性と効果が確認されており、保護者と相談しながら進められるケースが多いです(日本アレルギー学会※3)。
成長期にアレルギーを軽減できれば、生活の質向上にもつながります。
妊娠中や持病がある場合は?
妊娠中や授乳中の女性は治療開始が推奨されません。
安全性が完全に確立していないためです。
ただし、治療中に妊娠した場合、医師と相談の上継続することは可能とされています。
また、重度の喘息や心疾患、自己免疫疾患、がん治療中の人、免疫抑制剤を使用している人も適応外となる場合があります。
高血圧でβ遮断薬を服用している場合も注意が必要。
こうした条件は副作用リスクを最小限に抑えるための措置なので、持病がある方は必ず事前に医師に確認してください(日本アレルギー学会※4)。
始める時期はいつがベスト?
スギ花粉症の場合、治療開始は花粉飛散シーズン(1~4月)を避けた6月から11月が最適です。
この時期に始めると、次のシーズンでの効果が期待しやすくなります。
一方、ダニアレルギーは通年性なのでいつでも開始可能。
ただし、初回投与はアレルゲンに慣れる段階であるため、症状が落ち着いているタイミングを選ぶのが賢明です。
早めに始めればそれだけ早く体質改善が進むとされているため、計画的なスケジュール調整が推奨されます。
舌下免疫療法の流れと期間
舌下免疫療法の流れや治療期間について解説します。
初診から開始までのステップ
舌下免疫療法を始めるには、まず耳鼻科やアレルギー科を受診し、アレルギー検査を受けます。
血液検査や皮膚テストでスギ花粉またはダニへの反応を確認後、治療適応が決まります。
初診では医師から治療の説明を受け、同意書に署名。
初回投与はクリニックで行い、副作用がないか30分程度観察されるのが一般的です。
問題がなければ薬が処方され、2回目以降は自宅で服用を開始します。
このプロセスは安全性を確保するための重要なステップです。(足立耳鼻咽喉科※5)
どのくらい続けるの?治療期間の目安
治療期間は通常3~5年が目安とされています。
国際的なガイドラインでも最低3年間の継続が推奨されており、効果が最大化するのはこの期間を過ぎた頃と考えられているのです。
最初の1年は2週間に1回の通院、2年目以降は月1回の通院で経過観察を行います。
長期間にわたる治療ですが、症状の軽減や薬の減量が期待できるため、根気強く続ける価値があります。(日本アレルギー学会※6)
途中でやめたらどうなる?
治療を途中で中断すると、それまでの効果が失われるリスクがあります。
アレルゲンに慣れるプロセスがリセットされ、再開する際はまた最初からやり直しになる可能性が高いのです。
例えば、1年続けた後にやめた場合、翌年の花粉シーズンで症状が元に戻ってしまうことも考えられます。
医師の指導のもと継続することが効果を持続させる鍵なので、自己判断での中断は避けましょう。
舌下免疫療法の効果と限界
舌下免疫療法の効果が出るまでの期間や再発リスクについて解説します。
いつから効果が出る?実感までのタイムライン
効果の実感には個人差がありますが、早い人で数カ月、一般的には1~2年で症状の軽減を感じるケースが多いとされています。
臨床試験では、治療開始から8~12週間で鼻炎症状が17~32%改善したとの報告もあります。
初年度は効果が限定的でも、2年目以降に顕著な変化を実感する人が増える傾向にあります。
焦らず続けることが大切です。
完治する?再発リスクは?
