子どもの肌に現れる赤い発疹やかゆみは、蕁麻疹(じんましん)かもしれません。
この記事では蕁麻疹の見分け方から家庭での応急処置、病院に行くべきタイミングまで、皮膚科専門医 川島眞医師の監修のもと、詳しくお伝えします。
子どもの蕁麻疹に悩む保護者の方に、安心して対応できる信頼性の高い情報をお届けします。
子どもの蕁麻疹とは?見分け方と特徴
子どもの蕁麻疹の特徴を解説します。
蕁麻疹の主な症状
子どもの蕁麻疹は、皮膚に現れる赤い発疹やかゆみが特徴的な症状です。
この症状は皮膚の表面に盛り上がった発疹(膨疹)が現れ、強いかゆみを伴うことが一般的です。
発疹は数ミリから数センチの大きさで、形は不規則です。
数分から数時間で消えることもあれば、場所を変えて繰り返し現れることもあります。
特に子どもでは、顔や腕、足など全身に広がるケースも少なくありません。
子どもの蕁麻疹は一過性のものが多く、適切な対処で症状が軽減することが多いとされます。
「あせも」「虫刺され」との違い
蕁麻疹はあせもや虫刺されと間違えられやすいですが、明確な違いがあります。
あせもは汗が皮膚に詰まることで起こり、小さな赤いブツブツが首や背中に集中します。
一方蕁麻疹は移動性があり、発疹が短時間で消えたり別の場所に現れたりします。
虫刺されは刺された箇所に限定され、中心に小さな刺し痕が見られることが多いです。
蕁麻疹と他の皮膚トラブルを正しく見分けることで、適切な対処が可能です。
発症しやすい年齢とタイミング
子どもの蕁麻疹はどの年齢でも起こり得ますが、特に乳幼児から学童期に多く見られます。
乳幼児は免疫系が未熟で食物や環境の変化に敏感なため、蕁麻疹が起きやすい傾向があります。
タイミングとしては、食事後、気温の変化、ストレス、感染症の回復期などに発症しやすいとされます。
子どもの年齢や生活環境を考慮し、発症のタイミングを把握することが重要です。
子どもに蕁麻疹が出る原因とは?
子どもが蕁麻疹を発症する原因を解説します。
アレルギー性の原因(食物・薬剤・花粉など)
子どもの蕁麻疹の主な原因の一つは、アレルギー反応です。
食物(卵、牛乳、小麦、エビなど)、薬剤(抗生物質や解熱剤など)、が蕁麻疹を引き起こすことがあります。
これらのアレルゲンが体内に入ると、免疫系が過剰反応し、ヒスタミンが放出されて蕁麻疹が現れます。
アレルギー性の蕁麻疹の場合は、原因物質を特定することで再発を防ぐことも可能です。
感染やストレスなど非アレルギー性の要因
蕁麻疹はアレルギー以外でも発生します。
ウイルス感染(風邪や胃腸炎)、ストレス、疲労、物理的刺激(圧迫や摩擦)などが原因となることがあります。
特に子どもは、風邪の回復期に蕁麻疹が出ることが多いとされています。
例えば、インフルエンザ後にかゆい発疹が出た場合、ウイルス感染が蕁麻疹の引き金となっている可能性があります。
非アレルギー性の蕁麻疹も、原因を理解することで適切に対応することが可能です。
季節や気温の変化も影響?(寒冷・日光・汗など)
季節や気温の変化も蕁麻疹の原因となることがあります。
寒冷蕁麻疹は冷たい風や水に触れることで、日光蕁麻疹は紫外線を浴びることで発症します。
これらの蕁麻疹は、特に夏や冬の気温変化が大きい時期に多く見られます。
例えば、直後に発疹が出る場合、寒冷蕁麻疹が疑われます。
すぐできる家庭での蕁麻疹対処法
家庭で出来る蕁麻疹への応急処置方法を解説します。
かゆみや赤みを抑える応急処置
子どもの蕁麻疹が出たとき、家庭でできる応急処置が役立ちます。
まず患部を冷やすために清潔なタオルで包んだ保冷剤を当てると、かゆみや赤みが軽減します。
軽度の蕁麻疹に対する局所冷却は、一定の効果が期待できるとされています(参考:日本皮膚科学会「蕁麻疹診療ガイドライン」1)。
ただし、寒冷蕁麻疹の場合、局所の冷却が逆効果となる可能性があるため注意しましょう。
そして、これらはあくまでも応急処置です。
蕁麻疹には抗ヒスタミン薬を中心とした薬物療法が蕁麻疹の基本治療です(参考:日本皮膚科学会「蕁麻疹診療ガイドライン」2)。
子どもへの薬物療法は、医師に相談した上で判断しましょう。
>>蕁麻疹(じんましん)を掻くと広がるのはなぜ?原因と対策を解説
やってはいけないNG対応(掻く、入浴など)
蕁麻疹の悪化を防ぐため、避けるべき行動があります。
掻くことは皮膚を傷つけ、細菌感染のリスクを高めます。
子どもがかゆがる場合、爪を短く切り、掻かないよう気を付けることが大切です。
また、熱いお風呂は症状を悪化させる可能性があるため注意しましょう。
自宅でできる再発防止の工夫
蕁麻疹の再発を防ぐには、日常生活での工夫が必要です。
アレルギー性の場合は、疑わしい食物や環境因子を避けます。
また、ストレス管理として十分な睡眠やリラックスできる環境を整えることも重要です。
病院に行くべき症状・タイミング
病院に行く目安や受診の際のポイントを解説します。
受診が必要なケース
蕁麻疹が重症化した場合、早急に病院を受診する必要があります。
呼吸困難、顔や喉の腫れ、嘔吐、めまいなどの症状が現れた場合、アナフィラキシーの可能性があり、緊急対応が必要です。
例えば、食物摂取後に唇が腫れた場合はすぐに受診してください。
重い症状を見逃さず、迅速な受診が子どもの安全を守ります。
また、症状が長引いている、症状の範囲が広がっている、繰り返し症状が出るような際も専門医に診てもらった方が良いでしょう。
小児科?皮膚科?受診先の選び方
蕁麻疹の受診先は症状によって異なります。
軽い発疹やかゆみなら小児科で十分ですが、繰り返す場合やアレルギー検査が必要な場合は皮膚科やアレルギー専門医が適しています。
