機能性表示食品の臨床試験|申請届出の流れから費用まで徹底解説

2025年9月18日

「機能性表示食品の届出で、臨床試験は必須?」「費用が数千万円かかると聞いたが、本当に回収できるのか?」「もし不利な結果が出たらどうしよう…」

新商品開発や届出を検討する中で、このような不安や疑問をお持ちの担当者は少なくないでしょう。

この記事では関西福祉科学大学 竹田竜嗣准教授監修のもと、機能性表示食品の申請届出の流れ、臨床試験の全体像から費用、期間、失敗しないためのポイントまで、網羅的に解説します。

この記事を最後まで読めば、自信を持って届出準備を進めるための具体的なアクションプランが見つかるはずです。

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機能性表示食品 申請・届出の全体像と流れ

機能性表示食品の届出は、事業者が自らの責任において製品の安全性と機能性の科学的根拠を届け出る制度です。

国の許可が必要な特定保健用食品(トクホ)とは異なり、個別審査はありませんが、その分、事業者が科学的根拠や安全性に関する資料を適切に準備する責任が求められます(参考:消費者庁 1)。

消費者庁への届出の基本ルール

機能性表示食品として販売するには、製品の販売開始60日前までに、安全性や機能性の根拠に関する情報などを消費者庁に届け出る必要があります(参考:消費者庁 2)。

これは消費者庁が提出された届出情報や表示内容に問題がないかを確認する期間を確保するためです。

安全性評価と健康被害報告体制の整備

機能性表示食品を届け出るには、科学的根拠に裏付けられた安全性評価が必須です。

また、健康被害の未然防止のため、製品が安全な食品であることの確認、想定される健康被害発生時の報告体制の整備も求められます(参考:東京都保健医療局 3)。

科学的根拠は臨床試験と研究レビューどちらを選ぶべきか

機能性の科学的根拠を示す方法には、大きく分けて2つの選択肢があります。

選択肢①:最終製品を用いた臨床試験(RCT)|信頼性は高いが費用と期間がネック

臨床試験(RCT:Randomized Controlled Trial、ランダム化比較試験)とは、製品を摂取するグループと、摂取しない(あるいはプラセボを摂取する)グループに被験者をランダムに分け、製品の有効性を科学的に検証する研究手法です。

メリット:

  • 信頼性が最も高い: オリジナルのデータであり、科学的根拠として非常に強力。
  • 競合との差別化: 独自の研究結果は、マーケティングにおいて強力な武器となる。

デメリット:

  • 高額な費用: 総額で500万円〜数千万円のコストがかかる。
  • 長い期間: 計画から届出まで1年半〜2年以上かかることも珍しくない。

選択肢②:研究レビュー(SR)|費用は抑えられるが実施に条件あり

研究レビュー(SR:Systematic Review、システマティックレビュー)とは、すでに発表されている複数の論文を収集・評価・分析し、機能性の科学的根拠を導き出す方法です。

自社製品の有効性を示す既存の論文が複数ある場合や、機能性関与成分が一般的によく知られている場合など、条件を満たせば研究レビューが選択肢となります。

メリット:

  • コストを抑制: 臨床試験に比べて費用を大幅に抑えられる。
  • 期間の短縮: 臨床試験を実施しない分、開発期間を短縮できる。

デメリット:

  • 実施の条件: 既存研究が少なくても実施可能だが、届出根拠としては査読付き論文に基づくエビデンスが肯定的であることが条件(参考:消費者庁 4)。
  • 独自性に欠ける: 他社も同じ研究レビューを根拠に届出ができるため、差別化が難しい。

【フローチャートで診断】自社製品に最適なのはどっち?

自社製品にとってどちらが最適か、以下のフローチャートで診断してみましょう。

Q1. 製品の機能性関与成分について、質の高い臨床試験論文は世界に複数存在しますか?
はい → Q2へ
いいえ / 不明 → 「臨床試験(RCT)」が推奨されます。先行研究がない場合、SRは実施できません。

Q2. その成分を使った競合製品はすでに市場にありますか?
はい → Q3へ
いいえ → 「研究レビュー(SR)」が有力な選択肢です。コストと時間を抑えて迅速に市場投入を目指せます。

Q3. 競合製品と明確な差別化を図り、マーケティングで優位に立ちたいですか?
はい → 「臨床試験(RCT)」が推奨されます。独自のデータは強力なマーケティング資産になります。
いいえ / コストを最優先したい → 「研究レビュー(SR)」も選択肢です。ただし、価格競争に陥る可能性があります。

