「肺気腫とCOPDって同じ病気?」「どうやって見分けるの?」と肺気腫とCOPDの違いがいまいちわからない方は少なくないでしょう。
肺気腫とCOPD(慢性閉塞性肺疾患)は関連が深いものの、異なる特徴を持つ病気です。
この記事では、肺気腫とCOPDの違いをわかりやすく解説。
原因や症状、診断方法、治療法から予防策まで詳しくお伝えします。
正しい知識を身につけて、早期発見・早期治療につなげましょう。
肺気腫とCOPDの違いとは?わかりやすく解説
肺気腫とCOPDの概要をそれぞれ解説します。
肺気腫とは
肺気腫は、肺の構造が破壊される病気で、空気の通り道である肺胞が壊れてしまうのが特徴です。
肺胞が正常に働かなくなると、酸素を十分に取り込み、二酸化炭素を排出する能力が低下します。
一度壊れた肺胞は元に戻りません(参考:日本呼吸器学会※1)。
主に長期間の喫煙が原因で発症し、進行すると呼吸困難を引き起こします。
肺気腫は特定の病態を指す診断名であり、単独で診断されることもあります。
肺気腫は肺の構造変化を伴う病気であり、特に喫煙者に多く見られます。
正確な知識を持つことで、早期に適切な対策を取ることが可能です。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは
COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、肺への空気の流れが慢性的に妨げられる病気です。
気管支や肺胞の炎症、さらには肺気腫のような構造変化が原因で、呼吸がしづらくなります。
COPDは肺気腫や慢性気管支炎など、複数の病態を含む包括的な診断名です。
世界保健機関(WHO)によると、COPDは世界中で約3億人が罹患し、死因の第3位に位置する深刻な疾患です。
COPDが注目される理由は、その進行性の性質にあります。
初期には咳や痰が主な症状ですが、進行すると重度の呼吸困難や低酸素状態を引き起こすことがあります。
長期間喫煙していた人が階段を上るだけで息切れを感じる場合、COPDの可能性が考えられます。
厚生労働省によれば、2020年の時点で日本では約36万人がCOPDの治療を受けていると報告されています。
また、診断や治療を受けていない層を含めると推定530万人の患者がいると考えられています(参考:日本呼吸器学会※2)。
COPDは肺気腫を含む広範な疾患群を指すため、症状や進行度に応じた個別の治療が必要です。
早期発見が予後を大きく左右します。
「肺気腫=COPD」ではない理由
肺気腫とCOPDはしばしば混同されますが、厳密には異なります。
肺気腫はCOPDの一部の病態に含まれることがありますが、すべての肺気腫がCOPDと診断されるわけではありませんし、COPDのすべてが肺気腫を伴うわけでもありません。
COPDは気流閉塞(気道や気管支が狭くなること)を主な特徴とする包括的な診断名であり、肺気腫はその一部に過ぎません。
たとえば、COPDには慢性気管支炎のように気管支の炎症が主な病態の場合もあります。
一方肺気腫は肺胞の破壊が中心で、気流閉塞がなくても診断される場合があります。
実際に肺機能検査で気流閉塞が確認されない肺気腫患者も存在します。
この違いが重要なのは、治療方針や予後が異なるためです。
肺気腫だけの場合、肺胞の破壊に対する対症療法が中心になりますが、COPDでは気管支拡張薬など気流閉塞を改善する治療が追加されます。
したがって、正確な診断が求められます。
肺気腫とCOPDは関連が深いものの、異なる病気であることを理解することが、健康管理の第一歩です。
肺気腫・COPDが起こる主な原因
肺気腫とCOPDの主な原因を解説します。
最大の原因は喫煙
肺気腫とCOPDの最も大きな原因は、長期的な喫煙です。
たばこの煙に含まれる有害物質が肺を慢性的に刺激し、炎症や組織破壊を引き起こします。
特に肺気腫では、肺胞壁が壊れることで呼吸機能が低下。
COPDでは、気管支の狭窄や粘液の過剰分泌も加わります。
喫煙が危険なのは肺へのダメージが蓄積するからです。
日本呼吸器学会によると、喫煙者の約20%がCOPDを発症するリスクがあり、喫煙期間が長いほどそのリスクは高まるとのこと(参考:日本呼吸器学会※3)。
喫煙は肺気腫とCOPDの最大の原因であり、禁煙が最も効果的な予防策であることは明らかです。
喫煙以外のリスク要因とは
喫煙以外にも、肺気腫やCOPDのリスクを高める要因があります。
大気汚染、化学物質への曝露、遺伝的要因などがその代表です。
特に大気汚染物質(PM2.5など)や職場での粉塵・化学物質への長期曝露は、肺に慢性的な炎症を引き起こすとされています。
大気汚染、化学物質への曝露、遺伝的要因がリスクになる理由は、肺の防御機能を超える刺激が継続的に加わるためです。
