子どもの乳歯がグラグラし始めると、親としては「いつ抜けるの?」「どう対応すればいい?」と不安になることがあります。
乳歯の生え変わりは成長の証ですが、時期や対応方法には個人差があり、適切な知識が欠かせません。
今回は歯科医 古舘 辰彦医師監修のもと、乳歯がグラグラしてから抜けるまでの期間や中々抜けない理由、自宅でのケア方法、受診のタイミングなどを詳しく解説。
子どもの健やかな成長をサポートするために、正確な情報をお届けします。
乳歯がグラグラし始めるのはいつから?
乳歯がグラグラし始めるのは6~12歳頃ですが、歯の種類や個人差によってズレが生じる可能性があります。
乳歯の生え変わりが始まる年齢の目安
子どもの乳歯がグラグラし始めるのは、通常6~12歳頃です。

6歳頃に下の前歯から生え変わることが一般的で、12歳頃までにほとんどの乳歯が永久歯に置き換わります。
この時期に乳歯の下で永久歯が成長し、乳歯の根を溶かしながら押し上げることでぐらつきが起こります。

ただし、個人差があり、早い子では5歳、遅い子では13歳頃に始まるケースもあります。
成長のスピードや遺伝が影響するため、多少のずれは正常な範囲です。
歯の種類ごとの生え変わり時期と順番
乳歯の生え変わりは、歯の種類や位置によって順番と時期が異なります。
一般的に最初にグラグラするのは下の前歯(中切歯)で、6~8歳頃に抜けます。

次に上の前歯、側切歯(そくせっし)、第一乳臼歯(きゅうし)、犬歯、第二乳臼歯の順で、12歳頃までに生え変わります。
この順番は、永久歯が正しい位置に生えるための自然なプロセスです。
ただし、歯並びや顎の大きさにより順番が前後する場合もあります。
定期的な歯科検診で、異常がないか確認することが推奨されます。
乳歯がグラグラしてから抜けるまでの期間
乳歯がグラグラし始めてから抜けるまで1~3か月程度ですが、部位や個人差によってズレが生じることもあります。
平均的なぐらつき期間
乳歯がグラグラし始めてから抜けるまでの期間は、通常1~3カ月程度です。
乳歯の根が永久歯によって徐々に吸収され、ぐらつきが強まると自然に抜け落ちます。
この期間は歯の位置や子どもの成長速度によって異なります。
部位別にかかる時間の違い
前歯は根が短く、永久歯の圧力を受けやすいため、1~2カ月で抜けることが一般的です。
一方乳臼歯(奥歯)や犬歯は根が深く、吸収に時間がかかるため、2~4カ月程度かかる場合があります。
例えば、第一乳臼歯は9~11歳で抜けることが多く、ぐらつき期間も長めです。
部位ごとの違いは、永久歯の成長速度や顎の構造にも影響されます。
個人差が出る要因
乳歯が抜けるまでの期間には、個人差が大きく影響します。
主な要因は遺伝、栄養状態、口腔内の環境です。
例えば、遺伝的に顎が小さい子は永久歯の成長が遅れることがあり、ぐらつき期間が長くなることもあります。
また、カルシウムやビタミンDの不足は、歯の成長に影響を与える可能性があります。
さらに、歯磨き不足による虫歯や歯肉炎(しにくえん)が、ぐらつきを遅らせる場合もあるのです。
こうした要因を考慮し、バランスの良い食事と口腔ケアを心がけることが大切です。
乳歯がなかなか抜けないのはなぜ?