機能性表示食品の臨床試験(RCT)|全7ステップの流れと期間

機能性表示食品の臨床試験は、複雑なプロセスをたどります。

ここでは、全体像を7つのステップに分けて解説します。

所要期間はあくまで目安となります。実施する試験により期間は大きく変動する可能性があります。

STEP1:準備段階(研究計画の策定・倫理審査)- 約2〜3ヶ月

試験の目的、方法、被験者数などを記した研究計画書を作成します。

この計画は倫理審査委員会(IRB)に提出され、科学的・倫理的に妥当であるかどうかの審査を受けます。

STEP2:臨床試験協力者募集(リクルート)- 約1〜2ヶ月

研究計画に基づき、基準を満たす協力者を募集します。広告やリクルート会社を通じて行われるのが一般的です。

STEP3:試験実施(製品の摂取・データ測定)- 約3〜6ヶ月

協力者が実際に製品を摂取し、定められた期間でデータを測定します。

※機能性表示食品の臨床試験にかかる期間は内容により変わります。

STEP4:データ解析・統計処理 – 約1ヶ月

収集したデータを統計学的に解析し、製品の機能性効果を検証します。

STEP5:論文作成・投稿 – 約3〜6ヶ月

解析結果を学術論文としてまとめ、査読付きの専門雑誌に投稿します。

STEP6:消費者庁への届出書類作成 – 約1ヶ月

論文や安全性評価のデータをもとに、消費者庁に提出する書類一式を作成します。

STEP7:受理 – 約3ヶ月〜

作成した書類を消費者庁に提出し、受理されると晴れて「機能性表示食品」として販売が可能になります。

臨床試験にかかる費用相場とコスト削減のコツ

臨床試験は高額な投資です。

ここでは、費用の相場とその内訳、そしてコストを賢く抑えるポイントを解説します。

※一般的な費用シミュレーションです。実際の費用は試験により大きく変動します。

臨床試験の費用を左右する3つの要因

臨床試験の費用は、試験内容によって大きく変動します。

要因①:試験デザインと協力者数

協力者数が多いほど、また、二重盲検試験など複雑な試験デザインを用いるほど、費用は高くなります。

要因②:測定項目の多さと特殊性

血液検査や特別な機器を使う測定項目が多いと、費用はかさみます。

要因③:依頼するCRO(試験受託機関)

CRO(Contract Research Organization、臨床試験受託機関)によっても料金体系やサービス内容が異なるため、複数の会社から見積もりを取ることが重要です。

費用内訳シミュレーション
【具体例】費用内訳シミュレーション(試験費用、論文作成、届出サポート)
費用項目 概算費用 詳細
試験費用 300万~1,500万円 協力者募集、試験実施、データ解析など。協力者数や期間により変動。
論文作成・投稿費用 100万~300万円 専門家による論文執筆、投稿料など。
届出サポート費用 100万~300万円 届出書類作成、消費者庁とのやりとりなど。
合計 500万~2,100万円 ※あくまで一般的なシミュレーションです。

コストを賢く抑えるための3つのポイントと注意点

  • 予備試験の実施:本試験に入る前に小規模な予備試験を実施し、有効性があるかを確認することで、無駄な投資を避けられます。
  • 既存論文の活用:もし既存の文献で一部の機能性が証明できているなら、研究レビューを組み合わせるなど、効率的な計画を立てましょう。
  • CROの選定:実績が豊富で、かつ費用対効果の高い提案をしてくれるCROを選ぶことが重要です。
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臨床試験の4大リスクと完全回避策

高額な投資を伴う臨床試験には、当然ながらリスクも存在します。

ここでは代表的な4つのリスクと、それを回避するための具体的な対策を解説します。

リスク①:有効性なし(期待した結果が出ない)

試験を行ったものの、期待した効果が統計的に証明できないリスクです。

  • 対策:予備試験の実施や、適切な試験計画を立てることが不可欠です。

リスク②:安全性への懸念(有害事象の発生)

試験期間中に試験協力者に健康被害(有害事象)が発生するリスクです。

  • 対策:製品の安全性を事前に徹底評価し、倫理審査委員会による厳格な審査を経ることが重要です。

リスク③:届出の差戻し・撤回

届出書類に不備があったり、科学的根拠が不十分と判断されたりすると、消費者庁から届出の「差戻し」や「撤回」を求められるリスクがあります。

  • 対策:専門家やコンサルタントに依頼し、正確な書類作成を心がけるのが最も安全です。

リスク④:研究の信頼性低下

意図しないバイアス(偏り)や、不利な試験結果を公開しないといった不透明な運用により、研究の信頼性が失われるリスクです。

  • 対策:適切な研究デザインを採用し、結果の透明性を確保することが、消費者からの信頼獲得に繋がります。

失敗しないCRO(臨床試験受託機関)の選び方

CROは、臨床試験を成功に導くための重要なパートナーです。

Point1:機能性表示食品の届出実績は豊富か

機能性表示食品の分野に特化したノウハウを持つCROを選びましょう。

Point2:試験計画から届出までワンストップで対応可能か

試験実施だけでなく、届出書類作成まで一貫してサポートしてくれるCROは、手続きの負担を大きく軽減してくれます。

Point3:研究内容に対する質の高い提案力があるか

コストやリスクを抑えるための代替案など、単なる作業代行にとどまらない提案をしてくれるか見極めましょう。

Point4:倫理的・科学的妥当性を担保する体制が整っているか

倫理審査委員会との連携や、研究の信頼性を確保するための体制が整っているか確認しましょう。

Point5:明確な見積もりとスケジュールを提示してくれるか

費用の内訳や、各ステップにかかる期間を具体的に示してくれるCROは信頼性が高いと言えます。

治験ジャパンは臨床試験の実施をトータルサポート

治験ジャパンではこれまでの豊富な実績を活かし、臨床試験の企画から運営・届出サポートまでを一貫して支援しています。

具体的には、以下のようなサポートをご提供します。

  • 研究計画の立案と倫理審査対応:試験デザインの最適化と、必要書類の作成・提出を代行。
  • 協力者募集と管理:ニーズに合わせたリクルート手法を活用し、条件を満たす被験者を効率的に確保。
  • 試験実施とデータ解析:信頼性を担保するプロトコルに基づき、透明性の高いデータ収集・統計解析を実施。
  • 論文作成と届出サポート:査読付き学術誌への投稿支援から、消費者庁届出用書類の作成まで対応。

