夜になると蕁麻疹(じんましん)が現れ、かゆみや不快感に悩まされている方は少なくありません。
この記事では皮膚科専門医 川島眞医師の監修のもと、夜になると蕁麻疹が出る原因やその仕組み、効果的なセルフケア方法、医療機関での治療法、さらには再発を防ぐ予防策まで詳しく解説します。
正確な情報をもとに、夜のかゆみを軽減し、快適な生活を取り戻すための具体的な方法をお伝えします。
夜になると蕁麻疹が出るのはなぜ?
夜は体温や血流の変化で蕁麻疹が現れやすくなります。
また、コリン性蕁麻疹や慢性蕁麻疹などの可能性も考えられます。
蕁麻疹の基本的な仕組み
蕁麻疹とは皮膚に赤い発疹やかゆみが現れる症状です。
これは皮膚の肥満細胞(ひまんさいぼう)からヒスタミンと呼ばれる化学物質が放出されることで起こります。
ヒスタミンは血管を拡張させ、皮膚に水分がたまることで膨疹(皮膚の一部が赤く盛り上がった状態)やかゆみを引き起こします(参考:日本皮膚科学会 1)。
蕁麻疹はアレルギー反応や物理的な刺激、ストレスなどさまざまな要因で発症しますが、夜に悪化する場合には特有の理由があると考えられます。
夜に蕁麻疹が出やすい理由
夜に蕁麻疹が現れやすい背景には、体温や血流の変化が関与しています。
夜間は体温が上昇しやすく、特に就寝前や入浴後の体温変化が皮膚の刺激となり、肥満細胞からのヒスタミンの分泌を促すことがあります。
また、夜になると副交感神経が優位になり、血流が増加することで肥満細胞が皮膚に運ばれやすくなることも一因です。
これによりかゆみや発疹が夜に顕著に現れることがあります。
コリン性蕁麻疹や慢性蕁麻疹の関与
特定の種類の蕁麻疹が夜に悪化する可能性もあります。
コリン性蕁麻疹は発汗や体温上昇などが引き金となり、小さな発疹が特徴です。
このタイプは夜の入浴や寝具による体温上昇で誘発されやすくなります(参考:日本皮膚科学会 2)。
一方慢性蕁麻疹は6週間以上続く蕁麻疹で、原因が特定しにくい場合も多く、夜間にストレスや疲労が蓄積することで症状が悪化することがあります(参考:日本アレルギー学会 3)。
夜に蕁麻疹が悪化する原因
夜に蕁麻疹が悪化する原因は主に、肌への刺激、ストレス、疲労などが挙げられます。
入浴や発汗による刺激
夜の入浴はリラックス効果がありますが、熱いお湯や長時間の入浴は皮膚を刺激し、蕁麻疹を悪化させる可能性があります。
高温のお湯は皮膚のバリア機能を弱め、発汗によってヒスタミンの分泌が促されるため、かゆみが強まることがあります。
特にコリン性蕁麻疹の場合、発汗が直接的な引き金となることが多いです(参考:日本皮膚科学会 4)。
ストレス・疲労・自律神経の乱れ
日中のストレスや疲労が夜に蕁麻疹を悪化させる要因となることがあります。
ストレスは自律神経のバランスを崩し、肥満細胞からのヒスタミンの放出を促進します。
特に夜は副交感神経が優位になる時間帯で、ストレスによる神経の乱れが顕著に現れやすいです。
例えば、仕事のプレッシャーや睡眠不足が積み重なると、夜間に蕁麻疹が誘発される場合もあります。
食後や飲酒によるヒスタミン反応
夕食後の飲酒や特定の食品はヒスタミンの分泌を増やし、蕁麻疹を悪化させることがあります。
アルコールやヒスタミンを多く含む食品(例:エビ、チーズ、発酵食品)は、体内でヒスタミン反応を引き起こし、夜間に症状を増悪させる可能性があります。
また、食後のかゆみや発疹は、アレルギー反応の一種として現れることもあります。
寝具・衣類・温湿度の影響
寝具やパジャマの素材、寝室の温湿度が蕁麻疹に影響を与えることもあります。
化学繊維やウール製の寝具は皮膚を刺激しやすく、かゆみを増す原因となります。
また、寝室が高温多湿だと発汗が促され、蕁麻疹が悪化することがあります。
通気性の悪い寝具や衣類も同様に症状を悪化させる要因です。
夜のかゆみを軽減するセルフケア
蕁麻疹によるかゆみは、生活環境や生活習慣の見直しで軽減できる可能性があります。
>>蕁麻疹(じんましん)を掻くと広がるのはなぜ?原因と対策を解説
冷やす・保湿するなどの応急処置
蕁麻疹のかゆみが強い場合、患部を冷やすことが効果的です。
冷たいタオルや保冷剤を薄い布で包んで患部に当てることで、ヒスタミンの放出を抑え、かゆみを軽減できます。
ただし、冷やす際は凍傷を避けるため、直接氷を当てないように注意しましょう。
また、乾燥した皮膚はかゆみを増すため、刺激の少ない保湿剤(例:セラミド配合のクリーム)を使用することが推奨されます。
入浴の温度・時間を調整する方法
入浴時の温度は38~40℃のぬるま湯に設定し、10~15分程度で済ませるのが理想です。
高温のお湯や長時間の入浴は皮膚を刺激し、蕁麻疹を悪化させる可能性があります。
また、石鹸は低刺激性のものを選び、ゴシゴシ洗いは避けましょう。
入浴後はすぐに保湿剤を塗ることで、皮膚のバリア機能を保ちます。
衣服や寝具の選び方
通気性の良いコットンやシルク素材の寝具・パジャマを選ぶことで、皮膚への刺激を減らせます。
化学繊維やウールは避け、洗濯の際は無香料の洗剤を使用しましょう。
また、寝室の温度は20~22℃、湿度は50~60%に保つと、発汗や乾燥によるかゆみが抑えられる場合があります。
かゆみを和らげる生活習慣の工夫
ストレス管理や十分な睡眠は、蕁麻疹の症状軽減に役立ちます。
ヨガや瞑想を取り入れることで自律神経を整え、ヒスタミンの過剰な分泌を抑えることが期待できます。
また、規則正しい生活リズムを保ち、疲労を溜めないことも重要です。
薬や医療機関での治療法
蕁麻疹の治療には抗ヒスタミン薬が一般的ですが、症状によっては免疫抑制剤などが処方されることもあります。
抗ヒスタミン薬の使用と効果
抗ヒスタミン薬は、蕁麻疹の症状を抑える一般的な治療法です。
ヒスタミンの働きをブロックすることで、かゆみや発疹を軽減します。
市販の抗ヒスタミン薬(例:セチリジン、ロラタジン)は軽度の症状に有効ですが、眠気を引き起こすタイプもあるため注意しましょう。
皮膚科では第2世代抗ヒスタミン薬が処方されることが多いです。
ロラタジンやデスロラタジンなどの薬はかゆみや発疹を抑え、副作用が少ないとされています。
症状が続く場合の医師の診断・検査
蕁麻疹が数日以上続く場合や、夜間に頻繁に現れる場合は、皮膚科やアレルギー科を受診しましょう。
医師は血液検査やアレルギーテストを行い、可能な限り原因を特定します。
例えば、食物アレルギーや自己免疫疾患が関与している場合、専門的な診断が必要です。
慢性化した場合の専門治療
慢性蕁麻疹で抗ヒスタミン薬で効果が不十分な場合、ステロイド薬や免疫抑制剤が処方されることがあります。
ただし、ステロイドは副作用のリスクがあるため、医師の指導のもと短期間使用することが一般的です。
また、最近では生物学的製剤(例:オマリズマブ)が重症の慢性蕁麻疹に有効とされています(参考:厚生労働省「アレルギーポータル」 5)。
いずれにしても蕁麻疹が慢性化した際は、皮膚科専門医の受診が推奨されます。
新たな治療法を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。
日本では蕁麻疹でお悩みの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。
例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
- 最新の治療をいち早く受けられる
- 専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
- 治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。
実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
蕁麻疹を繰り返さないための予防策
蕁麻疹を繰り返さないためには、睡眠やストレス、食事などの生活習慣の見直しが重要です。
睡眠・ストレス管理の重要性
良質な睡眠は蕁麻疹の予防に欠かせません。
夜更かしや不規則な生活は自律神経を乱し、症状を悪化させる可能性があるため注意が必要です。
ストレスを軽減するため、就寝前にリラックスする習慣(例:アロマテラピーや軽いストレッチ)を取り入れましょう。
食事・飲酒の注意点
ヒスタミンを含む食品(例:発酵食品、アルコール、加工肉)は控えめにしましょう。
特に夜間の飲酒は症状を悪化させる可能性があるため、適量を守ることが大切です。
バランスの取れた食事で免疫力を高めることも予防に役立ちます。
日常で避けたい刺激や習慣
皮膚を刺激する習慣、例えばきつい衣服の着用や過剰な日焼け、熱いシャワーは避けましょう。
また、ストレスを溜めないよう、趣味や運動でリフレッシュする時間を確保することが推奨されます。
皮膚科医 川島眞医師が蕁麻疹の疑問に答える


