シミは多くの人が悩む肌トラブルですが、正しい知識とケアで改善や予防が可能です。
紫外線や加齢、ホルモンバランスなど、シミの原因はさまざま。
種類によって適した治療法やケア方法が異なるため、自己流のケアで悪化させる前に、原因と対策をしっかり理解することが大切です。
この記事では皮膚科専門医 川島眞医師の監修のもと、シミの原因から自宅でのケア、医療機関での治療法まで詳しく解説します。
シミを消す方法を学び、透明感のある肌を目指しましょう。
シミはなぜできる?原因とメカニズムを解説
シミができる原因やメカニズムを解説します。
紫外線によるメラニン生成の増加
シミの主な原因の一つは紫外線です。
紫外線は肌のメラニン生成を過剰に促し、シミを形成します。
肌は紫外線を受けると、メラノサイトという細胞がメラニン色素を生成して肌を守ろうとします。
しかし、過剰なメラニンが蓄積すると、シミとして表面化してしまいます。

特に紫外線のなかのUVBが主となり、さらにUVAもメラニン生成を加速させます。
夏に長時間日焼けした後、頬や額にシミが目立つようになった経験がある人も多いはず。
紫外線対策を怠るとシミが濃くなるため、日焼け止めや帽子で日常的に肌を守ることが重要です。
加齢・ホルモンバランスの変化
加齢やホルモンバランスの変化もシミの大きな要因です。
年齢を重ねると、肌のターンオーバー(肌の生まれ変わり)が遅くなり、メラニンが排出されにくくなります。
また、女性ホルモン(エストロゲン)の変動がメラニン生成を促進する場合もあるとされます。
特に妊娠や更年期ではホルモンバランスが乱れ、シミができやすくなります。
例えば、40代以降の女性が「最近シミが増えた」と感じるのは、紫外線障害の蓄積、ターンオーバーの低下とホルモンの影響が重なるためです。
加齢によるシミを防ぐには、ホルモンバランスを整える生活習慣と適切なスキンケアが欠かせません。
炎症や摩擦による色素沈着
炎症や摩擦もシミの原因となり、色素沈着(しきそちんちゃく)を引き起こします。
ニキビや傷、過度な摩擦が肌に炎症を起こすと、メラノサイトが活性化し、メラニンが過剰に生成されます。

特にゴシゴシ洗顔や不適切なスキンケアは炎症を悪化させる要因になりやすいです。
例えば、ニキビを潰した後に茶色い跡が残るのは、炎症後色素沈着の一例。
摩擦を避け、肌に優しいケアを心がけることで、炎症によるシミを予防できます。
生活習慣やストレスの影響
生活習慣やストレスもシミの形成に影響を与えます。
睡眠不足や偏った食事、ストレスは肌のターンオーバーを乱し、メラニンの排出を妨げます。
また、ストレスはホルモンバランスを崩し、メラニン生成を促進する可能性もあるのです。