これにより、企業は試験実施に伴うリスクを最小化しながら、科学的根拠に基づいた確実な届出を実現することができます。

「臨床試験をどのように進めればよいか不安がある」「社内に専門部署がなく進行できない」といった場合でも、治験ジャパンがパートナーとして伴走いたします。

ぜひお気軽にお問い合わせください。

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臨床試験結果を売上に繋げるマーケティング活用術

臨床試験は、単なる届出のための手続きではありません。

その結果は、強力なマーケティング資産となります。

「科学的根拠あり」を効果的に伝える3つの訴求パターン

グラフや数値で視覚的に効果をアピールする

「〇〇%改善」「〇〇倍に増加」といった具体的な数値を、グラフやインフォグラフィックで示すことで、消費者は直感的に効果を理解しやすくなります。

論文掲載や学会発表の実績で権威性を示す

「国際的な学術誌に掲載された」「学会で発表された」と記載することで、製品の信頼性や権威性が高まります。

開発ストーリーで試験のこだわりを語り、共感を呼ぶ(ストーリーテリング)

「効果を証明するために、数年かけて臨床試験を実施しました」といった開発の背景やこだわりを伝えることで、消費者の共感を呼び、ブランドへの愛着を育むことができます。

注意点:有利な結果だけの強調はNG

「有利な結果だけを強調する」という行為は、消費者の不信感につながる可能性があります。

臨床試験の結果を広告に活用する際には客観的な事実に基づき、透明性を確保することが、長期的なブランド信頼性の構築に不可欠です。

機能性表示食品の申請届出・臨床試験に関するよくある質問

Q1. 届出が撤回される主な理由は何ですか?

A. 主な理由は、届出資料の不備、安全性や機能性に関する科学的根拠の不十分さなどです。

Q2. 臨床試験協力者の人数はどのように決めるのですか?

A. 統計学的に意味のある結果を出すために、研究の目的や期待される効果の大きさに応じて計算で決定されます。

Q3. 海外で実施した臨床試験データは使えますか?

A. はい、使えます。ただし、日本国内のルールに準拠した試験デザインや倫理的妥当性が求められます。

Q4. 届出受理まで、最短でどのくらいの期間がかかりますか?

A. 試験期間や論文作成期間を含めると、全体で約1年〜1年半が目安です。

ただし、試験設計・査読状況・照会対応などで大きく変動する可能性があります。

Q5. 結局、どこに相談するのが一番良いですか?

A. 機能性表示食品の臨床試験や届出に精通したCROやコンサルタント会社に相談するのが最も確実です。

まとめ

本記事では機能性表示食品の申請届出や臨床試験について網羅的に解説しました。

最後に重要なポイントを振り返ります。

  • 1:科学的根拠には「臨床試験」と「研究レビュー」があり、自社に最適な手法の選択が成功の鍵です。
  • 2:臨床試験は高コストだが、信頼性の高いエビデンスとなります。全体の流れと期間を正確に把握し、余裕を持った計画が重要です。
  • 3:「費用」と「リスク」は、事前の対策でコントロール可能です。予備試験や適切なCRO選びがその鍵となります。
  • 4:信頼できるCRO選びが成功を左右します。実績や提案力を見極め、良きパートナーを選びましょう。

機能性表示食品の臨床試験は専門性が高く複雑です。

もしお困りごとがありましたら、お気軽に治験ジャパンへお問い合わせください。

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参考資料・サイト一覧
1.消費者庁 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/
2.消費者庁 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/about_foods_with_function_claims/pdf/150810_2.pdf
3.東京都保健医療局 https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/hyouji/shokuhyouhou_eiyou_kinouseihyouji.html
4.消費者庁 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000081333.pdf

記事監修者情報

記事監修者情報

竹田 竜嗣(たけだ りゅうじ)
農学博士
関西福祉科学大学
健康福祉学部 福祉栄養学科 准教授

近畿大学大学院農学研究科博士後期課程修了。食品・化粧品等のヒト臨床試験の受託企業や大学客員講師などを経て、2016年より関西福祉科学大学に着任。

食品が持つ健康機能性について、成分の探索からヒトでの有効性評価まで幅広く研究を行う。機能性表示食品制度にも精通し、講演実績も多数。

本記事では機能性表示食品に関する記述の正確性と内容監修を担当。

所属学会:

  • 日本栄養・食糧学会