舌下免疫療法で完全に症状が消失する人は約20%、症状が改善する人は約60%とされています。
つまり、約80%の人に何らかの効果がある一方、残り20%には効果が乏しい可能性も。
治療終了後も効果が数年持続する場合が多いですが、7年以上経過すると再発するケースが報告されています。
再発時は再度1~2年の治療で改善が見込めます(日本医科大学※7)
効果を高めるコツ
効果を最大化するには、毎日欠かさず服用することが重要です。
また、花粉飛散シーズンに他の薬を併用して症状を抑えつつ治療を続けるのも有効。
生活習慣ではアレルゲンへの暴露を減らすためにマスクや空気清浄機を活用するのもおすすめです。
医師と定期的に相談しながら調整することで、より高い効果が期待できます。
舌下免疫療法の副作用やリスクについて
舌下免疫療法の副作用について紹介します。
よくある副作用(口の中のかゆみなど)
舌下免疫療法の副作用として最も多いのは、口の中のかゆみや腫れ、喉の不快感です。
これらは投与初期に発生しやすく、通常は軽度で数週間以内に収まることがほとんど。
約半数の患者が何らかの軽い症状を経験するものの、日常生活に大きな支障をきたすケースは稀です。
重篤な副作用の可能性と対応策
まれにアナフィラキシーショックなどの重篤な副作用が起こる可能性があります。
症状としては呼吸困難やじんましん、血圧低下などが挙げられ、発生率は非常に低いものの注意が必要。初回投与を医療機関で行うのはこのリスクを管理するためです。
万一異変を感じた場合は、直ちに医師に連絡し、必要に応じて救急車を呼ぶことが推奨されます(鳥居薬品株式会社※8)。
費用と保険適用について
舌下免疫療法の費用や保険適用について解説します。
保険適用される?自己負担額の目安
舌下免疫療法は健康保険が適用されるため、費用負担が比較的軽減されます。
3割負担の場合、初回検査で4,000~5,000円、月々の薬代はシダキュアで約1,800円、ミティキュアで約2,000円が目安。
これに診療費が加わるため、クリニックによって若干異なります。
子どもは「子ども医療費助成制度」で無料になる場合も。
通院頻度と年間コスト
初年度は2週間に1回、その後は月1回の通院が必要とされています。
年間コストは薬代と診察費を合わせて約2~3万円程度が目安。
長期間の治療であることを考慮すると、初期投資として捉えつつ、将来的な薬代削減を期待する価値があります。
舌下免疫療法はどこで受けられる?クリニックの選び方
舌下免疫療法はどこで受けられるのかを解説します。
耳鼻科・アレルギー専門医の探し方
舌下免疫療法は耳鼻咽喉科やアレルギー科で提供されています。
日本耳鼻咽喉科学会や日本アレルギー学会のウェブサイトで専門医を探すのが確実。
地域のクリニックでも対応可能な場合が多いので、口コミや評判を参考に選ぶのも良いでしょう。
初診時に確認すべきポイント
初診ではアレルギー検査の有無、治療の流れ、副作用への対応策を必ず確認してください。
医師が舌下免疫療法の経験豊富かどうかも重要。
質問しやすい雰囲気かどうかも、長期間の付き合いを考えると見逃せません。
よくある質問(Q&A)
舌下免疫療法に関するよくある質問を紹介します。
治療中に花粉症の薬は使える?
はい、併用可能です。治療初期は症状が残る場合があるため、抗ヒスタミン薬や点鼻薬を適宜使用して構いません。医師に相談しながら調整するのがベストです。
他のアレルギーにも効く?
現在はスギとダニのみが対象。ヒノキやブタクサなど他のアレルギーには効果が期待できないので、検査で確認が必要です。
旅行中や飲み忘れた時は?
旅行中は薬を持参し、普段通り服用を続けてください。飲み忘れた場合は翌日から再開すればOK。ただし、長期間中断すると効果が落ちるので注意しましょう。
まとめ
花粉症を本気で治したいなら、舌下免疫療法は有力な選択肢です。
対症療法ではなく体質改善を目指すこの治療は、長期間続けることで症状の軽減や薬の減量を実現可能とされています。
自己判断せず、まずは専門医に相談して自分に合ったプランを立てることが成功への第一歩です。
根気よく続けることがカギとなるので、覚悟を持って取り組めば、花粉症に悩まされない生活が手に入るかもしれません。
参考サイト・資料一覧
※1.厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000077514.pdf
※2.アレルギーポータル https://allergyportal.jp/knowledge/hay-fever/
※3.日本アレルギー学会 https://www.jsaweb.jp/modules/news_topics/index.php?content_id=308
※4.日本アレルギー学会 https://www.jsaweb.jp/uploads/files/allergen_202101.pdf
※5.足立耳鼻咽喉科 https://adachijibika.com/sublingual-immunotherapy-fllow
※6.日本アレルギー学会 https://www.jsaweb.jp/uploads/files/allergen_202101.pdf
※7.日本医科大学 https://www.nms.ac.jp/var/rev0/0040/2133/121812145916.pdf
※8.鳥居薬品株式会社 https://www.torii.co.jp/iyakuDB/data/material/ccm_tekisei.pdf