蕁麻疹(じんましん)がなかなか治らず、かゆみや赤みに悩まされている方は多くいます。
本記事では蕁麻疹が長引く理由や自宅でできるケア、専門的な治療法を、皮膚科専門医 川島眞医師の監修のもとわかりやすく解説します。
最新の研究や信頼できる情報源をもとに、慢性蕁麻疹のコントロール方法や誤解を解き、快適な生活を取り戻すためのヒントをお届けします。
蕁麻疹が治らないのはなぜ?考えられる主な原因
蕁麻疹が中々治らない原因を解説します。
急性と慢性の蕁麻疹で原因は異なる
蕁麻疹が治らない場合、急性と慢性のタイプによって原因が異なることが多いです。
急性蕁麻疹は通常1ヶ月以内に治まりますが、慢性蕁麻疹は6週間以上続き、原因特定が難しい場合があります。
急性は感染症、食物や薬などによる反応が主で、慢性は複合的な要因が関与します。
慢性蕁麻疹の多くが原因不明(特発性)とされています(参考:日本皮膚科学会1)。
したがって蕁麻疹が長引く場合は、急性か慢性かを判断し、適切な対応を考えることが重要です。
蕁麻疹のタイプをチェックしよう
中々治らない蕁麻疹にはどのような特徴があるのかを解説します。
1ヶ月以内で治まる急性蕁麻疹とは
急性蕁麻疹は、発症から1ヶ月以内に自然に治まるのが特徴です。
原因は上気道感染症、食物アレルギー、薬アレルギーなど一時的な刺激が多く、症状は数時間~数日で消失します。
たとえばエビを食べた直後に発症し、2日以内で治まるケースが典型的です。
急性蕁麻疹は一過性であるため、原因を避ければ再発しにくいとされています。
1か月以上続く慢性蕁麻疹の特徴
慢性蕁麻疹は、1か月以上症状が続く状態を指します(参考:日本皮膚科学会4)。
毎日または頻繁に発疹やかゆみが出現し、原因が特定しにくいのが特徴です。
たとえば、ストレスや体調変化で悪化するケースが多く、患者のQOL(生活の質)を下げることもしばしばあります。
慢性蕁麻疹では、長期的な管理と治療が必要となります。
物理的刺激による蕁麻疹(寒冷・日光・摩擦など)
物理的刺激による蕁麻疹は、特定の刺激で誘発され、治りにくい場合があります。
寒冷蕁麻疹は冷たい水や風、日光蕁麻疹は紫外線、機械性蕁麻疹は引っ掻くなどの皮膚への刺激、圧迫が原因です。
たとえば、冬に冷水で手を洗うと発疹が出るケースは寒冷蕁麻疹と判断される可能性があります。

刺激を避けることで、症状のコントロールが可能です。
アレルギーが関連した蕁麻疹への対処
アレルギー物質への繰り返しの接触が、蕁麻疹が治らない一因となることがあります。
特定の食物(エビ、ナッツなど)、花粉、ペットの毛、化学物質などがアレルゲンとなり、接触が続くと症状が繰り返すことがあります。

たとえば、食物アレルギーによる蕁麻疹は、原因食物を摂取し続ける限り再発する可能性が高いです。
アレルゲンを特定し、接触を避けることで、蕁麻疹の症状を軽減できる場合があります。
ストレスや自律神経の乱れが関連した蕁麻疹への対処
ストレスや自律神経の乱れが蕁麻疹を悪化させ、治りにくくすることがあります(参考:日本皮膚科学会 蕁麻疹診療ガイドライン2)。

ストレスはヒスタミン放出を促進し、かゆみや発赤を誘発します。
たとえば、仕事のプレッシャーや睡眠不足が症状を悪化させたケースもあります。
ストレス管理を行うことで、蕁麻疹の症状を抑えられる可能性があります。
感染症や内臓疾患などが背景にあるケース
感染症や内臓疾患が蕁麻疹の原因となり、治りにくい場合があります。
ヘリコバクター・ピロリ感染や甲状腺疾患、肝機能障害などが関連する例が報告されています。
たとえば、甲状腺自己免疫疾患の患者では、蕁麻疹の発症率が一般より高いとの報告も確認できます。
これらの疾患を治療することで、蕁麻疹の改善が期待できる場合があります。
薬の副作用や食生活の影響
薬の副作用や食生活が蕁麻疹を長引かせる可能性があります。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や抗生物質が蕁麻疹を誘発することがあり、食生活では添加物やアルコールが影響する場合も(参考:厚生労働省3)。
たとえば、解熱鎮痛剤として利用されるアスピリンによる蕁麻疹は、服用を続ける限り再発リスクが高いとされます。
薬や食生活を見直すことで、蕁麻疹の症状を軽減できる可能性があります。
自己免疫による慢性的な反応
自己免疫反応が慢性蕁麻疹の原因となることがあります。
体が自身の組織を誤って攻撃し、ヒスタミン放出を引き起こす場合、症状が長期間続くことがあります。
自己免疫性の蕁麻疹では、専門的な治療が必要になることが多いです。
かゆみケアと注意点
蕁麻疹のかゆみケア方法について解説します。
かゆみを抑える正しい冷却方法
かゆみを抑えるには、適切な冷却が効果的です。
冷たいタオルや保冷剤を薄い布で包み、患部に10~15分当てることで、ヒスタミンの放出を抑えられます。
ただし、氷を直接当てると刺激が強すぎるため避けましょう。
また、寒冷蕁麻疹の場合は冷却が逆効果となるため注意が必要です。
冷却は蕁麻疹の不快感を軽減する簡単な方法です。
市販薬(抗ヒスタミン薬)の使い方と注意点
皮膚科で処方される薬と同様に、市販の抗ヒスタミン薬も蕁麻疹の症状を抑えるのに役立ちます。
第2世代抗ヒスタミン薬(セチリジン、フェキソフェナジンなど)は眠気が少なく、1日1~2回の服用で効果が持続します。
ただし、服用前に医師や薬剤師に相談し、用法用量を守りましょう。
市販薬は一時的に使用することは安全で可能ですが、長期使用は医師の指導が必要です。
刺激物・アルコール・カフェインは避けるべき?
刺激物やアルコール、カフェインは蕁麻疹を悪化させる可能性があります。
辛い食べ物やアルコールは血流を増加させ、かゆみを増すことがあります。
これらを控えることで、症状の悪化を防げる場合があります。
ストレスコントロールと睡眠の重要性
ストレス管理と十分な睡眠は、蕁麻疹の症状軽減に欠かせません。
瞑想や深呼吸、ヨガなどでストレスを軽減し、7~8時間の睡眠を確保することで、自律神経が整います。