乳歯がグラグラするのに中々抜けない理由は、複数の要因が考えられます。
永久歯がずれた位置に生えているケース
永久歯が正常な位置からずれて生えると乳歯の根を十分に押せず、ぐらつきが遅れることがあります。
これを異所萌出(いしょほうしゅつ)と呼び、歯並びの乱れや顎のスペース不足が原因です。
例えば、永久歯が斜めに生えると、乳歯が抜けずに残るケースがあります。
この場合、矯正治療が必要になることもあります。
過剰歯・埋伏歯などの問題
過剰歯(通常より多い歯)や埋伏歯(骨の中に埋まった歯)が存在すると、乳歯が抜けにくくなることがあります。
過剰歯は永久歯の正常な成長を妨げ、埋伏歯は乳歯の根を押さないため、ぐらつきが起こらない場合があります。
これらの異常が発見され、必要に応じて外科的処置が行われます。
こうしたケースはまれですが、専門医の診断が不可欠です。
永久歯が欠如しているケース
乳歯がなかなか抜けない場合、永久歯が先天的に欠如している可能性があります。
これは先天性欠如(せんてんせいけつじょ)と呼ばれ、人口の約5~10%にみられるとされています。
この場合、乳歯の根が吸収されず、ぐらつきが起こらないことがあります。
X線検査で永久歯の有無を確認し、必要に応じて補綴治療(人工物で歯を補う治療)や矯正治療が検討されます。
早めの診断が重要です。
虫歯や外傷が原因の可能性
虫歯や外傷が原因で乳歯がグラグラすることもあります。
虫歯が進行すると歯の根や周囲の骨が弱り、ぐらつきが早まる場合があります。
また、転倒や衝撃による外傷で歯が揺れることもあります。
例えば、スポーツ中の衝突で乳歯が損傷し、ぐらつくケースが報告されています。
これらは自然なぐらつきとは異なり、痛みや腫れを伴うことが多いです。
こうした場合は早めに歯科医を受診し、永久歯への影響を防ぐ必要があります。
自宅でできるグラグラ乳歯のケアと注意点
乳歯がグラグラしている際の自宅ケア方法を解説します。
痛みがない場合の対応
乳歯がグラグラしていても痛みがない場合、特別な処置は不要です。
自然に抜けるのを待つのが基本です。
子どもには歯を強く触らないよう伝え、清潔な状態を保つために丁寧な歯磨きを心がけましょう。
食事では硬い食べ物(例:リンゴの丸かじり)を避け、歯に負担をかけないように注意が必要です。
保護者はぐらつきの進行を観察し、異常がないか定期的にチェックすることが大切です。
痛みや腫れがある場合
痛みや腫れがある場合、虫歯や歯肉炎、外傷が原因の可能性があります。
冷たいタオルで患部を冷やし、刺激物を避けることで一時的に症状を和らげられます。
ただし、症状が続く場合は、速やかに歯科医を受診しましょう。
抗菌薬や鎮痛剤が必要な場合もあり、自己判断は危険です。
無理に抜こうとしないためのポイント
グラグラした乳歯を子どもが自分で触りたがるのは自然な行動ですが、無理に抜くのは避けましょう。
早すぎる抜歯は、永久歯の位置異常や周囲の歯肉を傷つけるリスクがあります。
子どもには「自然に抜けるまで待とう」と伝え、触る頻度を減らすよう促しましょう。
保護者が清潔なガーゼで軽く触れてぐらつきを確認する程度にとどめ、無理な力を加えないことが大切です。
乳歯を自分で抜くのは大丈夫?