夜更かしや過労が続くと、肌がくすみ、シミが目立ちやすくなることがあります。
規則正しい生活とストレス管理が、シミの予防に有効です。
消し方が異なる!シミの種類を知って対策しよう
シミの種類とその原因について解説します。
老人性色素斑(加齢によるシミ)
老人性色素斑(ろうじんせいしきそはん)は加齢によるシミの代表格で、適切な治療で改善が期待できます。
主に紫外線や加齢が原因で、頬や手の甲に茶色い斑点として現れます。
ターンオーバーの遅延でメラニンが蓄積し、濃く目立つ特徴があります。
レーザー治療(Qスイッチルビー、ピコ秒など)が有効で、1~3回の施術で薄くなるとされています(参考:日本皮膚科学会1)。
老人性色素斑には、医療機関でのレーザー治療や美白化粧品を組み合わせたケアが効果的です。
肝斑(ホルモンバランス由来の薄いシミ)
肝斑(かんぱん)はホルモンバランスの乱れが原因で、治療には慎重なアプローチが必要です。
頬や額に左右対称に広がる薄い茶色のシミで、妊娠やピルの使用、更年期に多く見られます。
紫外線や摩擦で悪化する傾向があります。
30代の女性が「頬にぼんやりしたシミができた」と感じる場合、肝斑の可能性が高いです。
トラネキサム酸の内服や低刺激の美白剤で改善が見られると報告されています。
レーザートーニングという治療法も効果があると言われています。
肝斑は自己判断で強い治療を行うと悪化するため、専門医に相談することが重要です。
そばかす(遺伝的要因が強い)
そばかすは遺伝的要因が強く、予防と改善には紫外線対策が鍵です。
鼻や頬に小さな茶色の斑点が散らばる形で、幼少期から見られることが多い。
紫外線で濃くなるため、夏場に目立ちやすい特徴があります。
例えば、家族にそばかすがある場合、遺伝的にできやすい体質と考えられます。
そばかすを目立たせないためには、日焼け止めと美白化粧品を継続的に使用することが有効です。
自由診療になりますが、レーザー治療や光線治療が効果的ですので、美容皮膚科に相談してください。
炎症後色素沈着(ニキビや傷跡のあと)
炎症後色素沈着は、適切なケアで自然に薄くなる可能性があります。
ニキビや傷、摩擦による炎症が原因で、茶色や赤っぽい跡が残ります。
ターンオーバーが正常なら数ヶ月で薄くなることもあります。
例えば、ニキビ跡がシミのように残るのはこのタイプです。
ビタミンC誘導体やハイドロキノンの使用で改善が期待できるとされています。
炎症後色素沈着には、刺激の少ないスキンケアとターンオーバーを促すケアが効果的です。
医療機関で行う本格的なシミ治療法
医療機関で行うシミの治療法について解説します。
レーザー治療の効果と副作用
レーザー治療はシミの改善に高い効果を発揮しますが、副作用にも注意が必要です。
Qスイッチレーザーやピコ秒レーザーを使い、メラニンを破壊してシミを薄くします。
老人性色素斑やそばかすに特に有効です。
例えば、1回の施術でシミが取れた、うすくなったという例もあります。
施術後の赤みやかさぶたは1~2週間で通常回復します。
ただし、肝斑には不向きで、悪化のリスクもあるので注意が必要です。
レーザー治療は専門医の診断のもと、シミの種類に合わせた施術を選ぶことが成功の鍵です。
光治療(IPL)の特徴と適応
光治療(IPL)は、幅広いシミに対応する穏やかな治療法です。
広範囲の光を照射し、メラニンを徐々に分解します。
そばかすや浅いシミに適しており、肌のトーンアップも期待できます。
顔全体のくすみが気になる人に選ばれることが多いです。
5回程度の施術でシミが目立たなくなった例が多数ですが、濃いシミには効果が限定的です。
IPLはダウンタイムが少なく、美容医療初心者にもおすすめの治療法です。
ハイドロキノン・トレチノイン外用療法
ハイドロキノンとトレチノインは、シミのホームケアと医療の橋渡しとなる治療です。
ハイドロキノンはメラニン生成を抑え、トレチノインはターンオーバーを促進します。
併用でシミを薄くする効果が期待できます。
ただし、トレチノインは刺激が強く、赤みや皮むけが起こる場合もあるので注意が必要です。
専門医の指導のもと、肌質に合わせた使用が重要です。
内服薬(ビタミンC、トラネキサム酸など)
内服薬はシミの予防と改善をサポートします。
ビタミンCは抗酸化作用でメラニン生成を抑え、トラネキサム酸は肝斑に有効です。
肌質改善にも寄与します。
ただし、効果には個人差があり、また長期服用が必要です。
内服薬は医師の処方で、スキンケアと併用すると効果的です。
自宅でできるシミケア|毎日の習慣がカギ
シミのセルフケア方法について解説します。
美白化粧品の選び方と成分(アルブチン、ナイアシンアミドなど)
美白化粧品はシミ予防と改善に有効ですが、成分選びが重要です。
アルブチンやナイアシンアミド、ビタミンC誘導体は、メラニン生成を抑え、ターンオーバーをサポートします。
医薬部外品の表示がある製品を選ぶと安心です。
自分の肌質に合った製品を選び、毎日続けることが効果の鍵です。
紫外線対策の徹底|日焼け止めの使い方
紫外線対策はシミ予防の基本であり、徹底が不可欠です。
SPF30以上、PA+++以上の日焼け止めを毎日塗り、2~3時間ごとに塗り直すのが理想とされます。
多くの方では、必要量の半量程度しか塗られていません。厚塗り、2度塗りしてちょうどよいくらいです。
帽子やサングラスも活用しましょう。