たとえば、α1-アンチトリプシン欠乏症という遺伝性疾患は、肺気腫のリスクを高めます。
この疾患では肺を保護する酵素が不足し、肺胞が壊れやすくなるとされています。
また、室内でのバイオマス燃料(木材や石炭)の使用も、発展途上国でCOPDの原因として注目されています。
喫煙以外の要因も無視できないため、環境や遺伝的背景に応じた予防が重要です。
肺気腫・COPDの症状と違いを比較
肺気腫とCOPDの症状にどんな違いがあるのかを解説します。
肺気腫の代表的な症状
肺気腫の主な症状は、進行性の息切れです。
特に運動時や階段を上る際に息が切れることが多く、安静時でも呼吸困難を感じる場合があります。
また、慢性的な咳や痰は少ない傾向があります。
これらの症状が特徴的なのは、肺胞の破壊により酸素の取り込みが効率的に行えなくなるためです。
たとえば、患者さんが「以前は平気だった散歩が辛くなった」と訴えるケースは典型的です。
進行すると、体重減少や筋力低下も見られることがあります。
肺気腫の症状はゆっくり進行するため、早期発見が難しいですが、息切れに気づいたら早めに受診することが大切です。
COPDに特徴的な症状
COPDの症状は、慢性的な咳、痰、息切れが中心です。
肺気腫と異なり、咳と痰が目立つ場合が多く、特に朝に痰が絡む「喫煙者の咳」が特徴的です。
進行すると、風邪をきっかけに急激に症状が悪化する「増悪」が起こることがあります。
これらの症状が問題なのは、気管支の炎症や狭窄が関与するためです。
また、低酸素状態による疲労感や浮腫も見られることがあります。
COPDの症状は多岐にわたり、進行を抑えるためには早期の診断と治療が不可欠です。
症状から見分けるポイント
肺気腫とCOPDの症状には重なる部分がありますが、咳と痰の有無が大きな違いです。
肺気腫では息切れが主で咳や痰は少ない一方、COPDでは慢性気管支炎の影響で咳と痰が顕著です。
また、COPDの方が増悪のリスクが高い点も異なります。
この違いが重要なのは、治療方針に影響を与えるためです。
たとえば、咳と痰が多いCOPD患者には去痰薬や吸入ステロイドが有効な場合がありますが、肺気腫では気管支拡張薬が中心になることが多いです。
実際に症状の詳細を医師に伝えることで、より正確な診断が可能です。
症状の違いを理解することで、適切な治療につなげることができます。
肺気腫・COPDはどのように診断される?
肺気腫とCOPDはどのような方法で診断されるのかを解説します。
診断に用いる検査方法(肺機能検査・画像検査など)
肺気腫とCOPDの診断には、肺機能検査と画像検査が主に用いられます。
肺機能検査(スパイロメトリー)では、吐き出す空気の量や速度を測定し、気流閉塞の程度を評価。
胸部CTスキャンは、肺胞の破壊や気管支の状態を確認するのに役立ちます。
これらの検査が重要なのは、症状だけでは診断が難しいためです。
たとえば、肺機能検査で「1秒率(FEV1/FVC)」が70%未満の場合、COPDが疑われます(参考:独立行政法人環境再生保全機構※4)。
また、胸部CTで肺胞の低吸収領域が確認されると、肺気腫の可能性が高まります。
正確な診断には、肺機能検査と画像検査が欠かせません。
診断結果でわかる病状の違い
肺気腫とCOPDの診断結果では、気流閉塞の有無や肺の構造変化の程度が異なります。
肺気腫ではCTで肺胞の破壊が明らかになる一方、COPDでは肺機能検査で気流閉塞が確認されることが多いです。
この違いが重要なのは、治療や予後の見通しが変わるためです。
たとえば、肺気腫が主であれば、酸素療法やリハビリが中心になりますが、COPDでは吸入薬による気道管理が優先されます。
また、COPDの重症度はFEV1の値で分類され、治療方針の決定に役立ちます。
診断結果を正しく理解することで、適切な治療計画を立てられます。
肺気腫・COPDの治療法や管理方法の違い
肺気腫とCOPDの治療法の違いを解説します。
肺気腫の治療法
肺気腫の治療では、症状の緩和と進行の抑制が目標です。
気管支拡張薬(吸入薬)が主に使われ、呼吸を楽にする効果があります。
また、呼吸リハビリテーションは、筋力や呼吸機能を維持するために有効だとされています。
重症例では、在宅酸素療法が導入されることもあります。
肺気腫の治療は、症状を抑え生活の質を保つことが重要です。
COPDの治療法(吸入薬・在宅酸素療法など)
COPDの治療では、吸入薬(気管支拡張薬やステロイド)が中心です。
増悪の予防には、長時間作用型の吸入薬が効果的。
また、重症例では在宅酸素療法や肺手術(肺容量減少術)が検討されることもあります。
これらの治療が重要なのは、COPDの進行を遅らせ、増悪を防ぐためです。
患者教育も重要で、自己管理が予後を改善します。
