「出かけた後に鍵をかけたか何度も不安になる」

「手が汚れている気がして洗うのが止められない」

 こうした行動に対して、「自分は神経質すぎるのではないか」「もしかして病気ではないか」と悩んでいる方は少なくありません。

結論からお伝えすると、強迫性障害(強迫症)になりやすい人には、共通する性格傾向が存在することが知られています。

しかし、それは決して「あなたが弱いから」なるものではありません(参考:厚生労働省 3)。

この記事では、医学的な観点から「強迫性障害になりやすい人の特徴」を解説し、性格以外の要因や、今日から心がけたい対策について詳しくお伝えします。

正しい知識を持つことで、漠然とした不安を解消していきましょう。

※この記事は疾患啓発を目的としています。

強迫性障害でお困りの方へ

治験という方法で負担軽減費を受け取りながら、より良い治療の選択肢を見つける方が増えています。

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強迫性障害になりやすい人の「性格」3つの共通点

強迫性障害は、かつては性格的な要因が強いと考えられていました。

現在では脳機能の関与が明らかになっていますが、やはり「発症しやすい性格傾向」というのは存在します(参考:兵庫医科大学病院 5)。

代表的な3つの特徴を見ていきましょう。

1. 完璧主義で「白か黒か」を求めがち

強迫性障害になりやすい人の特徴の一つに、完璧主義が挙げられます。

「100点以外は0点と同じ」というような、物事を極端に捉える思考パターンを持っていることが多くあります。

  • 少しのミスも許せない
  • 手順が決まっていないと落ち着かない
  • 曖昧な状態に耐えられない

このような几帳面さやこだわりの強さは、仕事や学業では長所となります。

ですが、過度になると「鍵が閉まっているか『絶対に』確認しないと気が済まない」といった強迫観念につながりやすくなります(参考:厚生労働省 3)。

2. 責任感が強く、ルールを重んじる

意外に思われるかもしれませんが、非常に真面目で責任感が強い人ほど、この病気に悩みやすい傾向があります。

「自分が確認を怠ったせいで火事になったらどうしよう」「誰かに迷惑をかけてしまうかもしれない」という、過剰なまでの責任感(加害恐怖)が根底にあることが多いのです(参考:九州大学 6)。

ルールや道徳を重んじるがゆえに、そこから外れることへの恐怖心が人一倍強くなってしまいます。

3. 心配性で「もしも」を考えすぎる

予期不安が強いのも特徴です。

「もしも○○だったらどうしよう」というネガティブなシミュレーションを繰り返してしまう傾向があります。

慎重であることは本来長所ですが、強迫性障害の場合はその慎重さが、手洗いや確認といった「強迫行為」へと結びついて、日常生活のブレーキになってしまいます(参考:NCNP 2)。

性格だけじゃない?発症に関わる「環境」と「脳」の要因

ここで大切なのは、「性格が原因なら、性格を変えないと治らないのか?」という疑問です。

答えはNoです。

強迫性障害は性格だけで決まるものではなく、「脳の機能」や「環境(ストレス)」が複雑に絡み合って発症します。

脳内の神経伝達物質(セロトニン)の乱れ

近年の研究では、強迫性障害の背景には脳の機能障害があることが分かっています。

特に、脳内で情報の伝達を調整する「セロトニン」という神経伝達物質の機能異常や、脳内の特定の回路(大脳基底核など)の不具合が関係していると考えられています(参考:兵庫医科大学病院 5)。

つまり、本人の心がけの問題ではなく、脳の機能的なエラーによって「やめたくてもやめられない」状態になっているのです。

強いストレスやライフイベントの変化

発症の「きっかけ」として多いのが、強いストレスや環境の変化です。

  • 就職、転職、昇進
  • 結婚、妊娠、出産
  • 身近な人の死、病気

一見おめでたいこと(結婚や昇進)であっても、責任の重圧や生活リズムの変化は脳にとってストレスとなります。

もともと持っていた「こだわり」や「心配性」の素質が、強いストレスをきっかけに、病的なレベル(強迫症状)へと変化してしまうことがあるのです(参考:NCNP 2)。

【Q&A】母親や育て方が原因って本当?

インターネット上でよく検索される疑問に、「強迫性障害は母親(親)の育て方が原因ではないか?」というものがあります。

特に、厳格なしつけを受けた場合に発症しやすいのではないかと悩む親御さんや当事者の方がいらっしゃいます。

医学的な見解としては、性格、生育歴、ストレス、感染症など多様な要因が関係していると考えられており、「親の育て方だけで決まるものではない」とされています(参考:NCNP 2)。