紫外線をブロックすることで、シミの予防と、悪化を防げます。
正しい洗顔・保湿のポイント
正しい洗顔と保湿は、シミ予防の土台を作ります。
泡で優しく洗い、摩擦を避ける。
保湿はセラミドやヒアルロン酸配合の製品で、肌のバリア機能を強化。
適切な保湿がターンオーバーを整えるとされています。
肌に優しいケアを続けることで、シミのできにくい肌を目指せます。
食事と睡眠|肌のターンオーバーを整える
食事と睡眠は、シミ予防の内側からのアプローチです。

ビタミンCやEを多く含む野菜・果物、良質なタンパク質を摂取しましょう。
睡眠は6~8時間を確保し、肌の修復を促します。
栄養バランスも肌のターンオーバーを整えるとされています。
健康的な生活習慣が、シミの予防と改善をサポートします。
新たな治療法を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。
日本ではシミでお悩みの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。
例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
・最新の治療をいち早く受けられる
・専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
・治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。
実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
シミを悪化させないためのNG行動
シミを悪化させる可能性のあるNG行動を解説します。
強くこするクレンジングや洗顔
強いクレンジングや洗顔はシミを悪化させるリスクがあります。
摩擦は炎症を起こし、色素沈着を促進します。
ゴシゴシ洗いはメラニン生成を活性化させます。
優しい洗顔を心がけ、摩擦を最小限に抑えることが大切です。
紫外線を浴び続ける生活習慣
紫外線を浴び続けるのは、シミ悪化の最大の要因です。
日焼け止めを塗らない、帽子を使わない生活は、メラニン生成を加速させます。
特に夏場の長時間外出は要注意です。
日常的な紫外線対策を徹底することで、シミの悪化を防げます。
化粧品を頻繁に変える・多用する
化粧品の頻繁な変更や多用は、シミを悪化させる可能性があります。
肌に合わない成分や過剰な刺激が炎症を引き起こし、色素沈着を招くこともあります。
シンプルなスキンケアを継続し、肌に負担をかけないことが重要です。
まとめ|シミを消すには「正しい知識と継続ケア」が不可欠
シミの種類を理解し、適切な対策を選ぶことが成功の第一歩です。
老人性色素斑、肝斑、そばかす、炎症後色素沈着はそれぞれ原因と治療法が異なるため、自己判断は危険です。
自己流のケアでシミを悪化させないためには、専門医の診断が重要です。
特に肝斑や濃いシミは、誤った治療で悪化する可能性が。
シミの予防と改善は、毎日の小さな習慣の積み重ねが鍵です。
日焼け止めや帽子・日傘による紫外線対策、美白化粧品の継続使用、バランスの良い生活習慣が、シミのできにくい肌を作ります。
今日から正しいケアを始め、透明感のある肌を目指しましょう。
参考資料・サイト一覧
1.日本皮膚科学会 https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/biyosinryo.pdf

記事監修・執筆者情報
川島 眞(かわしま まこと)
皮膚科専門医・医学博士
東京女子医科大学 名誉教授
日本皮膚科学会認定専門医として、アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の診療・研究に長年従事。
本記事では医学的情報の正確性と内容監修を担当。
所属学会:
日本皮膚科学会
日本美容皮膚科学会
日本皮膚アレルギー学会
日本香粧品学会