睡眠不足が蕁麻疹の再発リスクを高めるとされています。
心身のケアを続けることで、蕁麻疹のコントロールがしやすくなります。
皮膚科での治療が必要な場合とは
皮膚科で治療が必要となるのはどのようなケースなのかを解説します。
慢性化している場合は早期受診が必須
蕁麻疹が1か月以上続く場合、皮膚科の受診が不可欠です。
慢性蕁麻疹は自己判断で対処が難しく、専門的な診断と治療が必要です。
日本皮膚科学会は、受診により適切な治療が受けられると推奨しています。
早めの受診で、症状の長期化を防げます。
血液検査や原因アレルゲンの特定
血液検査やアレルゲン検査で、蕁麻疹の原因を特定できる場合があります。
IgE抗体検査や甲状腺機能検査などで、アレルギーや内臓疾患の関与を調べます。
たとえば、特定の食物に対するIgE抗体が高い場合、その食物が原因の可能性が高くなります。
正確な診断により、効果的な治療計画が立てられます。
処方される薬の種類と効果(第2世代抗ヒスタミン薬など)
皮膚科では、第2世代抗ヒスタミン薬が処方されることが多いです。
ロラタジンやデスロラタジンなどの薬は、かゆみや発疹を抑え、副作用が少ないとされています。
重症例では短期間のステロイド内服薬が使用されることもあります。
これらの薬で、症状を効果的に管理できる場合があります。
生物学的製剤「オマリズマブ」の使用例
重症の慢性蕁麻疹には、生物学的製剤「オマリズマブ」が有効な場合があります。
オマリズマブはIgE抗体の作用を抑制し、ヒスタミン放出を抑えます。
オマリズマブは既存の治療法では不十分と判断された場合のみに利用され、専門医の管理下で使用される治療法です。
新たな治療法を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。
日本では蕁麻疹(じんましん)でお悩みの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。
例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
・最新の治療をいち早く受けられる
・専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
・治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。
実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
よくある誤解と蕁麻疹との付き合い方
蕁麻疹に関するよくある誤解について解説します。
「蕁麻疹=すぐ治る病気」とは限らない
蕁麻疹は一時的なものと誤解されがちですが、慢性化する場合があります。
急性蕁麻疹は短期間で治まりますが、慢性蕁麻疹は数ヶ月~数年続くことも。
蕁麻疹のタイプを理解し、適切な対処を心がけましょう。
原因がわからないケースが7割以上?
慢性蕁麻疹の原因は、7割以上が特定できないと言われています。
特発性蕁麻疹では、明確な引き金がないまま症状が続くことが多いです。
しかし、原因がわからなくても、症状を抑える方法はあります。
完治を目指すより“コントロール”を重視する考え方
慢性蕁麻疹では、完治より症状のコントロールが現実的な目標です。
薬や生活習慣の改善で、症状を最小限に抑え、QOLを維持することが推奨されます。
コントロールを重視することで、快適な生活が送りやすくなります。
まとめ|蕁麻疹が治らない時に見直すべきポイント
蕁麻疹が治らない場合、自己判断は避け、皮膚科医に相談することが大切です。
専門医は検査や治療を通じて、原因の特定や適切な管理法を提案します。
医師の指導のもと、効果的な治療を進めましょう。
また、生活習慣の改善と心身のケアが、蕁麻疹の管理に欠かせません。
ストレス管理、十分な睡眠、アレルゲンの回避などをバランスよく取り入れることで、症状が軽減する可能性があります。
希望を持って、専門医と協力しながら治療を続けましょう。
参考資料・サイト一覧
1.日本皮膚科学会 https://www.dermatol.or.jp/qa/qa9/q08.html
2.日本皮膚科学会 蕁麻疹診療ガイドライン https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/urticaria_GL2018.pdf
3.厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1h13.pdf
4.日本皮膚科学会 https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/1372913324_1.pdf

記事監修・執筆者情報
川島 眞(かわしま まこと)
皮膚科専門医・医学博士
東京女子医科大学 名誉教授
日本皮膚科学会認定専門医として、アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の診療・研究に長年従事。
本記事では医学的情報の正確性と内容監修を担当。
所属学会:
日本皮膚科学会
日本美容皮膚科学会
日本皮膚アレルギー学会
日本香粧品学会