COPDの治療は、個々の病状に応じた包括的なアプローチが求められます。
共通する治療と異なる治療のポイント
肺気腫とCOPDの治療には、気管支拡張薬や呼吸リハビリなど共通する部分が多いです。
ただし、COPDでは増悪予防のための吸入ステロイドや抗菌薬が追加されることがあり、肺気腫ではこれらが不要な場合も。
この違いが重要なのは、過剰な治療や不足を避けるためです。
医師と相談しながら最適な治療を選ぶことが大切です。
共通点と違いを理解することで、効果的な治療を受けられます。
肺気腫・COPDを予防するための生活習慣
肺気腫とCOPDを予防するため、気を付けておきたい生活習慣を紹介します。
禁煙が最も重要な予防策
肺気腫とCOPDの予防で最も効果的なのは禁煙です。
たばこをやめることで、肺へのダメージを最小限に抑え、病気の進行を遅らせることができるとされています。
禁煙が有効なのは、喫煙が主な原因であるためです。
たとえば、禁煙後5年でCOPDの進行速度が非喫煙者と同等になるという研究があります(参考:厚生労働省※5)。
禁煙外来やニコチン代替療法を活用することで、成功率が上がります。
禁煙は肺気腫とCOPDの予防の第一歩です。
日常生活で気をけるべきポイント
禁煙以外にも、大気汚染や感染症への対策が重要です。
マスクの着用や換気を徹底し、インフルエンザワクチンの接種も推奨されます。
また、適度な運動は肺機能を維持するのに役立ちます。
これらが有効なのは、肺への負担を減らし、免疫力を保つためです。
健康的な食事を心がけることも大切です。
日常生活の工夫が、肺気腫とCOPDの予防につながります。
定期的な検診のすすめ
定期的な検診は、肺気腫やCOPDの早期発見に欠かせません。
特に40歳以上の喫煙者は、年に一度の肺機能検査を受けることが推奨されます。
検診が重要なのは、症状が出る前に異常を捉えられるためです。
たとえば、肺機能検査で早期に気流閉塞が見つかれば、進行を抑える治療が可能だとされています。
健康診断で胸部X線やCTを受けることも有効です。
定期検診で、肺の健康を守りましょう。
よくある質問(Q&A)
肺気腫とCOPDにまつわるよくある質問を紹介します。
肺気腫は治る病気?
肺気腫は完治は難しい病気です。
ただし、適切な治療で症状を抑え、進行を遅らせることができます。
この点が重要なのは、早期介入が生活の質を大きく左右するからです。
医師の指導のもと、適切な管理を続けることが大切です。
肺気腫は治せないものの、治療で快適な生活が目指せます。
COPDは進行性の病気?
COPDは基本的に進行性の病気ですが、治療や生活習慣の改善で進行を遅らせることが可能です。
特に禁煙と吸入薬の使用が効果的です。
肺気腫とCOPDは同時に発症する?
肺気腫とCOPDは同時に発症することがあります。
肺気腫はCOPDの一部の病態として含まれるため、COPDと診断された患者の多くが肺気腫を合併しています。
まとめ:肺気腫とCOPDの違いを正しく理解し、早期発見・治療につなげましょう
肺気腫とCOPDは、関連が深いものの異なる病気です。
肺気腫は肺胞の破壊が特徴で、COPDは気流閉塞を伴う包括的な診断名。
原因は主に喫煙ですが、症状や治療法には違いがあります。
早期発見のためには、定期検診と禁煙が重要。
正しい知識を身につけ、肺の健康を守りましょう。
参考資料・サイト
1.日本呼吸器学会 https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/b/b-01.html
2.日本呼吸器学会 https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/b/b-01.html
3.日本呼吸器学会 https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/b/b-01.html
4.独立行政法人環境再生保全機構 https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/47/feature/feature06.html#:~:text=COPD%E3%81%AE%E8%A8%BA%E6%96%AD%E5%9F%BA%E6%BA%96%E3%81%AF,%E3%82%92%E8%A1%8C%E3%81%86%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
5.厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000ts32-att/2r9852000000tsgf.pdf