グラグラする乳歯を自分で抜いても問題ないこともありますが、リスクも存在するため注意が必要です。
抜いてもよい目安
乳歯が大きくぐらつき、ほとんど根が残っていない場合、自分で抜いても問題ないことがあります。
目安は歯が指で軽く動かせる程度にぐらつき、痛みがない状態です。
この場合、歯は自然に抜ける直前であることが多く、リスクは低いです。
ただし、清潔な手やガーゼを使い、衛生的におこなうことが重要です。
抜いた後は、軽くうがいをして清潔を保ちましょう。
自分で抜く際のリスク
自分で乳歯を抜く場合、タイミングが早すぎると歯肉や永久歯を傷つける可能性があります。
また、不潔な手や道具を使うと感染症のリスクも考えられます。
例えば、歯肉に傷がつくと細菌が入り込み、歯肉炎や膿瘍を引き起こすことがあります。
痛みや出血が続く場合は、すぐに歯科医に相談してください。
安全を優先し、迷う場合は自然に抜けるのを待つか歯科医に抜いてもらう方が賢明です。
安全に抜く方法とタイミング
安全に乳歯を抜くには清潔なガーゼやティッシュを使い、歯を軽く引っ張るように動かします。
強く引っ張ると歯肉を傷つけるため、優しく行うことが大切です。
タイミングは歯がほぼ抜けそうな状態(根がほとんどなく、大きく動く)で、痛みがないときを目安にしましょう。
抜いた後は少量の出血があってもガーゼで圧迫し、30分程度で止まるのが正常です。
異常があれば歯科医を受診しましょう。
歯科医院を受診するべきタイミング
ぐらつきが長引く場合や乳歯が抜けたのに永久歯が生えてこない場合などは、医療機関の受診が推奨されます。
ぐらつきが長引く場合
乳歯のぐらつきが6カ月以上続く場合、永久歯の成長に問題がある可能性があります。
例えば、永久歯がずれた位置に生えているなどの可能性が考えられます。
乳歯のぐらつきが長引く場合は検査で原因を特定し、必要に応じて抜歯や矯正治療などの処置を行います。
放置すると歯並びや噛み合わせに影響するため、早めに受診しましょう。
永久歯が見えているのに抜けない
永久歯が乳歯の横や裏に生えてきているのに、乳歯が抜けない場合、異所萌出やスペース不足が疑われます。
この状態を放置すると、歯並びが乱れるリスクが高まります。
早めに受診し、永久歯の成長をサポートしましょう。
反対側とタイミングが大きくずれる場合
片側の乳歯が抜けたのに反対側の同じ歯が抜けない場合、永久歯の成長に問題がある可能性があります。
通常、左右の歯はほぼ同時期に生え変わりますが、6カ月以上のずれがある場合は、検査で確認が推奨されます。
抜けたのに永久歯が生えてこない場合
乳歯が抜けた後、6~12カ月以内に永久歯が生えてこない場合、埋伏歯や欠如が疑われます。
この場合、X線検査で永久歯の位置や存在を確認し、必要に応じて外科的処置や矯正治療を行います。
放置すると隣の歯が移動し、歯並びが悪化するリスクがあるため、早めの受診が推奨されます。
放置するとどんなリスクがある?
グラグラが長引く乳歯を放置すると、永久歯へ影響を及ぼす可能性もあります。
歯並びへの影響
乳歯が適切な時期に抜けないと、永久歯の歯並びに影響を与えます。
例えば、乳歯が長く残ると永久歯がずれた位置に生え、乱杭歯(歯が重なる状態)や開咬(上下の歯がかみ合わない状態)が生じる可能性があります。

永久歯の虫歯リスク
乳歯がグラグラしたまま放置されると、歯磨きが難しくなり、虫歯のリスクが高まります。
虫歯が進行すると、隣接する永久歯にも影響を及ぼす可能性があります。
口腔ケアを徹底し、必要に応じて受診しましょう。
治験を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。
日本では乳歯のぐらつきでお悩みの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
・最新の治療をいち早く受けられる
・専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
・治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
お子様の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。
実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
まとめ|安心して見守るために
乳歯がグラグラしてから抜けるまでのプロセスは、子どもの成長の一部です。
ぐらつき期間は通常1~3カ月ですが、個人差や歯の部位による違いがあります。
異常が疑われる場合は、早めに専門医に相談することで、子どもの口腔健康を守れます。
正しい知識を持ち、冷静に対応しましょう。
記事監修医情報
歯科医師として予防歯科・一般歯科診療に長年従事。虫歯や歯周病の早期発見・早期対応を重視し、患者さんが安心して通える歯科医療を提供。
本記事では、医学的情報の正確性と内容監修を担当。
所属学会:
- 日本歯科医師会
- 神奈川歯科医師会