蕁麻疹は突然現れるかゆみを伴う発疹(ほっしん)で、掻くとさらに広がることがあります。
「蕁麻疹を掻くと広がるのはなぜか」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
この記事では蕁麻疹を掻くと広がる理由や、かゆみを抑える方法、原因や予防法を皮膚科専門医 川島眞医師の監修のもとわかりやすく解説。
正確な情報を基に、蕁麻疹の悩みを解消するヒントをお届けします。
蕁麻疹を掻くと広がるのはなぜ?
蕁麻疹を掻くと広がる理由を解説します。
ヒスタミンの放出と血管拡張
蕁麻疹を掻くと広がる主な理由は、ヒスタミンの放出とそれによる血管拡張です。
そもそも蕁麻疹は皮膚のマスト細胞と言われる細胞からヒスタミンが放出されることで発症します。
ヒスタミンは血管を拡張させ、血液中の水分が皮膚組織に漏れ出すことで膨疹(皮膚の一部が赤く盛り上がった状態)や赤みが生じます。
掻く行為は皮膚に物理的な刺激を与え、さらにマスト細胞を活性化させ、ヒスタミンの放出を促進します。
このメカニズムにより、掻くことが蕁麻疹の拡大を引き起こす可能性があるのです。
神経ペプチドなど他の反応
ヒスタミン以外にも、神経ペプチドが蕁麻疹の広がりに影響を与えます。
掻くことで皮膚の神経が刺激され、神経ペプチドが放出されます。
神経ペプチドは炎症反応を増幅し、さらなるかゆみや発疹を引き起こす原因とされています。
このような神経系の反応が、掻くことによる症状の悪化を助長します。
皮膚への刺激で悪化する仕組み
掻く行為は皮膚に直接的な物理的刺激を与えるため、蕁麻疹を悪化させる可能性があります。
特に物理性蕁麻疹の患者では、摩擦や圧迫が新たな発疹を誘発することがあります。
この結果、掻いた周辺に新たな発疹が現れ、蕁麻疹が広がる可能性があるのです。
掻くのを避けたほうがいい理由
蕁麻疹を掻くことによる具体的なリスクを解説します。
かゆみの悪循環
掻くことを控えるべき理由の一つは、かゆみの悪循環を防ぐためです。
掻くと一時的にかゆみが和らぐように感じますが、実際にはヒスタミンや神経ペプチドの放出が増え、かゆみがさらに強まることもあります。
このサイクルが繰り返されると、症状が長引き、治療の長期化に繋がることもあります。
この悪循環を断ち切るためには、掻かずに適切な対処を行うことが不可欠です。
色素沈着や皮膚炎のリスク
掻く行為は、色素沈着や二次的な皮膚炎を引き起こすリスクもあります。
繰り返し掻くことで皮膚が傷つき炎症が慢性化すると、メラニン色素が沈着してシミが残ることがあります。
また、皮膚のバリア機能が低下することで、細菌感染や湿疹などの二次的な皮膚炎が起こる可能性も高まります。
蕁麻疹のかゆみを抑える対策
蕁麻疹のかゆみを抑える対策方法を紹介します。
抗ヒスタミン薬の使用
かゆみを抑える最も一般的な方法は、抗ヒスタミン薬の使用です。
抗ヒスタミン薬はヒスタミンの作用を抑え、かゆみや発疹を軽減します。
市販の抗ヒスタミン薬(例:セチリジンやロラタジン)も有効ですが、症状が強い場合は皮膚科専門医に相談して処方薬を使用することが推奨されます。
また、市販薬は一時的な緩和に有効ですが、長期使用は医師の指導が必要です。
眠気などの副作用に注意し、用法・用量を守ることが大切です。
皮膚を冷やす
皮膚を冷やすことも、蕁麻疹によるかゆみを抑える有効な方法です。
冷たいタオルや保冷剤を患部に当てることで、かゆみや炎症が軽減します。
ただし、氷を直接当てると刺激が強すぎるため、布で包んで使用しましょう。
これらの方法は手軽で即効性があり、日常的に取り入れやすい対策です。