適切な受診先を選ぶことで、正確な診断と治療が受けられます。
診察時に伝えるべきポイント(発症時間・食事・薬など)
病院での診察を効果的に進めるには、詳細な情報提供が重要です。
蕁麻疹の発症時間、食べたもの、最近使用した薬、環境の変化(気温やストレスなど)を医師に伝えると、原因特定に役立ちます。
例えば、「夕食にエビを食べた後、30分で発疹が出た」と伝えると診断がスムーズです。
正確な情報を伝えることで、適切な治療に繋がります。
繰り返す・慢性化する蕁麻疹への対応
子どもの蕁麻疹が繰り返す場合の対処法を解説します。
慢性蕁麻疹とは?定義と診断基準
慢性蕁麻疹は、6週間以上続く蕁麻疹を指します。
子どもの場合、原因が特定しにくいことが多く、ストレスや感染症、自己免疫が関与する可能性があります。
診断には症状の持続期間や頻度、血液検査、アレルギー検査が必要です。
慢性蕁麻疹を理解することで、長期的な管理が可能です。
原因特定のためにやるべきこと(記録・検査)
慢性蕁麻疹の原因特定には、詳細な記録と検査が欠かせません。
発疹の出現時間、食事内容、環境要因を日記に記録し、医師に提出します。
血液検査や皮膚テストでアレルギーや感染症の有無を確認します。
例えば、特定の食物後に発疹が頻発する場合、その記録が診断に役立ちます。
原因を特定することで、効果的な治療が受けられます。
継続的な治療と予防のためにできること
慢性蕁麻疹の管理には、継続的な治療と予防が重要です。
抗ヒスタミン薬の定期的な服用や、原因物質の回避、ストレス管理が効果的です。
環境要因が蕁麻疹の引き金となっている場合は、生活環境の改善も再発を抑えます。
新たな治療法を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。
日本では蕁麻疹(じんましん)でお悩みの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。
例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
・最新の治療をいち早く受けられる
・専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
・治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。
実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
子どもの蕁麻疹に関するよくある質問(Q&A)
子どもの蕁麻疹に関するよくある質問を紹介します。
Q. お風呂は入っても大丈夫?
ぬるま湯での短時間の入浴は問題ありませんが、熱いお湯や長時間の入浴は避けてください。
熱いお湯はヒスタミン放出を促進し、症状を悪化させる可能性があります。
適切な入浴方法を守ることで、症状の悪化を防げます。
Q. どれくらいで治まる?
多くの場合、急性蕁麻疹は数時間から数日で自然に治まります。
ただし、原因が持続する場合や慢性化すると、数週間以上続くこともあります。
症状の経過を観察し、必要に応じて専門医を受診してください。
Q. 市販薬は使える?
軽度の蕁麻疹には市販の抗ヒスタミン薬が有効な場合がありますが、子どもへの使用は医師に相談してください。
子どもの年齢や体重により、適切な薬や量が異なります。
子どもへの市販薬使用前に医師の助言を求めることが推奨されています(参考:日本皮膚科学会「蕁麻疹診療ガイドライン」3)。
安全に市販薬を使用することで、症状を抑えられます。
Q. 保育園や学校は休ませるべき?
軽度の蕁麻疹で全身状態が良ければ、休ませる必要はありません。
ただし、発疹が目立つ場合やかゆみが強い場合、子どもが不快感を感じる可能性があるため、状況に応じて判断してください。
まとめ:子どもの蕁麻疹は早期対応が鍵
蕁麻疹の再発を防ぐには、原因の特定と生活環境の改善が重要です。
アレルゲンの回避、ストレス管理を心がけてください。
定期的な記録で発症パターンを把握することも有効です。
症状が重い場合や繰り返す場合は、早めに医療機関を受診してください。
特に呼吸困難や顔の腫れがある場合、迅速な対応が必要です。
専門医による診断で、適切な治療が受けられます。
参考資料・サイト一覧
1.日本皮膚科学会「蕁麻疹診療ガイドライン」 https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/urticaria_GL2018.pdf
2.日本皮膚科学会「蕁麻疹診療ガイドライン」
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/1372913324_1.pdf
3.日本皮膚科学会「蕁麻疹診療ガイドライン」
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/1372913324_1.pdf
記事監修者情報

Dクリニックグループ代表
日本皮膚科学会認定専門医として、アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の診療・研究に長年従事。
本記事では医学的情報の正確性と内容監修を担当。
所属学会:
- 日本皮膚科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚アレルギー学会
- 日本香粧品学会
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