ウイルス感染がきっかけで蕁麻疹が出ることはありますが、それ自体は伝染性ではありません。




頻繁に出る場合や慢性が疑われる際は、早めに皮膚科医を受診しましょう。




皮膚科では症状を見ながら用量や服用頻度を段階的に減らすステップダウン療法を行うことが多いです。
まとめ|夜の蕁麻疹は生活習慣と原因特定がカギ
夜に現れる蕁麻疹は適切なセルフケアで軽減できる場合が多いですが、症状が続く場合は早めに医師に相談しましょう。
原因を特定することで、効果的な治療が可能ですが、慢性蕁麻疹の原因は特定できないことも多いです。
また、通気性の良い寝具や適切な入浴法、ストレス管理を取り入れることで、夜の蕁麻疹の再発を防げます。
生活習慣を見直し、快適な毎日を目指しましょう。
参考資料・サイト一覧
1.日本皮膚科学会 https://www.dermatol.or.jp/qa/qa9/q03.html
2.日本皮膚科学会 https://www.dermatol.or.jp/qa/qa9/q06.html
3.日本アレルギー学会 https://www.jsaweb.jp/modules/citizen_qa/index.php?content_id=12
4.日本皮膚科学会 https://www.dermatol.or.jp/qa/qa9/q11.html
5.厚生労働省「アレルギーポータル」 https://allergyportal.jp/knowledge/hives-angioedema/
記事監修者情報

Dクリニックグループ代表
日本皮膚科学会認定専門医として、アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の診療・研究に長年従事。
本記事では医学的情報の正確性と内容監修を担当。
所属学会:
- 日本皮膚科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚アレルギー学会
- 日本香粧品学会
関連記事