生活習慣の見直し
生活習慣の見直しも、蕁麻疹のかゆみ軽減に役立ちます。
ストレスや睡眠不足、過労は蕁麻疹を悪化させる要因となるため、十分な休息やリラックスする時間を確保することが重要です。
また、アルコールや辛い食べ物、熱いお風呂はヒスタミン放出を促す可能性があるため、控えることをおすすめします。
蕁麻疹の原因と予防法
蕁麻疹の主な原因と予防方法を解説します。
代表的な原因
蕁麻疹の原因は多岐にわたり、アレルギー、物理的刺激、ストレスなどが含まれます。
食物(エビ、ナッツなど)、薬剤(抗生物質など)、花粉などのアレルゲンが急性蕁麻疹を引き起こすことがあります。
また、圧迫や摩擦、寒冷・温熱による刺激も原因となります。
慢性蕁麻疹では、自己免疫や甲状腺疾患が関与する場合もあります。
原因を特定することで、適切な予防や治療が可能になります。
予防のポイント
蕁麻疹の予防には、原因を避けることが基本です。
アレルギー性の場合は、原因となる食物や薬物を避け、アレルゲン検査を受けることも有効です。
物理性蕁麻疹の場合は、きつい服や高温・低温の環境を避けるよう心がけましょう。
また、ストレス管理のためにヨガや瞑想を取り入れることも効果的です。
蕁麻疹で専門医を受診する目安
どのタイミングで病院へ行くべきかの目安を解説します。
市販薬で改善しない場合
市販の抗ヒスタミン薬や外用薬で症状が改善しない場合は、早めに皮膚科を受診しましょう。
慢性蕁麻疹や重度のアレルギーでは、専門的な治療が必要な場合があります。
1か月以上症状が続く場合は、皮膚科専門医の受診が推奨されています。
専門医を受診することで、適切な治療プランを立てることが重要です。
重症化するサイン
蕁麻疹が全身に急速に広がり、呼吸困難や喉の腫れ、めまいなどの症状が現れた場合は、アナフィラキシーの可能性があり、緊急受診が必要です。
これらのサインを見逃さず、すぐに医療機関を受診しましょう。
新たな治療法を試すのも一つの方法
病院で直接治療を受ける以外に、治験に参加するというのもひとつの手段です。
日本では蕁麻疹(じんましん)でお悩みの方に向け治験が行われています。
治験ジャパンでも治験協力者を募集しています。
例えば過去には東京や神奈川、大阪などの施設で行われた試験もありました。
治験にご参加いただくメリットとして挙げられるのは、主に下記3点です。
・最新の治療をいち早く受けられる
・専門医によるサポート、アドバイスが受けられる
・治療費や通院交通費などの負担を軽減する目的で負担軽減費が受け取れる
ご自身の健康に向き合うという意味でも、治験という選択肢を検討してみるのも良いでしょう。
実施される試験は全て、安全に配慮された状況下で行われます。
まとめ
蕁麻疹が掻くと広がる理由は、ヒスタミンの放出や神経ペプチドの反応、物理的刺激による炎症の悪化などが関与しています。
蕁麻疹の管理には、抗ヒスタミン薬、原因の回避が有効です。
症状が続く場合や重症化のサインがある場合は、早めに専門医を受診してください。
適切な治療と予防で、蕁麻疹の悩みを軽減しましょう。
記事監修者情報

Dクリニックグループ代表
日本皮膚科学会認定専門医として、アトピー性皮膚炎など皮膚疾患の診療・研究に長年従事。
本記事では医学的情報の正確性と内容監修を担当。
所属学会:
- 日本皮膚科学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚アレルギー学会
- 日本香粧品学会
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