「親の育て方が悪かった」「愛情不足だった」と過去を責める必要はありません。

現在は、原因探しよりも、適切な治療(薬物療法や認知行動療法)で症状を改善することに焦点が当てられています(参考:日本精神神経学会 7)。

「きれい好き」と「強迫性障害」の境界線

「きれい好き」や「慎重な性格」と、「強迫性障害」はどこが違うのでしょうか。

その境界線は、「日常生活に支障が出ているか」という点にあります(参考:厚生労働省 3)。

生活に支障が出ているかどうかが鍵

以下のような状態であれば、それは性格の範囲を超えて治療が必要な段階かもしれません。

  • 時間の浪費:
    • 手洗いや確認に時間をとられ、約束に遅れるなど生活が回らなくなる。
  • 強い苦痛:
    • その行為をすることに疲れ果てており、本心では「やめたい」と思っている(自我違和感)。
  • 巻き込み:
    • 家族にも同じ手洗いや確認を強要し、人間関係が悪化している。

本人が「好きでやっている(合理的だと感じている)」なら性格の範疇です。

ですが、本人が「無意味・不合理だと分かっているのにやめられない」場合は、強迫性障害の可能性が高まります(参考:兵庫医科大学病院 5)。

簡単セルフチェックリスト

以下の項目に多く当てはまり、生活に支障がある場合は、専門機関への相談を検討してください(参考:NCNP 2, 九州大学 6)。

  •  外出時、鍵やガスの確認を何度も繰り返し、家に戻ることがある
  •  公衆トイレやドアノブに触るのが怖く、触った後に執拗に手を洗う(不潔恐怖・洗浄強迫)
  •  自分の決めた手順や回数通りに行動しないと、悪いことが起きる気がする
  •  誰かを傷つけてしまったのではないかと、過剰に不安になる(加害恐怖)
  •  不合理だとわかっていても、特定の数字や手順にこだわってしまう
  •  必要な物が捨てられず、生活空間が圧迫されている(保存に関する強迫観念 ※ためこみ症と関連する場合もあります)

強迫性障害になりやすい人が今日からできる対策

もし「自分はなりやすいタイプだ」と感じたり、症状が出始めていると感じたりした場合、どのような対策ができるでしょうか。

「ま、いいか」を口癖にする(認知の修正)

完璧主義の人は、自分に厳しすぎる傾向があります。

意識的に「60点でも合格」「ま、いいか」と口に出して、完璧でない状態を許容する練習をしましょう。

「絶対に失敗してはいけない」という思考を、「失敗してもなんとかなる」と緩めることが、心の余裕につながります。

不安を打ち消す行動をあえて遅らせる

強迫性障害の治療法の一つに「曝露反応妨害法(ERP)」というものがあります。

これは、不安を感じたときに、すぐに手洗いや確認(強迫行為)をするのではなく、あえてその不安な状態のまま過ごし、「強迫行為をしなくても何も起きない(不安は時間とともに下がる)」ことを脳に学習させる方法です(参考:厚生労働省 4)。 

まずは「手洗いをすぐせずに数分待つ」「確認を1回減らす」といった、小さな我慢から始めてみるのも一つの手です。

※症状が重い場合は、医師の指導の下で行ってください。

専門機関(心療内科・精神科)への相談

強迫性障害は、根性や性格の矯正だけで治そうとすると、かえって悪化することがあります。 

脳内のセロトニンを調整するお薬(SSRIなど)を使ったり、専門的なカウンセリング(認知行動療法)を受けたりすることで、症状は改善可能です(参考:日本不安症学会 1)。

「性格の問題だから」と一人で抱え込まず、生活がつらいと感じたら早めに心療内科や精神科を受診してください。

治験を試すのも一つの方法

病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。日本では強迫性障害の方に向け治験が行われています。

治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。

治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。


ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。

まとめ:強迫性障害は「真面目さ」の裏返し。一人で抱え込まず相談を

強迫性障害になりやすい人は、裏を返せば「真面目で、責任感が強く、慎重な人」でもあります。これらは社会生活において素晴らしい長所です。

ただ、ストレスや脳のバランスによって、その長所が少し過剰に働きすぎてしまっているだけなのです。

「自分が弱いからだ」と自分を責めるのはやめましょう。

正しい知識を持ち、医療の力も借りながら、その「こだわり」と上手く付き合えるようになれば、生活は必ず楽になります。

参考資料・文献一覧

  1. 一般社団法人日本不安症学会「強迫症の診療ガイドライン」 https://jpsad.jp/files/OCD_guideline.pdf
  2. 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)病院「強迫性障害」 https://hsp.ncnp.go.jp/clinical/disease.php?@uid=gmgEHHpsBP8Z6wZk
  3. 厚生労働省 こころの耳「用語解説|強迫性障害」 https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1542/
  4. 厚生労働省「強迫性障害(強迫症)の認知行動療法マニュアル(治療者用)」 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000113840.pdf
  5. 兵庫医科大学病院 みんなの医療ガイド「強迫症(強迫性障害)」 https://www.hosp.hyo-med.ac.jp/disease_guide/detail/23
  6. 九州大学大学院医学研究院精神病態医学 行動療法研究室「強迫症(強迫性障害)とは」 https://behavioral-therapy.kyushu-u.ac.jp/explain/ocd.php
  7. 公益社団法人日本精神神経学会「松永寿人先生に『強迫性障害』を訊く」 https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=16